40 ハイッ! ソコまでッ!
「・・・王妃の座にはアガスティヤの美姫を据えて」
「は?」
思わず叔父の台詞につい声を上げて続く言葉を遮る甥をジロリと睨むワイアット。
「なんだ?」
「いえ、今迄なら『美姫』ではなく『皇女』だった気がしたんですが・・・」
「・・・畳と女房は新しい方がイイと、言うじゃないか?」
「はぁ」
「皇女の孫娘が彼女に生き写しらしい」
そう言うと、胸元のポケットから見覚えのあるピンク色の便箋を取り出した。――脳内お花畑の王女の手紙の宛先はサンドロではあったが、下らない内容ばかりなので読み飛ばして、彼経由でほぼワイアットの元に届けられていたから持っていても不思議では無いが。
「?」
「ここだ、この行を読んでみろ」
「えー、何々・・・アガスティヤ公爵家の令嬢は色白で髪色はハニーブロンド、翡翠色の目をしていてアバルティーダの王城に飾っていた歴代王族の肖像画の中の女性の1人に、幽霊かと思うくらいそっくりで・・・へ? 何で王族?」
「元々あの公爵家自体が王家の分家なんだ。何代かに1度の割合で王家から王女が降嫁したり、王子が婿入りをしてるからな。王位継承権もある筈だ。しかもこの手紙にある娘、オフィーリアはトリアステル帝国の皇位継承権も持っている筈だ」
「・・・で?」
「この娘と婚姻すれば、合法的にトリアステルの皇帝になれるだろう。その前に帝国を制圧しする必要はあるが」
――オフィーリア・アガスティヤは第2王子の婚約者で、確か現在の当主。そもそもまだ15歳だったはず・・・え、オッサン何歳や? いや、もうこのオッサンおかしすぎるやろ?
どれから突っ込んでいいのか分からなくて目を白黒させるサンドロ。
「婚約破棄をした筈だろう。優しくしてやれば・・・」
「イヤ~、いくら何でも・・・」
無理でしょう、とサンドロが口に出そうとした瞬間、
「無理ですわッ!! 誰がデブのジジイッ!! しかも脂ギッシュなオッサンなんかとーーーーーッ」
甲高い叫び声と共にテントが真っ2つにぶった斬られた・・・
×××
オフィーリア達は闇に紛れて軍馬を駆り、ワイアット達の根城である廃教会近くまでやって来た。
各方面の密偵からの情報で分かった事は、ワイアットを神聖視する軍部の1集団が暴走して彼を連れ出し国に反旗を翻す作戦だったことが判明したが指揮系統は全く無いに等しい烏合の衆であり、今の所ヒューイとオフィーリアの襲撃だけで半壊滅状態なので、手出しはしないほうが良策だろうという事になった為、当初の目的であった将軍とその甥である側近の身柄の確保だけに絞り他の雑魚には手出しはしない隠密作戦に決まった。
物音を立てないように慎重に暗闇の中を進み、報告のあったワイアットのテント前に辿り着いたオフィーリア達は、中の状況を確認する為に聞き耳を立てていたのである。
×××
「このクソ親父ッ! お祖母様に懸想するなどと畏れ多いと思いきや、ワタクシを娶るなどと世迷言を抜かしやがりましたわねッ! しかもワタクシ、アンディと婚約破棄などしておりませんわッ」
バシイイイイイイィッ!!
と。
驚いて椅子から転げ落ちたワイアットの尻を赤いロング・ウィップが無慈悲にシバく音が響いた・・・・
「ぎゃあぁああああ~~ッ!!」
ワイアット、自業自得である。




