第三砦
だが、国境をスネークス軍に発見されずに越えた、ザビーン帝国の小さな部隊が、いくつかあった。
ザビーン帝国兵は、山の中を隠れるように徒歩で移動していき、とある水場を見つける。
夕暮れが近い事もあり、
「よし、ここで一息いれるぞ。体を休めて明日に備えよう」
部隊の指揮官が小さな声で言った。
部隊の半数以上が眠りにつき、半数が警戒にあたる中、迷彩服に身を包んだ者達が、同じく迷彩の布を纏わせた走竜に乗って、ゆっくり近づいている事に気がつくザビーン兵は1人として居なかった。
音も無く放たれた多数の矢が、ザビーン帝国兵士達を貫いた時に、ようやく敵襲に気がついたザビーン帝国軍。
「て、敵襲!」
運良く矢の攻撃から免れた兵士が、声を上げた。
だが、それがこの世で発した最後の言葉だった。
次々と倒れるザビーン帝国の兵士。
寝ていた兵士が声で飛び起き、木に隠れようと走り出したとき、木の下に生い茂っていた草の中から、槍が突き出てきた。
喉を貫かれた兵士が、血を吐いて倒れる。
次々と倒れる兵士達を見て、指揮官が、
「敵は一体どこに居るんだ! いや、それ以前に何故この位置がわかったんだ!」
誰に言うとでもなく叫んだ。
「砦から丸見えだったぞ」
よもや、答えが返ってくるとは思っていなかった指揮官だが、
「砦など近くに無い! 嘘を言うな!」
と、叫ぶ。
「お前達が知らないだけだ。国境を越えたところから、ずっと見えていたのさ」
その声が、指揮官が聞いた最後の言葉だった。
その後、逃げる兵士を追う走竜隊。
走って逃げるザビーン兵とは、スピードが段違いなため、逃げ切れるザビーン帝国兵士は数人であった。
「コルトン少将、殲滅いたしましたか?」
コルトンの副官が聞くと、
「ああ、ほとんどは仕留めたはずだ。数人取り逃したかもしれんがな。しかし隠し砦はいい砦だな。水が無いのが難点だが、敵の侵入を高い位置から監視できる。おい! そこの息のある者には、トドメ刺して楽にしてやれ」
息のある敵兵を見つけたコルトンが、兵に指示する。
「この水場があるから、少し面倒ですが運べば問題無いですからね。しかし山頂砦とは、よくあんな場所を陛下は見つけましたなぁ。あと遠見筒! アレはヤバイです」
「空から見つけたらしいし、アレは陛下特製だぞ、まあ、作ったのは陛下に言われたドワーフだけどな」
「ああ、プー様ですか」
「陛下って、ほんと何者なんだろうなぁ? 翼竜を従えるとか、絶対に人じゃないよな?」
「陛下が少尉の頃から、ずっと一緒の少将がそれを言いますか? そんなの決まってるでしょ。死神ですよ。さて終わったら次の部隊を殲滅しに行かなきゃですな。追尾させてる者と合流しませんとな! おいそこ! 処理を急げよ」
この夜、3つのザビーン帝国の隠密部隊が、この世と別れを告げる事となる。




