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111 仲良くなるのはいいんだけど適度な距離感って大事だよね、と言う話


 おはようございまーっす、レンっすー。


 あー、だっるーい……もうさ、私って明らかに血圧低いよね……体質なんだろうけど、毎朝きつくて憂鬱……


 気を取り直して起床! さっさと起きて身嗜みを整える……うん、目が覚めた。

 もう1~2時間寝ればまた違うんだろうけど、生活のリズムが崩れるのも結構困るので諦める。

 さて、前日同様に除雪しつつお湯を沸かし、適当に朝食の準備。今日は除雪の時に兎を数羽狩れたので、それを使って骨ガラ出汁を取って、兎肉のポトフ。但し野菜多目。主食は自前のパンを食べさせる。いや、トリエラ達ってそれなりの数の固焼きパン買ってきてるらしいから、悪くなる前に食べちゃう方が良いからね? まあ、堅くなったらなったで色々使い道はあるんだけど……

 ちなみに兎はスリングを使って獲りました。早起きしてる人が数人居たから、【操剣魔法】は自重せざるを得なかった。と言うか魔剣飛ばしたら兎は爆砕して肉どころじゃない気もする。付与無しの剣を使えば良い? 大差無いよ、多分。


 朝食の準備をしてる間に例のごとくリューが起きてきて、お茶を振舞いつつ適当に談笑。でも今日は隊商のリーダーさんも早起きして混ざってきたので、仕方なくハーブティーを振舞う事にした。


「はぁあ……このお茶、美味しいですね……ブレンド比が気になる所ですが……」


 そんな事言われても困る。自分で研究してくださいね? と言うか、なんでこっちに来るんですかね? お仲間達を起こして色々準備するほうが建設的じゃないですかね?

 胡散臭いものを見るような目付きで視線をやると、ばつが悪そうに顔を逸らされた。なんなの一体?


 経験豊富な商人をまともに相手にしても仕方がないので適当に放置しつつ、朝食の準備を進める。んー、こんな所かな……毎回朝から手が込んだものを作るのも面倒だし、適当に手抜きしておく。


「……今回の料理も美味しそうですね」


 そんな事言われても今回は売りませんよ?


 【ストレージ】に売るほど食材が入ってるとは言え、そこから材料持ち出しで調理なんてすると不自然な量の食材を使う事になる。そして当然そんな無駄に目立つ真似はできない。

 今回はさっき獲ったばかりの兎を使ってるとは言え、毎回都合よく調達できるとも限らないし……気に入られたんだろうけど、ちょっと困った。


 と言う訳で華麗にスルーしながら準備を済ませ、寝てるメンバーを全員起こして食事タイム。ちなみに昨日に引き続き朝早くに起きられなかったアルルは料理の手伝いができなかった事を悔しがっていた。アルル、私よりも低血圧が酷いみたいだからなあ……一応今朝は起こそうとしたんだけど、効果はありませんでした。



 食事が終われば早々に移動の準備をして、撤収。そして昨日同様にぞろぞろと移動。


 そして今日は朝も早くから飢えた狼の群れに襲われた。と言ってもはぐれた群れのようで大した数でもなく、護衛の人達だけであっさり方が付いていた。毛皮は売り物になるけど、肉は不味くて食べられないので適当に埋めて処理。

 もっとこう、食用にもなる獣とか魔物が出てくるとありがたいんだけどね。



 途中数回の休憩を取りつつ、適当なタイミングでお昼ご飯を取る事になった。うーん、何を作ろうか……みんな期待に目を輝かせてるけど、状況が状況なので作れないものが多すぎる。その気になればこの場でフルコースだって作れるけどね? しかし、んー……

 個人的には海の魚を食べたい。【ストレージ】に大量に有るし? 隠れながら少しずつ食べてるけど、私一人だと全然減らないんだよね……別に腐らないからいいんだけど。

 川魚もあるにはあるけど、うーん……いや、もう面倒臭いから別のモノ使って適当に作ろう。

 以前に幾つも仕込んで仕舞っておいたオークの骨ガラスープを使って、豚骨風雑炊にしよう。野菜もそれなりに入れて、肉も少々。量も多めに作ったので食べ足りないと言うことは無い筈。


 スープの入った寸胴鍋を取り出す時は馬車の陰に隠れてこっそり出したから目立たなかったけど、結局匂いで注目を浴びる羽目になった。うん、この匂いって暴力的だもんね? だがスルーだ。

 そして物凄い勢いで食べる欠食児童達。あー、でもちょっと残りそう? どうするかな……ノルン食べる?


「あの……すみません、余ってるようなら売っていただけませんか?」


 残った雑炊をノルンとベルにあげようかと思ったらまたリーダーの商人さん。あー……まあ、いいか。


「五人分くらいしかありませんけど、構いませんか?」


「ええ、大丈夫です! 昨日のスープもとても美味しかったですし、今回のはもう、匂いで気になって気になって……ありがとうございます!」


 と言う訳で商人さんが持って来た鍋に中身を移して譲渡。自前の寸胴鍋を洗ってるとあちらの方から歓声が……んー、売らないほうが良かったかも? でもまあ、残り物だしなあ……



 出発の準備をしているとまたしてもリーダーさんが寄って来た。はいはい、何でしょう?


「実は貴女にお願いがあるんですが、今夜から我々の隊商の分の食事を作っていただけませんか? 勿論御代は支払いますし、材料は全てこちら持ちで構いません。それに貴女のお仲間達の分も一緒に作ってもらって構いません。その分の食材もこちらで持ちます。どうでしょう?」


 えええ……すっごい面倒臭いんだけど……と言うか、そんなに気に入ったの? 美味い食事は士気に直結するから? あー、それは確かに。


 うーん、どうしようか? 自前の食材が取出しし難い今の現状だと、あちら持ちで食材が使えるのは有り難いとは思う。レシピは気をつければいいとしても、でもなあ……

 寄生プレイでなあなあで護衛をさせてる今のこの状況で、この依頼を断った場合にその事を盾にして色々無理を言われても困るし、んー……


「ふむ……お仲間の事が気にかかりますか? それも安心していただいて構いませんよ、きちんとお守りしましょう! そちらに関しては御代は頂きません!」


 むむ……そっちの方が立場が強いにも関わらず、寄生プレイについて触れずに逆に護衛料を無料にするおまけつき! 私と同じ、恩を売るタイプか……

 出来ればもうちょっと色をつけてもらいたいけど、この辺りが引き際かな? 食事番をするだけで食材無料で護衛までして貰えるなら上々でしょ! そもそも私、正直言って交渉事は苦手だし。


「分かりました、ではそれでお受けします……ちなみに、作るのはあなたの隊商の人員分と私と私の仲間の分だけでいいんですよね?」


「ええ、それで構いません。あちらの方々に関しては気にしなくて結構です」


 うん、なんだかんだでよくしてもらってるこの人の隊商と別に、他に二つの隊商が同道してるんだよね。ちなみにその二つともが昨日の私のお茶賄賂に対して反応と態度が悪かった。だから今日の休憩の時にはお茶は持って行かなかった。当然だよね?

 多少睨んでる人も居た気がしなくも無いけど、もうこのリーダーさんのところの庇護下に入れてるので問題はない。

 その辺りの面倒な折衝はこの人がやってくれると言う事みたいだから、この話は受けてもいいと思う。但し、仕込みの手伝いに数人人は貸してもらうし、可能ならアルルや他の皆にも手伝わせる事は了解してもらった。作る量が多いと仕込みだけで時間かかるから、そこは認めてもらわないと困る。

 この人の隊商、馬車10台で人員がぱっと見た感じで30人以上居るから、私一人ではどうやったって回せる気がしない。

 ……いや、【料理】LV10だし、その気になれば多分普通に出来ると思うけど、面倒だしねぇ……?



 そんな訳で料理番として臨時に雇われ、その後も移動を続けて本日の夜営地に到着。


 今日から私達の夜営準備は皆に任せて、私は早速食事の準備。材料は、獲れたてのオークが一匹あるのでそれを使って何か作りたい。このオーク、夜営地に着いた所で襲ってきたはぐれ個体だったりする。

 ちなみにこの隊商の商材は食料品。小麦だのなんだのと兎に角沢山ある。そして、それらを多少は使って良いと言う事だったので、遠慮なく使わせて頂く事にした。とは言っても私達を含めて約40人分のご飯……何にしよう?


 荷台の中を覗いて物色してると見覚えのある物体を発見した。パスタマシーンだ。


 ふむー、もうこれでパスタで良いかもしれない。と言うか腹溜まりがいいし、もう既に他の物を考えるのが面倒だし、これに決定。後は一応適当に野菜スープでいいか。スープに関しては隊商の元々の当番の人にお願いした。

 手の込んだものを作るのも面倒だし、作るのはお得意のミートソースでいいかな? 手の空いている人達に大量に挽肉を作らせてソースを作る。幸い干しトマトも有ったので何とかなった。次に大量の小麦を捏ねて生地を作り、マシーンを使って麺を作って茹でて絡め、完成。一人辺りの量は多めにしたのでお代わりはない。足りなかったら自前のパンでも齧ってくださいな?


 盛況のまま夕食は終わり。お代わりが欲しいと駄々を捏ねる人達が続出。

 いや、全員大盛りにした筈なんだけど……商材も兼ねてる食料をそんなに沢山消費も出来ないと、リーダーさんが説教してなんとか静かになった。



 翌朝は昨日のオークの骨を煮込んで取ったガラスープをベースにしてまたしてもすいとん。お腹に溜まって体が温まるものってなると、選択肢が限られる。使える食材もレシピも限られてるし、悩ましい……


 昼は急がないといけないので適当に作って、夜はペペロンチーノにしてみた。スープは例のごとく他の人任せ。

 最初はベーコンぐらいしか具が入ってない事に不満そうな顔をしている人達多数だったけど、一口食べた後は皆無言で掻き込んでた。ふふん。



 翌日は昼過ぎに3体のオークに襲われた。でも流石に経験豊富な手練れの護衛達。12人も居るので連携してあっさり返り討ちにしていた。今日の晩御飯はこのオークの肉か……何作ろう?

 明日の昼過ぎにはオニールに着くとの事なので、これが最後の晩餐かぁ……うーん、なにか精の付く物がいいかな? んー、あれにするか。


 隊商の皆さんから堅くなったパンを集めておろし金で下ろしてパン粉を作る。次にオークの肉を切り出して筋切りして叩いて柔らかくする。この辺りの作業は手順を教えて他の人に任せていく。

 肉には下味をつけて暫し休め、その間にオークの脂身を炒めて大量の油を作る。

 高級品ではあるけど、卵も幾つか使わせてもらえるように許可も取ってあるので、それとパン粉を使って肉に衣をつけていく。

 大量の肉の準備ができたら順番に揚げて行く。うん、トンカツだ。


 兎に角大量の肉を揚げる。3体分のオークなので全員お代わりし放題である。私の分は既に別に確保してあるので安心。残った分は商材になるらしい。

 ちなみに取り置きしてある私の分は密かにヒレカツだったりする。いや、オークの脂あんまり合わないから、私。他の人? 他の人はみんなロースだよ。

 肉だけだと胃もたれしそうなので千切りキャベツの用意も忘れていない。あとは個人の好みでパンに挟むなりなんなりして食べてもらう。

 肉だけ食べてるつわものも結構居たけど、明日起きた時に胃がつらくなりそう……とはいえそこまで面倒は見れないし、責任も取れない。放っておこう。


「これはもしや、ハルーラの宿の名物料理ですか? でも以前あそこで食べたモノはこんなに柔らかくなかったし、味も食感も全然違った……あの時食べたものはもっと油でべったりしていて、味ももっと、こう……」


「おうおう、なに難しい顔してんだよ! こんなうめーもん、ごちゃごちゃ考えながら食ったら駄目だろうが! 何も余計な事は考えないで味わって食うんだよ!」


 むむむ、聞こえてきた独り言から察するに、リーダーさんはハルーラでアレを食べた事があるっぽい? 幸い護衛の隊長っぽい髭面さんのお陰で変に推察したりとかしないで食べる事に集中してくれたみたいだけど……変に勘繰られないで良かった、と考えるべきなのかな? まあ何か聞かれても惚けるだけだけどね。



 翌日も順調に進み、昼前には遠目にオニールの城壁が見え始めた。そして丁度いいタイミングで南下する分岐路に差し掛かったので私はここでお暇させて頂く事にする。


「本当にここでいいんですか? 直ぐそこにオニールがありますし、そこで少し休んでからでもいいのでは?」


「いえ、ちょっと色々と都合がありまして……」


 隊商のリーダーさんが心配して色々言ってくれてるけど、私は街に入るわけにはいかないので固辞する。


「……はぁ、まあ人それぞれ色々な事情がありますから、仕方ないですね……分かりました、それではここでお別れです。お仲間達の事は心配なさらないで下さい、オニールまでしっかり送りますよ」


 本当にお願いしますね?


 と言う訳で料理番のお金を貰って私一人離脱。私は一人馬車に乗ってゆっくり南に移動し、あの人達から見えない位置まで進んだら適当な所で暫く休憩。そこから徒歩でさっきの分岐まで戻って、オニールの北東の方にある森に入る。

 それなりに森の奥の方まで進んだらそこで自宅を取り出す予定。


 トリエラ達にはその森の奥で野営する事は伝えてある。そして1~2日おきに街の情報を伝えに来て貰える事になってるので、色々抜かりは無い。



 これで一先ず準備完了。さて、後は鬼が出るか蛇が出るか……


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― 新着の感想 ―
[気になる点] レンの思考順の意味が分からん。。。
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