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16 条件

 王太子の執務室で、オフィーリアは本気で眉を顰め、拒絶の意を示すために例の扇を『バシュッ!』と音をさせて全開にすると顔を覆った。



「ねえ、俺一応王太子なんだけどぉ」



 彼女に拳を入れられた鳩尾を抑えながら、顔色が悪いまま声を絞り出すオースティン。



「それなりに鍛えてるから大丈夫でしょ。そもそも義兄様が変な事言うからよ。アンディには?」


「ああ。アンディには知らせてある。が、」


「が?」


「了承しかねると王子宮に朝から立て籠もってる」



 王太子はため息をつく。



「で? ワタクシにどうしろと?」


 

 そう言って、手に持った扇を『バシャリッ!』という音と共に閉じたのである。



 王太子(オースティン)の肩がビクッとしたのは気の所為ではない。




××××




 「え? 本当にぃ? 私とアンドリュー様が婚約できるの!?」


「はい。そのようです」



 西の離宮に滞在しているフロイライン王女に侍女が封書を持ってきた。


 そこには父親である国王の直筆で、アバルティーダ王国とヴァルティーノ王国の両国で取決めた事の仔細が書かれていたが、彼女が注目したのは、『アンドリュー王子とアガスティヤ女公爵の婚約を白紙撤回()に結ぶのは、()()()であり正式な婚約は半年後になる事』という一文のみであった。



「え? まだ婚約解消してないの? 私に知らせが来る前にサッサと婚約解消しとけばいいのにぃ。気が利かないわねえあの女」



 フン、と鼻息を荒げるがハッと気が付き



「いけない! 進展があったら知らせる約束だったわね」



 そう言いながら侍女に便箋を用意させると、何事かを白い紙にしたためると封筒に入れて封をした。



「これ、送っといて頂戴」



 侍女に手紙を渡すとご機嫌で、机の上に置いたままになっていた父親の直筆の手紙を畳んで引き出しに入れる。



「やったぁ~、アンドリュー様は私の物よッ♡」



 そう言って、嬉しそうにテディベアを両手で持ったままクルクル踊るのを冷めた目で見ていた侍女がため息をつく。



 彼女は確認しなかったが手紙には様々な条件が書き記されていた。



 仮婚約の間はアンドリューとの婚約に関することは周りに一切吹聴しないこと。


 互いの国に対して不利益な行動が認められた場合は即日仮婚約は解消になる事。


 上記の内容は口頭や行動だけでなく書面でも同じ扱いとなる事。


 特に留学中の成績は成績優秀者として必ず上位5位以内に入る事。



 以上である。










 もう既に不利というか、無理だという事に気がついていないのは何故だろう・・・と侍女が首を傾げ、次の異動先の確認次第で転職先を考えなくてはいけない事に想いを馳せる。



 フロイライン王女は侍女の訝しげな様子には全くもって気が付かないまま回り続けていたらしい。



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