第40話
〓帝都〓
ヴェリタス帝国帝都【ヴェリタニア】。
そこにある皇帝の一族が住まう場所、帝城。その一角にあるとある魔術師の部屋。そこで、小さな子供が忙しなく動いていた。
「あー、なんじゃなんじゃ。なんなのじゃこの魔力は〜」
その子供は、およそ子供が使うようなものとは思えない言葉をぶつぶつと言いながら、霊樹を用いて作られた国宝クラスの魔術杖を片手に、積み上げられた本を倒しながら行ったり来たりしている。そして、夜空の様なローブを着ると、その部屋から出て行った。
〓帝都前〓
「いやぁ、混んでるねぇ」
「仕方がない。帝都は基本的に人気の観光地……それに時期的にも人が集まっている」
馬車の窓から外を眺めたレイガは呟く。
その呟きにハクアはいつも通り、あまり抑揚のない声で答える。ただ、レイガ達は騎士達に渡された例のものがあるため、行列に並ぶことはない。しかし……
「これ、横通って先に入るとか精神的にくるなぁ」
並んでいる者達の「なんだ、アイツ」というような視線に耐えられればであるが。
だが、これに並ぶくらいなら……とレイガは馬車を進める。
そして、ある程度、帝都を守る城壁の近くまで行くと、ハクアと詩音達を促して馬車から降りた。
「さてと。この子らを戻して……あとは歩きだね」
「レイガ……跳んでもいい?」
「ダメ」
馬車とクロードを異空間へと収納すると、レイガたちは城門へと向かった。
「あぁ〜、気持ちいい」
帝都の宿【龍の寝台】。
帝国……いや、世界でも最高クラスの宿にある貸切の浴場。
そこで、レイガは疲れを癒やしていた。
凡そ二時間前。
帝都に入るため、レイガたちは行列からの痛い視線を受けながらも先頭へ行き、騎士たちから渡された交通許可証を提示した。普通ならばそこで中へ入って終わりなのだが、門番達は交通許可証自体は知っていたが詳細は分かっていなかったらしく、偽造したものだと判断されたのだ。そして、そのまま拘束されそうになったのだが、レイガがそれを許容するはずがない。
まさに一触即発といった空気が漂う中に一人の騎士がやってきた。そして、その騎士により容疑は無くなったものの、それを渡されたレイガたちは何者かという疑問を持ち、身分を明かしたら軽くパニックになったという事件があった。
基本的に肉体疲労は無いレイガだが、詩音達と行動を共にする上では精神的な疲労が少しではあるが貯まることとなっていた。下手なことを言えばバレるという変な緊張感のなかで、レイガは必死に頑張っていた。




