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羞恥心


 時は数日後、明日にはウエストサンライト帝国の重要なイベントである、秋の園遊会が開催される。

 各国の王族も揃っている。

 サンライト皇国の都は、まさに貴族だらけと言っても過言ではないだろう。

 さて場所はラーナ国大使館。

 サンライト皇国の都の一等地に建てられている、豪華な建物だ。

 明日を控えてラーナ国の王が、自国の上級貴族を集めて打ち合わせをするため呼び寄せたのだ。

 だが、その場での話題はとある新伯爵の話題で持ちきりである。


「なんでも、たった1人に負けたとか……」

「馬の背に裸で括り付けられていたらしいですよ?」

「それはそれは馬が可哀想ですなぁ。ウププッ」


 貴族達の耳というのは、噂には特によく聴こえるようになる。

 噂から真実が露見する事もあるからだ。

 そして知り得た噂を武器に他者を貶める術を知り尽くしている。

 今回の標的は新伯爵となったとあるマヌケ君であった。


 マヌケ君は馬車の背で裸を晒しているところを、後から通りかかったラーナ国の侯爵家に見られてしまう。

 まあ一応助けられた形にはなるのだが、その時の事をおもしろおかしく他の貴族達に話したものだから、マヌケ君は現在屈辱感と羞恥心の渦に支配されている。

 本当はこの場から、もっと言えば国に帰りたいが、ラーナ国王の招集に新伯爵の自分が歯向かうわけにはいかない訳で、さらに言えばウエストサンライト帝国の帝に御目通りするという栄誉が明日控えているのだ。

 帰る訳にはいかない。


 奥歯を噛み締め屈辱に耐えていたマヌケ君は、自国の王にも揶揄われてしまったが、そこで開き直って、


「陛下。私の失態は認めますが私にあの様な攻撃をした者を放置できません。我が国ならば捕らえて死罪に処するところですが、ここはサンライト皇国。逮捕権も処罰権も我にはありませぬ。陛下から帝に、かの者の逮捕権を委ねてもらえるよう取り計らってはもらえませぬか?」


「帝に私からそのような恥ずかしい話をしろと? 冗談ではない。言いたいなら直接言え。言えるもんならな」


 と断られたにもかかわらず、直接言えの部分だけ都合よく解釈したのだから救いようがない。


 翌日。


 サンライト皇国宮殿にて開催された秋の園遊会では、参列者の列に、サンライトの帝が1人ひとりに言葉をかけていくのだが、そこでマヌケ君、いや馬鹿が、


「帝! 我が家に歯向かう輩の処罰をお願いしたく」


 と不敬にも自分から話しかけた。

 普通は帝が話しかけ、それに対して言葉を返すという流れであり、自分から言葉を発する事など許されないのだ。


「ん? その輩とは?」


 不敬だと断罪するでもなく、サンライトの帝は少し眼を細めただけで、質問を返した。


「ウージ領で、ブラックウルフドラゴンを使役する者に襲われ、護衛と馬車に被害が出まして」


「ブラックウルフドラゴン? ウージ領? あー心当たりがあるな」


 と答えた帝は、


『レナード、レジウス以外にブラックウルフドラゴンを使役する者に心当たりはあるか?』


 と、自分の影の中に居る親友に問う。

 闇通信は使えない帝だが、自分の影の中に溶け込む親友とならば、声に出さずとも会話できる。

 それはレナードの持つ魔法のおかげではあるが。


『レジウス以外居ないと思います』


 レナードの答えに、


『だろうな』


 と頷きつつ、


「だがその者は自分から他人にちょっかいをかけないはずだが、貴公、その者に言い掛かりでもつけたか?」


 と馬鹿に聞き返すと、


「いえいえ、いきなり襲われたのでございます」


 と帰ってきた言葉に、帝の眼が更に細くなった。




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― 新着の感想 ―
[気になる点] こんなマヌケ君がよく新伯爵になれたなと。 もしかしたら「誤字報告」から送信するのが適切かもしれませんが、前話の『よこせ』では“ナーラ国”でしたが今話『羞恥心』では“ラーナ国”になって…
[一言] あーあ、マヌケ君、帝に公然とウソを吐いちゃった。下手すると首が跳ぶよw
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