15 婚約の解消
「あらぁ、もうお帰りになるの? オフィーリア嬢?」
出口に向かっていると後ろから猫撫で声が聞こえてきたので嫌々振り返ると、眉を下げたフロイライン王女が侯爵令息を置いてきぼりにして此方に早足で向かって来ようとしている所が目に入ったので恭しくお辞儀をする。
「本日の講義は全て終えましたので」
「えー、まだ2時間あるわよぅ」
「数学と歴史は既にレポートと試験を受けて免除されております」
「えぇ~、ズルいぃ~」
「この後公務があるので失礼します」
と、にべもなくそのまま踵を返し、足早で出口へと向かう事にした。
何か後ろでフロイライン王女が言って候爵令息が宥めていたような気がするが、完全に無視である。
――取り合っていたら日が暮れるわ。
彼女自身は極力ピーチピンク姫とは関わりを持ちたくないのだが、厄介なことに短期留学生という事と隣国の王族という身分もあり離宮に滞在している為、登城する度に2回に一度の割合で確実に絡んでくる。
鬱陶しい事この上無いのだが、追い払う事も出来ずに腹の中で毎回舌打ちしながら相手をしているが目当ては当然第2王子のアンドリューなのが見え見えである。
彼女が登城すれば確実に彼がエスコートする事が分かっているため態々王城にやって来るのだ。
学院に進学したアンドリューは現在本宮を出て王子宮に移っているため、離宮に滞在している彼女は王城でしか彼に会うことは敵わないからである。
王女自身は彼に接触を図っているらしいがアンドリューは王子としての公務が殆ど軍部絡みの上、午前中は学院もある。
更に休日は殆ど公務がある時以外は公爵邸にいるので全て時間が合わないと言う理由で断り続けているらしい・・・
――何をしたいのかは分かってるんだけどねぇ・・・
早足で歩きながら眉を顰めるオフィーリアだったのだが・・・
×××
「アンディとの婚約を白紙に戻す? どういう事かしら?」
王城に着いた彼女は、珍しくアンドリュー王子に会うことが出来ないまま王太子の執務室に案内された。
そして現在、黒い笑顔で王太子の鳩尾に会心の一撃・・・――手加減の塩梅が上手く行ったので気絶させずに痛みだけ相手に与えるという完璧なボディブロー・・・
を、お見舞いした所である。




