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104 収穫祭 三日目


 はーい、収穫祭三日目でーす。


 とは言っても今日は出かけないんだけどね。昨日一昨日と結構歩き回ってるし、トリエラ達の財布も心配だし。

 だから今日は工房でまったり過ごす予定だったりする。それにちょっと時間の掛かる料理の仕込みとかもしたいかなーって?


 そう思って居た時期が私にもありました。


「その、ごめん……迷惑かとは思ったんだけど……ちょっと居づらくて」


「えーっと……まあ、私も原因の一因ですし、構いませんけど」


 うん、リューがね……工房まで来てね? ちょっとかくまって欲しいとか何とか……いや、理由は判ってるからいいんだけど。


 昨日の事が原因なのか、収穫祭前までは落ち込んでたボーマンが今ではずっとブツブツ言ってて怖いらしい。

 『絶対に見つける』とか『運命の人』とか『商人として大成して迎えに』とか、まあ色々呟いてるらしい。ある意味張本人のリューとしてはそりゃ怖いよね、うん。

 そんな状況だし、気持ちが分からなくはないので今日は工房内に入れて時間を潰させてあげることにしたのだ。そんな状況になった一因は私にもあるしね……んー、今までに無い方向のやらかしだなあ。今後は気をつけよう。


 でもまあ、折角だし収穫祭終わってからにしようと思ってた剣の御用聞きでもしておこうかな? 料理の仕込みは大体終わったし。

 ちなみに作ってた料理はオーク肉を使ったチャーシュー。チャーシュー丼とか美味しいよねー、刻みキャベツたっぷりに煮汁もかけて……じゅるり。後は他にも細々と幾つか?

 ちなみに中庭で煮込んでたんだけど、煮込んでる時には当然いい匂いが撒き散らされるわけで、今日は工房で休んでた職人の皆さんがチラチラ様子を見に来ててちょっと落ち着かなかった。

 でもこれ、直ぐは食べられないからね? 火を落としてからじっくり味を染みこませないといけないからね?


 それでまあ、まだ午前中なんだけど、リューから欲しい剣の仕様を聞くことにした。お昼食べたら早速打つつもり。

 ちなみに鍛冶場の使用許可は既に出てたりする。工房が休みとは言え修行を積みたいお年頃の職人や見習いも居るからね。


 えーと、長さは成人男性が使うような平均的な長さで? リュー自身が非力だから出来れば軽いほうがいい、と? そうなると刀身の刃幅を減らして細身の剣にするしかないかな……取り敢えず見本として数本の剣を取り出して、実際に振らせてみる。


「これが一番いいと思う……刀身の長さも丁度いいし、刃の幅もそんなに狭くないし」


「重くありませんか? もう少し軽いほうがいいと思いますけど」


「あー、その辺は頑張って鍛えるよ。それにオレ細いだろ? これで背もあんまり伸びなかったら体重も軽いままになるだろうし、そうなると武器自体が重い方が威力? が上がるとか聞いたし」


 なるほど、武器が重ければそれ自体の重量が斬撃に乗ると。ちゃんと調べてるみたいだね。

 とは言え、今から体格に合わない剣を無理に使うのも色々負担が大きそうな気もする。

……んー、おまけで短身のショートソードも付けてあげようかな?


 色々考えてるうちに丁度お昼になったので、ご飯を食べることにする。ついでだしリューにも食べさせようか。

 さっき作ったチャーシューで早速丼物を拵える事に。んー、流石に1~2時間だとまだちゃんと味が染みてないなあ……むーん。


「うまっ! なんだこれ、すっげーうまい!?」


「明日になればもっと美味しくなるんですけどね」


「マジかよ!? 前に食った奴と違って肉も分厚いし、オレ、あっちよりこっちの方が良いな!」


 前にって、豚丼のことかな? でもあっちはあっちで食べやすいから私はどっちも好きだけどね。どんなものでも食べ物の優劣は決めがたい。


「あー、オレ野菜あんまり好きじゃないけど、これだと滅茶苦茶うめーな! これだったら幾らでも野菜食えるわ!」


 煮汁もかけてるし、肉と一緒に食べれば野菜の美味しさは倍増だからね。私は野菜も大好きだけど。あー、今度色々惣菜サラダとか作ろうかなぁ。


 遠目に工房の人達が様子を窺ってるけど、声を掛けては来ない様子。知り合いと一緒に居るから遠慮してくれてるみたい? でも物凄く食べたそうにしてる気配がする……気付かない振りしておこう。


 ご飯を食べた後は早速剣を打つことにした。面倒なのでリューも鍛冶場に入れる。でも話しかけられると集中できないので黙ってじっとしてるように言い含めておく。

 ……いや、だからってそんなにじっと見られても落ち着かないんだけど……もう良いや、集中集中!


 がーっと一気に一本目のショートソードを打ち上げて、続けてサブウェポン用に刀身短めのショートソードも打つ。それが終わったら刀身以外の部品を打ち出して、終了。んー、二時間位? 我ながら相変わらず頭おかしい速度だなー

 【乾燥】を使って汗と服を乾かして、【洗浄】で汚れを落として一息。


「あとはこのまま置いて冷まして、組み立ては明日以降ですね」


「よくわかんないけど、なんか滅茶苦茶早くねーか……? でも、出来上がりは明日以降かー……」


 いや、組み上げた後にリューに合わせて微調整するから、直ぐって訳じゃないんだけど……まあ細かい事は良いか。


「受け取りはどうします?」


「収穫祭もまだ二日残ってるし、その後でも全然問題ないぞ? こういうのは慌てたって意味無いしな!」


 うーん、本当にリューは成長しまくりだなあ……頑張ってる子は嫌いじゃない。んー……どうせ明日も出かけるつもりはないし、さっさと仕上げちゃうか。あとは……革鎧の補修用の予備部材って結構余ってたよね? ……うん。


「リュー、ちょっとそこに座ってください」


「え? ここ?」


「はい」


 リューを椅子に座らせて、部屋の隅においておいた鞄から取り出す振りをして革鎧の部材諸々を【ストレージ】から出す。

 そしてリューの身体に合わせながらサイズ調整して組み上げていく。何度もやってる作業なので直ぐ終わる。いや、ほら……胸のサイズがね? 直ぐ変わるから……


「ちょ……レン、いいのか?」


「ちょっとしたサービスです」


 うん、これから毎晩リューは貞操の危機だしね? 頑張って逃げ延びてください。そう伝えたら凄い微妙な顔をされたけど、これで実際何かあっても私はもう責任は負わないからね?

 ちゃっちゃと組み上げて、あちこち微調整して出来上がり。


「どうです? 動きにくいところとかありますか?」


「いや、大丈夫だ。すっげーなこれ、トリエラの奴も同じ様な感じなのか?」


 トリエラの鎧作ってからスキルレベルかなり上がってるから、リューの鎧の方が強かったりするんだけどそんなことは言わない。


「身体が出来上がらないうちは革鎧とかの方がいいと思います。革鎧や胸当てとかの軽量の金属鎧ですね。と言うかこれから成長期でしょうから、出来れば革の服とかコートとかの方がいいんでしょうけど」


 今の年齢から考えてもちょっと細すぎるから、リュー自身が言ってたようにあんまり大きくはならない可能性もある。その分筋肉を付けるしかないんだろうけど、その辺は本人が頑張るだけの話。と言いつつこの一ヶ月位で既に私と同じくらいに背が伸びてるんだけどね! ちくしょーめ! ……せめて150cmは欲しいな……はぁ。


「あー……うん、分かった。ありがとうな!」


「いえいえ。それはそうと明日には剣を仕上げるつもりですけど、どうします? 午後には渡せると思いますが」


「え、明日出かけねー、じゃない、ないのか?」


「私が貴族の試合とか見物しても余り得るものがないので……」


 弓の腕とか馬術はちょっと気になるけど。あと流鏑馬。でも多分私の【狙撃】のレベルなら余裕でこなせる気もしなくは無かったりする。あ、でも【騎乗】がまだレベル低かったっけ? その内上げておかないとなあ……いざと言う時の逃亡用に。


「そんなもんか? でもそうなると……あー、じゃあ夕方前位でも大丈夫か? オレ、色々見て回りたいんだ」


「構いませんよ。強くなる為には強い人の動きをよく観察することも大切ですから、頑張ってください」


「おう、そんな感じの事ギムさんも言ってたんだ! どうしてそういう動きをしたのか、ちゃんと考えながら観察するようにってさ。

 よくわかんねーけどなんとなく言いたいことがわかるような気もするし、レンも同じこと言うって事は多分凄く大事なことなんだろ? オレ、強くなりてーからちゃんと頑張るぜ!」


 おー、あれだけやんちゃで人の話聞かなかったクソガキが、僅か数日でこんなに立派になって……残りの二馬鹿もリューを見習えと言いたい。


 え? 何時までたっても自重を覚えないお前が言うな? それはそれ! これはこれ! それに一応相手と状況は選んでるつもりだよ……つもりなんだよ……


 さて、最後にリューの革鎧の腰にダガーを取り付けて完成。リューはなにやら色々言いたそうにしてたけどガン無視。好意は黙って受け取っておけばいいのだよ。

 ち、ちがうんだからね、別にデレたわけじゃないんだからね(棒読み)

 ……うん、我ながら気持ち悪いわ、これ。キャラじゃないって言うか……


 その後、適当な時間になるとリューは帰っていった。ダガーがよっぽど嬉しかったのか実に軽快な足取りで。

 夕食の席では工房の皆さんが何か言いたげなというか物欲しそうな目でこっちを見てたけど、スルー。この場に出したら折角作ったチャーシューが全部食べられてしまいそうというか間違いなくそうなる気がするので。

 その代わりにデザート代わりにチャーシューと一緒に作った芋餅を出してみた。他にもいろいろ作ったのあるけど、取り敢えず一人三つね? 私の分無くなるとイヤだし。

 これ、前世の実家の本家が東北の方なので偶々作り方知ってた奴だったりする。結構お腹に溜まるからおやつ代わりと言うか忙しい時のご飯代わりにもなって便利。

 材料が芋だって言ったら凄くレシピを知りたそうな顔されたけど、流石にちょっとレシピ教えすぎな気もしたので今回は気付かない振り。女将さんも思う所があるのか追求して来なかった。すまんね。


 その後はお風呂に入って就寝。うーん、今日はぐだぐだだったな……明日も適当に過ごす予定だからぐだぐだになりそうな気がする……ぐぅ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 肉じゃが醤油味+芋飴何個か入れたらちょうど良い感じになりそうだよね。
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