第二皇子、行方不明だってよ4
フィリップが失踪してから2週間。この間、フィリップの根城に貴族が毎日1人か2人は必ずやって来ていた。
理由は、フィリップを心配して。というのは建て前で、奴隷制度廃止を取り消してもらえるように頼ませるため。または、フィリップの地位を使ってフレドリクを皇帝から引き摺り下ろすためだ。
根城にいるメンバーは建て前のほうを信じているみたいだが、当のフィリップがいないのだから護衛騎士が門前払いするしかない。
揉める場合もあるので、夕食の時にはカイサとオーセにも報告してめちゃくちゃ悪口を言ってる。最近は2人で食べるのも寂しいからって、1階で護衛騎士と一緒に食べてるんだって。
そうして今日も貴族が訪ねて来たけど、その女性は顔見知りだったから2階に通してカイサとオーセは愚痴を聞いてもらっていた。
「おそらくその貴族の大半は、違う目的で来ているから相手にしないほうがいいわよ」
「そうなのですか?」
「ええ。殿下の地位を使って何かを企んでいるはずよ」
「こわっ」
「さすがペトロネラ様。物知りですね~」
今日の訪問者はペトロネラ。2人もどうしてフィリップがこんなに心配されているか意味不明だったので、謎が解けたと嬉しそうだ。
「それにしても、ペトロネラ様は来るの遅かったですね。てっきり飛んで来ると思っていました」
「私も忙しかったので。本当はすぐに話を聞きたかったのよ。それに……」
ペトロネラは言い淀んだので、カイサと違って空気の読めないオーセが聞いちゃう。
「それにってなんですか?」
「う~ん……知っておいたほうがいいわね。ここ、暗部の手の者に見張られているの」
「へ??」
「暗部? 暗部って怖い人たちのことですか??」
「ちょっと認識がズレてるわね。騎士がやらない裏の仕事をする部署ね。といっても、諜報活動がメインよ。たまに暗殺の仕事もするけどね」
「「こわっ……」」
フィリップから暗部の存在は教えてもらっていたカイサとオーセであったが、仕事内容は初耳だったので同時にブルッと震えた。
「そんなに怖がらなくて大丈夫よ。殿下が帰って来るのを見張っているだけだしね。それに貴族が悪さをしたら、すぐに皇帝陛下の耳に入る。要は、あなたたちも守られてるってことよ」
「そういうことでしたか」
「よかった~。疑われてるかと思ったです~」
「ウフフフ」
2人が安心すると、ペトロネラは笑顔を見せる。ただし、隠していることはある。
ペトロネラは暗部が見張っていることは知っているが、理由は聞かされていない。ただ、予想は容易。フィリップを訪ねる貴族は反乱分子の可能性があると思って見張らせているのだ。
だからペトロネラは時間を空けてから来たが、このことを教えると2人が怖がると思って自重したのだ。
「あ、そうです。殿下から手紙を預かっていますよ」
「手紙??」
ペトロネラが聞き返すと、オーセがパタパタ走って手紙を届けた。
「「何が書いてあったのですか~?」」
「な、なに? そんなに興味あるの??」
手紙を読み終えると2人がニヤニヤ質問するので、ペトロネラもタジタジだ。
「先日ボエルさんにも手紙を渡したのですが、こんなことがありまして……」
「プッ! ウフフフフフ」
カイサが理由を語ると、ペトロネラも大笑い。そこまで予想してからかいに来るヤツなんて普通いないもん。
「フフ。残念ながら、そんなに面白いことは書いてないわ。必ず戻るから、あなたたちを気に掛けてやってくれと頼まれただけよ」
「なんだ~。殿下のことだからてっきり~」
「オーセ。失礼でしょ。ペトロネラ様が気に掛けてくれるだけで心強いです。ありがとうございます」
「あっ! ありがとうございます!!」
「いいのよ。2人は私の弟子……娘のようなモノだもの」
こうしてペトロネラは、軽くフィリップの話をして根城を去って行ったのであった。カイサとオーセは娘というワードが引っ掛かって「まだ殿下と関係続いていたのかな?」とヒソヒソやってたけど……
その翌日も貴族の来訪。カイサたちは門番と揉めているのを偶然バルコニーから見ていたから、「あの人、暗部に消されるのかな?」とドキドキしていた。
そこに1人のイケメンが参戦。しかし、揉めていた貴族はペコペコ頭を下げて帰って行った。
その人物はラーシュ。ファーンクヴィスト公爵家には貴族では逆らえないのだ。
でも、ラーシュはフィリップに逆らえないので、カイサたちはエントランスに案内してる。男は部屋に入れるなと言われているもん。
「「先程はありがとうございました」」
「この程度、気にする必要はない。殿下と私の仲だからな」
カイサたちが頭を下げると、ラーシュはイケメン返し。カイサたちもメロメロだ。
ただ、ラーシュは用件があるからここに来ている。2人を座らせたら、フィリップを心配しているような話をしていた。
「あの。ラーシュ様に殿下から手紙を預かっているのですが」
「手紙? 読ませていただこう」
「あ、少し注意事項が。ボエルさんの話なんですが……」
「ブハッ!? アハハハハハハハハ」
ボエルの話、鉄板。オーセからオモチャにされた逸話を聞いたラーシュも大笑いだ。
その後、手紙を読んだラーシュは、2人の期待のこもった目に負けて内容を教えてあげる。
「2人を気に掛けてやってくれと書かれていた。あと、2人に手を出すなと……殿下、私のことどう思っているんだろう?」
「「う~ん……浮気者ですかね??」」
「それは昔の話だ!? いまは婚約が流れてフリーだぞ!?」
「「が、頑張ってください……」」
こうして「あまり面白い手紙じゃなかったね?」とヒソヒソ喋りながら、肩を落として帰るラーシュを見送るカイサとオーセであった。




