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38 黒幕見〜っけ♡

 「アンディの怪我、すぐ治りそうで良かったじゃん」



 廊下を歩きながらヒューイがオフィーリアに声を掛けるが、彼女は何かを考えているようで黙ったままだ。



「どしたの? リア?」



 うん? と俯く彼女の顔を覗き込むと何かをブツブツ呟いているようだ。



「・・・私のアンディの素敵な顔が・・・しかも髪の毛も矢で切れてましたわ・・・くうぅぅ・・・許しませんわッ!」



 急に顔をガバっと上げるオフィーリア・・・こう言っちゃなんだが、まるで般若のような表情である・・・



「おわッ!? どうしたの?」



 流石にちょっとだけ引いちゃうヒューイ。



「アンディの顔に矢傷など・・・絶対に許さないわよッ ワイアット・ボーフォートッ!! 私のアンディに手出ししたことを後悔させてやるわッ!!」



 あ。絶対にこりゃあヤバイねぇ~と心の中でワイアットに手を合わせながらヘラリと笑うヒューイ。



「元々そのつもりデショ? そいつがアガスティヤの港が欲しがったから公爵も兄ちゃんも、アバルティーダの兵も犠牲になったんだし。スティールとの戦争なんか無けりゃ公爵夫人だって長生きしたかもしれないじゃん」


「ええ。そうね」


「俺も許す気は更々ね~よ」



 よく似た2人の目がギラリと光った。




×××




「エヴァンス。準備は?」


「勿論大丈夫です。いつでも出発できます」



 今日は都合のよい事に晦だ。


 空には爪の先ほどの細い月すらもなく、恐らくは大量の花火から出た煙が原因だろうが、風に乗り薄っすらと雲が流れてきて星すら見えなくなった。



「ボーフォート達は崩れた教会の敷地内に天幕を張ってます」



 公爵家のいつもの間諜が報告する。



「大きい天幕は囮です。そのすぐ後ろに小さめの茶色いテントがあるんですがワイアットと側近のテントです」



 ん~~、と頭を捻るヒューイ。


「側近て、例のお花畑ちゃんの文通相手じゃなかったっけ?」


「そうですね。結構な男前ですから王女を懐柔するのに都合が良かったんでしょう。元々ワイアットの親戚だったんですが縁故採用で雇われてますから、言いなりです」


「親戚? 何歳位なの?」



 オフィーリアが、ふと気が付いて質問をする。



「29歳独身。伯爵家の次男で名前はサンドロ・ボーフォート。元々インテリ畑ですから文官系なんですがワイアットが武官に推して側近になったらしいです。コイツは知略専門です。因みにワイアットは脳筋です」



 黒服を着た諜報部員は、考える仕草をした。



「・・・スティールとの戦争の絡みは?」


「濃厚です。港を手に入れて軍港を作りたかったのはワイアット本人ですが、作戦を考えたのはその男の可能性が高いです」


「疑わしきは罰せずよ。至急裏を取って頂戴」


「了解です」



 去っていった諜報員を見送りながら、



「一緒に居るんなら好都合じゃん。生け捕り、生け捕り♡」



 と、ヒューイが楽しそうに。手を叩いた。



「そうね。メンドクサイから一緒に捕まえちゃえばいいわね。どうせソイツがアンディと私の仲を裂く様に考えたんでしょうよ」



 オフィーリアの笑顔は真っ黒である。



「エヴァンス、出発するわよ」



 腕組みをして仁王立ちになる彼女に向けて、エヴァンス隊長率いるアガスティヤ騎馬兵達が無言で敬礼をした。



 

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