アメリアの実家
コナー子爵家、それは王都から西に向かう街道沿いにある、宿場街が主産業の領地である。
軍の輸送部隊や、商人がよく利用するので、寂れた雰囲気は無いが、華やかでもない。
そんな領地だったのだが、ここ数年は好景気である。
理由はさらに西にあるスネークス辺境伯領。
そこは王都と同じくらい、いや王都よりも賑やかな領地となりつつあるため、そこに向かう商人が急増し、コナー子爵領の宿場街に泊まる客が増え、宿屋や土産物店の売り上げが倍増したためだ。
コナー子爵家は質実剛健がモットーの家で、贅沢な事は嫌うため、屋敷も古いのだが、丁寧に補修されているため、みすぼらしさは無い。
そんな屋敷に早馬が到着する。
門番の男が、早馬から降りた兵士に問いかける。
「コナー子爵家に如何様なご用事でしょうか?」
兵士は、
「スネークス辺境伯家の兵で、リスモと申します。我が閣下より手紙を預かって来ました。コナー子爵様が御在宅なら取り次ぎをお願いしたく、ご不在ならばこの手紙をお預けしたいのですが、御在宅でしょうか?」
と、丁寧に述べながら、手紙が入っていると思われる封筒にある家紋を見せる。
それを確認した門番は、
「確認してくるが故、この場で少しお待ち下さい」
と、居るとも居ないとも言わずに、屋敷に向かう。
数分後に門番が戻ってくると、
「お会いになるそうだ。ご案内するのでこちらに。おい! このお方の馬を頼む!」
門番はリスモにそう言ってから、屋敷の使用人に声をかけた。
「ではどうぞ」
そう言ってリスモを屋敷内に案内する。
屋敷に入ったリスモは応接室に案内され、かけて待つように言われたが、立って待っていた。
そこに当主が入室する。
「お待たせした。当主のディグ・フォン・コナーです。スネークス辺境伯からの使者とか?」
と、声をかける。
「はっ!お初にお目にかかります。スネークス辺境伯家から参りましたリスモと申します。我が主人より手紙を複数預かって参りました。先ずはこちらからどうぞ」
と、頭を下げてから手紙を差し出す。
「うむ、娘からか。どれ」
そう言ってコナー子爵は、机の上にあるペーパーナイフを手に取り、封筒を開けると、手紙に目を通す。
読み終わった手紙を机に置くのを見たリスモは、
「次はこれを」
「ふん。相手の男か」
そう言って少し顔をしかめるコナー子爵は、仕方なく読むような素振りをする。
「次は我が主人からです」
手紙を受け取り読み出すと、コナー子爵の目付きが険しくなる。
机の上に置いてあるペーパーナイフを掴み、リスモに向かって投げる。
顔目掛けて投げられたナイフを何事も無いように避けたリスモ。
ナイフが壁に刺さる。
「お戯れを」
リスモが言うと、
「ほう。怒りもしないのか」
「殺気が有りませんでしたので」
「噂に聞くスネークス辺境伯領軍の腕を見ようと思ったのだがな。失礼した。どうぞかけてくれたまえ」
「いえ、すぐに戻りますゆえ」
「ふむ、なるほどな。アメリアのやつと辺境伯の騎士との事承知した。到着は何時ごろかな?」
「私が出た後に出発しているはずなので、2日後には到着するかと」
そう聞いたコナー子爵は、ペンを取り手紙を書くと、
「では、スネークス辺境伯には、これをお渡し頂きたい」
「承知致しました。では失礼します」
そう言ってリスモは頭を下げて退室していく。
入れ替わるようにコナー子爵の妻が入室して来る。
「どういった御用向の使者でしたの?」
そう聞いた夫人に、手紙を渡しながら、
「アメリアめ、なかなか面白い男を主人に持つ男を捕まえたようだ」
と、笑いながら言うコナー子爵だった。
2日後、コナー子爵の屋敷の前に赤い馬車が到着する。まあ、大きな黒い馬車や、他の馬車も続いているのだが。
「ここか」
パトリックの視線の先にある古い屋敷。
「はい、私の実家のコナー邸です」
と、アメリアが言う。
「なかなか年季が入ってるな」
「初代が建てたものをそのまま使ってますので。まあ、建て増しや修繕はしてますけど」
「緊張してきた」
と言うミルコに、
「しっかりなさい!」
と肩を叩くアメリア。
「うむ!」
と気合いを入れたミルコ。
既に門は開かれている。
執事と思わしき男が玄関から出てくる。
「閣下お気をつけて」
伝令役を務めたリスモが小さく告げる。
「ああ、なかなか油断ならぬ眼をしているな」
パトリックがニヤリと笑った。




