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第43話

 クラン戦争。

 それはクラン同士の尊厳を掛けた戦いである。なにかしらの問題が生じた場合などに行われる。

 そして、それには仲介としてギルドが介入する。

 勝敗の決め方は3つ。その内の1つを選び、行う。

 決闘(デュエル)代表戦(バトル)そして戦争(ウォー)


 決闘は代表者の一対一での戦い。

 代表戦は最低三人のチームを作り、先に敵チーム全員を倒した方の勝利。

 そして、戦争はその名の通り戦争。魔道具で作られたフィールドでの戦いである。ルールは簡単。相手の大将を倒すまたは敵チームを大将を除き全滅させたほうの勝利である。


 殆どのクラン戦争では決闘又は代表戦が採用される。理由としては短時間で行えることと、一部の支部でしかクラン戦争用の魔道具がないため、そして大手クランと少数クランでは人数差がありすぎるためである。




 そして、今回行われるのは…




「わかりました。受理します」


「それでは確認を。

 開始日時は一週間後の朝9時。場所は帝都西のラインデル平原。

 方式は戦争。賭けもこちらでよろしいですか?」


「「それでいい」」


「戦うのは……Aランククラン【黄金の鐘】、そして……」


 受付嬢はそこで言葉を切るとリーフェンを「こいつ、正気か?」というような眼で見る。そんな受付嬢にリーフェンは微笑みを向ける。それをさらりと無視すると言葉を続けた。


「SSSランククラン【世界樹の華ユグドラシル・フェアランシア】」

「ふぁっ!?」

「はい、大丈夫です」

「はい、それではこれで完了です。それではご武運を」

「ちょ、ちょっと待ったああああああ!!!!!」


 手続きが完了したところで、リーフェンが突然叫びだした。


「なんでしょうか?」

「え、え?SSSランク?え、どういうこと?え?」

「説明しても?」

「いいですよ」

「では、説明を。

 此方の方はレイガ・T・ヴァレンシュタイン氏。SSSランク冒険者で、現在序列一位の冒険者でもあります。

 そして、【世界樹の華ユグドラシル・フェアランシア】はヴァレンシュタイン氏がクランマスターを務める新規クランです。

 その構成員は同じくSSSランク冒険者のハクア・シノミヤ様とそちらで登録している彼女達を含め、六名となっております」


 受付嬢は隣の受付で登録をしている詩音、咲耶、ほのか、シルヴィアとそれを見ているハクアを指し、説明をした。

 その説明を、聞いているうちにリーフェンの顔はだんだんと青くなっていく。

 SSSランク。有史以来ほんの10名……いや、新たに加わったレイガを含めると11名しか存在しない冒険者の頂点。その誰もが知るような冒険者の中の英雄とでも言うべきSSSランク冒険者に喧嘩を売った。その事実がリーフェンに重くのしかかる。

 もし、これが知られれば確実にクランから制裁をくらう。追放ならまだいい。だが……部位欠損などしようものなら生きていくことは難しい。金は全て女に使ってしまった。それに負ければ全財産を失うこととなるし、クランから損失の補填を求められるかもしれない。だが、欠損などがあればマトモに戦闘をすることもできないだろう。結果として最悪の人生を送ることになる。


「じゃあ、一週間後に。……頑張ってくださいね」


 レイガは呆然としているリーフェンにそう声を掛けると再び2階へと戻っていった。




















「レイガ……登録してきた」


 ハクアがあまり抑揚の無い声音で椅子に座るレイガに言った。


「おつかれ」

「ん。それより……クラン戦争どうするの?」

「んー、まあ俺一人でやるかな」

「私も……手伝うよ?」

「いや、今回は一人でやる。

 今回のでもわかるけど俺の知名度は低い。これから先、そんなことだと一々面倒だ。今回のでそこそこに名は知れるだろ。

 悪名か勇名かはわからないけど」

「利用する?」

「ああ。ムカついたのも事実だけどな」


 レイガは詩音たちに接するのとは違う雰囲気を出しながらハクアと話す。詩音たちと接する雰囲気もレイガ本来のものだが、どちらかといえばコチラの方が素である。

 穏やかな龍と凶悪な龍。レイガを理解できずに使おうとすれば穏やかな龍は凶悪な龍へと変貌するだろう。もっとも、凶悪といっても相手からしたらであって、味方からすれば心強さしかないだろうが。


「それより……家はどうする?」

「迷ってる。そのままでも良いし、建て替えてもいい。まあ、どちらにしても商人に聞かないとどうもできないな」

「……建てるとしたらどんなの?」

「土地の広さにもよるけどな……塔みたいな感じか、一般的な形か……だな。どちらにしても色々と置ける場所がほしいし」


 レイガは心なしウキウキした様子で話し始める。

 因みに塔と言ってはいるが、実際にはオフィスビルの様なものだと思ってもらっていい。ただ此方の世界に合わせて言っているだけだ。

 まあ、兎に角。見てみないことにはなにもできない。


 そんな感じで数分の時を過ごし、やっと現れた受付嬢からレイガは紹介状を受け取り、商人ギルドへと向かう。


 向かった先でまたひと悶着あるのは内緒である。

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