11 続・城下町
フロイライン王女の望むがままに服飾店、宝石商、陶器店、菓子店・・・とまあ、呆れる程に高級店を巡った一行。
途中で足が痛いと何度も何度も文句を言う度に、近衛騎士が抱き上げるという信じられない様な出来事が目の前で展開されるのに頭痛を覚え、それとなく何度も城への帰還を勧めたオフィーリアとアンドリュー。
しかし、彼女は頑として譲らず街をもっと堪能したいと言って耳を貸さない。
それどころか、近衛騎士に抱えられたまま散策を続けると言い張り一行を困らせる。
「このままではいつまで経っても視察が終りませんわ」
「確かに」
申し訳無いと頭をペコペコと下げる侍女を他所に、ご機嫌で美形の近衛に横抱きにされたままブティックを指差すフロイラインを見て静かに美しい額に青筋が立つオフィーリア。
そしてそれを宥めるアンドリュー王子。
「ここまで自由奔放な王女様をなぜ親善大使に選ばれたのか、彼の国お考えが分かりませんわ」
『バシャッ!』と音をさせて例の扇を広げて口元を隠すと
「これで私より1歳年上・・・」
小声だが確実に軽蔑の色が隠せない。
「アンドリュー様、これが普通なのでしょうか? 私は少々普通のご令嬢より逸脱している自覚は御座いますが、同じ王族のお義姉様ともかなり違うように感じますわ」
「うん。私も同感だよ・・・」
もはや目が泳ぐどころか光を失っているアンドリュー王子。
「又勝手に違う場所に行けと近衛に指示しようとなさっていますわ。侍女も止めております。行きましょう」
腕を組んだままだったオフィーリアが王子の腕から自分の手をスルリと外して早足で彼女の元へと進み始める。
「あの大きな門は何?」
王女は見上げるような高さの物見櫓のようになった門を指さし近衛に問う。
「この門を潜ると平民街へと繋がっておりまして、これ以上は進む事は予定にありませんので引き返します」
両手を塞がれてしまい護衛も出来ない状態の近衛騎士が若干困り気味で答えている。
当然周りには他にも護衛が控えているが近衛以外は爵位が低い、若しくは爵位のない一般の護衛騎士であり一定の距離を取る必要があり不用意に王女へ近付く事は出来ない。
王女の間近で近衛騎士が守れない以上、貴族街から出るような危険は犯せないので正常な判断である。
「えぇ~、そんなぁ。庶民の暮らしを見ないと視察になりませんわぁ~」
「「「「「・・・・・」」」」」
オフィーリアだけでなく全員の額の血管が『プチッ』と切れたような気がした。
「フロイライン殿下、予定のお時間が迫っておりますので」
頭を下げすぎで顔色の悪い侍女が彼女に近寄り、予定を告げるが
「えぇ~、だってぇ」
――子供かよッ!! ――
口を尖らせ言い訳をしようとするフロイライン王女・・・
その時、何かが凄い勢いで彼女に向かい飛んできたのを目視確認したのは王女と侍女以外の全員だったが、飛んでくるモノの軌道上にいたのはオフィーリア。
『バシュッ!』
目にも止まらない早い動きでブルーのスカートを蹴り上げ、その手にあっという間に掴んだ編み上げ鞭で飛んできたモノを素早くはたき落とした。
それは彼女が片足で蹴り上げたスカートがフワリと元の形に戻るまでの瞬きする程度の間の出来事で、直ぐ様何事もなかったようにオフィーリアは元の背筋を伸ばした美しい姿勢に戻ったのである。
但し片手には物騒な得物を持ったままだったが。




