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ドヤ顔


パトリックは、気配を消して城の城壁に近づいてゆく。

見かけた兵士を斬りながら。


すでに返り血で真っ赤に染まった鎧。

だが、誰かに気が付かれる事もなく、ゆっくり歩きながら淡々と敵の喉を斬っていく。


まるでその土地が、元から赤土だったかのように、地面が血の色に染まっていく。

城の城壁の門に辿り着いたパトリックは、固く閉ざされた鉄の門を見て、他に侵入できそうな場所を探すことにする。


横の通用門も鉄製で、燃やす事もできない。

というか、ザビーン帝国兵士が負傷して戻ってきて、門の前で中に入れろと叫んでいるのに、門を頑なに閉ざしているザビーン帝国のやり方に、苛立ちを覚えたパトリック。


国のために戦って怪我をしたのに、負傷兵の手当てをしていないのだ。


「そんなに自分達の命が大事か。偉そうに命令するだけで、兵士が命を張るはずなかろうに」

呟きながら城壁沿いに歩くが、一周回っても入れそうな箇所を何も見つけられなかった。


だが、パトリックが歩いて一周回った時間は、スネークス王国の兵士達が、ザビーン帝国兵士達を無力化するのに、充分な時間であった。まあ、大半はぴーちゃんなのだが。


城壁の上から降り注ぐ矢の射程外に、スネークス王国軍が待機している。


「主! あらかた片付けたよ」

降り注ぐ矢を全身に受けながら、少しも痛そうではなく、逆にくすぐったそうにしているぴーちゃんが、パトリックを見つけて声をかけてきた。


「お! ぴーちゃんご苦労さん! こっちは侵入する場所が無いから、どうしようか悩んでるところだよ」

と、ぴーちゃんに労いの言葉をかけるパトリック。


「そんなの私にまーかせて!」

ぴーちゃんはそう言うと、ザビーン帝国の負傷兵が集まっている鉄製の正門に、負傷兵ごと体当たりをした。

グチャという音のすぐ後にドンと門にぶち当たる音がし、門が開くのではなく、門のまわりの城壁ごと崩れた。


「主! 開いたよ!」

と、ドヤ顔のぴーちゃん。


「さすがぴーちゃん!」

とパトリックが言ったが、


「開いたと言うより潰したが正解でしょうね」

2人?の声が聞こえた、兵士達を指揮していたワイリーが少し呆れて言う。


「お前達は兵士を無力化しろ、無駄に命を散らすなよ。無理に攻めるな! ぴーちゃんが暴れた後から入れ!」

そう言って、パトリックが歩き出した。


ぴーちゃんは兵士達が登るであろう、城壁の内側の階段を使い、お腹の鱗を引っ掛けながら器用に登っていく。

上から落ちてくるザビーンの兵士達に、哀れな目を向けるワイリー達は、馬を降りて城の入り口に向け歩きだす。


すでにパトリックが城内に侵入しているとは、露程も知らない、城の入り口付近に配置されたザビーン兵士が、果敢に攻撃を仕掛けてくる。


ワイリー達、スネークス王国軍とプラム獣人軍の共同部隊との戦闘が始まったのだが、鍛えられた腕前のスネークス兵と、優れた身体能力を持つ獣人軍兵は、城の外にいるザビーン兵達を、危なげなく斬り捨てる。


それを見た一部の兵は、諦めて武器を捨て手を上げて捕縛されていく。


一方、気配を消して城内に潜入していたパトリックは、目立つ鎧の上に黒いマントを羽織り、細心の注意を払って、ゆっくり廊下を歩き、皇帝のいるであろう玉座を探していた。


「この城、デカ過ぎないか? ウチの3倍以上ありそうだ」

小声で呟くパトリック。


何度か迷いながらも、ようやく多数の兵士が廊下を警備している場所を発見した。


ポケットから、小瓶を取り出し、剣鉈とククリナイフに中の液体を塗ると、廊下の両側に立つ兵士の間を、音も無く走り抜けた。


兵士達に軽い切り傷をつけながら。

小さな痛みに声を上げた兵士達だったが、その後大きな呻き声に変わる。


次々に倒れる、玉座の間に続く廊下を警備していた兵士達に、玉座の間の入り口を警備している兵士たちが、慌てて槍を構える。


だが、その槍を構えた兵士の首から、突然血飛沫が舞う。

それを見たルドルフは、


「曲者が侵入したはずだ! 探せっ! この背中に走る寒気はヤツだ! スネークス王だ! リック! ヤツを探せ!」


ルドルフの叫びに、室内に居た者が騒然とする中、ルドルフが連れて来た男、リックが室内を見渡し、小さな弓矢を構えすぐさま矢を放った。


このリックと呼ばれた男、パトリックが普通の兵士だった頃、街道掃除の時に倒した盗賊達の生き残りである。流れ流れて帝国に行き着き、帝国軍に入隊し、

「俺はスネークス王を見つける事ができるんだぜ!」

と、ザビーン帝国兵士の間で、噂に登るようになっていたスネークス王の特技、気配を察知されない事を、自分は見つけられると自慢していた。

それをルドルフが聞きつけ、ルドルフの護衛として配置転換されたのだ。


その矢は、入口から数メートルの場所にいたパトリックの右眼に向かって飛んだ。

矢に気が付いたパトリックは、すでに避ける時間がもう無い事を悟った。

床を這うように移動していたのだが、とっさに動ける体勢では無かったのだ。まさに矢がパトリックを貫く瞬間に気がついたのだった。

パトリックは、

(あ、死んだ)

と思ったのだがその時、ドンッとパトリックの心臓がパトリック自身にも聞こえるような鼓動を打った。


そしてパトリックの視界が暗転した。




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― 新着の感想 ―
[一言] 調子乗った主人公のざまぁの瞬間
[気になる点] ああビジュアルもスネークになるんですねw
[一言] そう言えば第100話と第200話は「別の次元」の話でしたが、第300話は違いましたね。第100話では冥界神が、 >まあ、ほんのちょっと能力を底上げして、持ってるアクセサリーに付加価値つけただ…
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