レジウスの話をする人々
「レナード、イーリスの件の詳細は掴めたか?」
そうレナードに聞いたのは、白髪に白い肌をした深紅の瞳を持つ男。
名をレミトリア・タクマ・ディス・サンライト15世。
サンライト皇国123代目の帝であり、初代皇帝タクマの名を名乗ることを許された15人目の皇帝である。
「はい。かなりの借金がありました」
そう答えたのは当然、ブラックパイン男爵家当主、レナードだ。
場所は帝の私室。
豪華な調度品も無ければ、無駄に広いわけでもない。
その辺の木端貴族のほうが、豪華な私室をもっているだろう。
「ミフシ領は交通の要所でもあるし、それなりに栄えているから借金など必要無いはずだがな」
ソファにもたれかかって、そういうレミトリアの顔は、納得いかないといった雰囲気である。
「調べたところによると、宝石をかなりの数買い漁っておりました」
「あー、あの女か」
「去年の秋の園遊会で、ラーナ国の王妃に『宝石一つも持ってないの?』とバカにされたのは有名な話ですから、おそらく今年の秋の園遊会で見返すつもりだったのでしょう」
「うちの貴族は他国の王侯貴族に配慮して、宝石の類は着けない慣例なのに、わざわざ豪華な宝石を着けて来て煽るほどラーナの王妃は見栄っ張りだからな」
「皇国貴族に対する嫉みでしょうなぁ」
「しかし、領の運営に支障をきたすほど買うことあるまいに。イーリスも自分の妻の手綱くらいしっかり握らんとな」
「処分はどうされるおつもりで?」
「罰金と領地の転封に男爵に降格。この辺かな」
「まあ反旗を翻したわけでもないし、妥当なとこですか」
「しかし、レジウスはトラブルに巻き込まれやすいのう。先日の裁判の件も」
「ウィンクルは我々が内偵しておった最中でしたが、レジウスは昔から危機回避能力が足りません。まあ、そこから抜け出す技量には長けておりますが。誰に似たのか」
「ふん」
「あと、レジウスは知っておりました」
「何をだ?」
「帝の印の短剣を渡された理由をです」
「え?」
「短剣を抜いて印を見ても落ち着いた態度でしたし、世の中には余計な事を言うクズが多いと言ってました」
「知ってたのか……しかしワシらの他に知ってるのは……」
「皇后陛下と両公爵閣下だけのはずですが」
「誰かが漏らしたか」
「としか考えられません」
「テンペストを私の下に連れてきたのはエミリアだが、エミリアが実家に漏らした可能性もあるか……」
エミリアとは皇后の名であるが、はたしてテンペストとは……
「ブレナンの宮家にですか? しかし宮家とレジウスに接点はないはずですが?」
「ブレナン家としても漏らすメリットは無いはずだしな。それどころかデメリットの方が多い」
「ですね。レジウスが誰から聞いたと言ってくれれば分かるのですが、あやつは言わんでしょうし」
「誰かに似て頑固だしな」
「テンペストは頑固でしたからね」
「まあ、ここで言ってても始まらん。レナード、これからもレジウスのフォローを頼む」
「御意」
そんな話をして屋敷に戻ったレナードにレインが、
「父上、領地の改革の件でお話があります」
と切り出した。
「聞こうか」
「トンガリ山とオーグラ沼での魔物問題を一気に解決できる案があるのですが」
「そんな都合の良い案があるのか?」
「トンガリ山の土で、オーグラ沼を埋めるのです」
「そんな大工事、いったい金がいくらかかるか分からんぞ?」
「普通にやると試算では金貨1500枚、15億ダラスですね」
「我が領の防衛費一年分ではないか。それは無理だ」
「ですよね。で、代案なのですが、知り合いの冒険者がたいそうな空間魔法の使い手でして、その者を使えば予算は5分の1で済むかと」
とニコニコ笑うレインに、
「その冒険者……私もなんとなく顔が浮かんだがレイン、お前その案いつから考えていた?」
と口元を緩めるレナード。
「兄さんが家を出る時の支度金は要らないと言った時からです」
「なるほど……いいだろう。漁師や木材組合の方をなんとか出来次第依頼を出すことにする」
「はい!」
レインの返事の声は、かなり嬉しそうだった。




