表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
309/316

恩返し2


ザビーンの手練れ達は、一気に見張り塔に向けて走りだす。

城の警備をしていたスネークスの兵士が対抗するが、本城全体を警備していたため、別棟である塔という目標を知られてしまった事態に、遅れを取る事になってしまう。

塔の警備をしていた兵士達は、数人で上手く対抗していたが、数が違い過ぎた。

1人、また1人と無残に散っていく。


塔の最上階に居る王妃ソーナリスと、それを守るかのように立ち塞がる、スネークス家の兵士達。

そしてその中に、片腕の無い兵や片脚の兵士達が多数居るのに、ザビーンの兵達は違和感を覚える。


「お前達、我らが受けた恩を返す時がきたぞ!」

右腕の無い兵士がそう言うと、


「「おお!」」

と、周りにいる兵士が声を上げる。


「行け!」

右腕の無い兵がそう言うと、別の左腕の無い兵士が、槍を脇に抱えて突っ込んでくる。


「その体で私達を止められるとでも思ったか!」

ザビーン兵の槍は、左腕の無い兵の槍を弾いて、その兵士の腹に刺さる。


「ぐはっ! か、勝てるとは、思ってないさ!」

槍を刺された片腕のスネークス兵は、そう言ってザビーン兵の槍を右手で掴むと、


「今だ! 俺ごとコイツを射殺せ!」

と叫んだ。


その声に、下半身の不自由な兵士達が、弓につがえた矢を放つ、


「なっ⁉︎」

それに驚いたザビーン兵から声が漏れる。


次々と飛んでくる矢を受け、片腕の兵士を貫いたザビーン兵士が倒れる。


「コイツら死兵(死を覚悟した兵の事)か!」

ザビーン兵が目を見開いて叫ぶと、


「我らスネークス陛下に救われた者。陛下の最愛のお方を守るためなら、この命、喜んで差し出す! 腕や脚を失った我らを、他の兵と同じように雇って下さった陛下に、恩を返せるのだ! 兵士として死を迎える名誉まで下さった!」

そう言ってまた1人、槍を構えて走ってくる。


「くそっ!」

舌打ちしながら、手に持つ槍を座っている脚の無い弓兵に投げつけたザビーン兵。


足が不自由なため避けることができない弓兵に、その槍が刺さった。


「マルケス!」

槍が刺さった弓兵を呼ぶ声がする。


「すまん、先に逝く。後を頼む……」


「任せろ!」


体の不自由な兵士達は奮闘した。

狭い通路を上手く利用し、自らの肉体を盾とし、ザビーン帝国兵がソーナリス王妃に近づくのを、必死で止めていた。なんとか何人かを倒したのだが、自力の差は如何ともし難い。

徐々に人数を減らし、もう数人しか残っていない。


「くっ、このままでは陛下に顔向けできん! なんとかソナ様を」

そう言った時、


漆黒の翼竜が城の中から飛び出してきた。


「よ、翼竜だとぉ⁉︎」

ザビーンの兵士が驚愕の声をあげた。


「プー! 卵は?」

ソーナリスがプーに向かって叫ぶと、


ギャー!

と、プーが鳴いた。

だが、ソーナリスにはその鳴き声が、なんと言っているのかはわからない。だが、想像する事はできた。


「孵ったの?」

と、聞くソーナリスに、


ギャ!

と、短く鳴いたプーが、視線をザビーン兵士に向けると、


ギギッ


と、またさらに短く鳴いたプー。

その鳴き声と共に、ザビーン兵の体は黒いモヤに包まれ消えた。


唯一、堀に飛び込まなかった指揮官は、飛び出して来た翼竜を見て、慌てて逃げたのだが、治安維持隊の平兵士によって、その命を終わらせた。


その指揮官の名は、マックス・ファン・ザビーン。帝国第4皇子だった。


「皆んな、ありがとう、貴方達のおかげで、私は無事。どうお礼を言っても、死んだ者は生き返らないけど……」

ソーナリスが、自分を守ってくれた兵士達に礼を言う。


「直接お言葉を返す無礼をお許しください。ソーナリス王妃、我らはスネークス陛下の恩に報いただけです。お気になさらぬよう。普通ならまともに働けず、死んでいてもおかしく無い我らを、城壁警備隊として雇って頂き、給金も正規兵と全く同じ。こんな恵まれた人生を送れるとは思っておりませんでした。死んだ者達も、満足して逝ったはずです。大儀であったと言って頂ければそれで満足です」

負傷兵隊を束ねる男が、代表してソーナリスに言うと、


「皆の者、大儀であった」

と、それに応えたソーナリス。


「有り難きお言葉」

と、その隊を纏める者が片膝を突き答え、その後ろに控える者たちは、それぞれが出来る格好で臣下の礼をとる。

皆が同じ形を取れずとも、その忠誠心はソーナリスには充分伝わった。



「ポー様達、お疲れ様です!」

クスナッツが、見張り棟から大声で叫ぶ。


「ポーちゃん達ありがとう〜」

ソーナリスもポーに声をかける。


ポーが尻尾を、大きく振って応えた。

微かに笑っているように見えたのは気のせいであろうか?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] (*`・ω・)ゞつ★★★★★
[良い点] うん、これは敵からしたら恐怖ですな。 [一言] 体が不自由になった兵士には居場所が無くなるのが普通でしょうが、普通の兵士と同じ扱いで尚且つ兵士としての死に場所まで与えてもらえたらとても嬉し…
[一言] この世界、人間の魔法使いが発見(笑)されて大騒ぎになるくらいですから、 何をやるにも体が資本でしょう。 手足が不自由になったり失ったりしたら、実家で暮らせるなら最高で、 普通はスラムか野垂れ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ