冒険者の日常
リーナは家柄が良かった事もあり、幼少の頃から槍の指南を受けていたので、ゴブリン程度なら討伐した経験がある。
なので、レジウスと一緒に行動するため、とりあえず冒険者になることにした。
「登録を頼む」
そう言ってギルドの受付にリーナを伴って現れたレジウス。
「えっと、とりあえずリーナとだけ書けばいい? クロームって付けるとまだマズイわよね?」
差し出された登録用紙を前に、ペンを握ったリーナは、レジウスに問いかける。
「ああ、一年間は無理だから」
とレジウスが返事した時、受付に座る獣人の女性が、
「んっと……彼女さんなの?」
と疑問を口にする。
「ああ」
と短く返したレジウス。
余計な言葉を発しないでくれと受付嬢にウインクしたのだが、
「一年後には妻になる事が確定してるけど、今は彼女って事で!」
とリーナが言葉を被せた。
「レジウスに獣人ではない彼女……明日世界が滅びたりしないかな?」
「さあ? リーナ、さっさと書いちゃって」
受付嬢の言葉の裏をリーナに深読みされないように、急かすレジウス。
場所登録も終わり、受付の前から少し離れ、
「とりあえずザックの餌用のゴブリンや、飯用のオークなんかを狩りに行くか」
と、今日の活動の方針を提案したレジウスに、
「スライーム代も必要だしね」
と笑いながらリーナが答えた。
「ま、まあな」
と明後日の方を見て答えたレジウスの顔は、少し苦笑い。
リーナが母から渡された、一箱12個入りのスライーム5箱は、わずか5日で使い切っていたし、その後も買ってはすぐに無くなるのである。
絶倫かよレジウス。
まあ、用事がない日は一歩も外に出ず、ずっと家で肉欲に溺れていた2人なので、ある意味仕方ないのかもしれないが。
「良い稼ぎになる魔物がいるわよ?」
と少し離れたにも関わらず受付から声をかけられた二人。
「ん? 何か出た?」
「シーチキンが暴れてる」
「ああ、もうそんな時期か」
と笑うレジウスにリーナが、
「シーチキン?」
と首を傾げる。
「ああ」
「シーチキンが暴れるの? あ、魚だから?」
「ん? シーチキンは鳥だろ?」
「え?」
「海にいるデッカイ鶏だぞ?」
「ニワトリ……」
「普段は海辺に生息していて海面を走り回っているんだが、この時期になると産卵のために海から遡上してきて、川岸に巣を作るんだ。冒険者では常識だぞ?」
「海面を走りまわる? そ、そうなんだ……なんだろう、なんか納得できない……」
「そのシーチキンの肉が美味いんだ。だから高価で買い取ってくれるんだ。ただし、産卵して卵を温めてる雌は獲っちゃだめで、鶏冠のデカイ雄のみ捕獲して良いことになってる」
「とりあえず、それを狙うって事ね?」
「ああ! ウージ川の支流あたりに巣を作るから、とりあえずその辺を探そう」
そう言って2人はギルドを後にする。
そうしてウージ川に到着した時、
「ねぇレジウス」
と問いかけてくるリーナ。
「なに?」
「アレ……何?」
と言うリーナの視線の先には、ニワトリが居る。
「あれがシーチキンだよ。デカイだろ」
「デカイなんてもんじゃないじゃない! ニワトリってせいぜい5〜60センチでしょ! 何あのニワトリ! 1メートル超えてるじゃない。しかも水面を本当に走ってるし!」
そう、川の水面を走り回るデカイニワトリが、そこかしこに居た。
「だから言ったじゃん」
「私の常識が崩れていく……」
「アイツら凶暴だから慎重にな。攻撃に失敗して倒せなかったら、突っ込んできてクチバシで目玉狙ってくるから」
「どう倒すの?」
「水面と陸の境目ぐらいで一瞬動き止まるから、そこを狙って攻撃」
「何で止まるの?」
「足の指の間にある水カキを収納するために、一瞬動かなくなる」
「へ、へぇ」
「脚の羽毛が無いところを狙って斬りつければ、動けなくなるから、後は首を捻って絞めればいいよ」
「えーい、常識がなんだ! やってやるわよ!」
その後、二人でシーチキンの乱獲がおこなわれ、他の冒険者から疎ましい眼で見られることになるのだった。




