第二皇子、行方不明だってよ3
フィリップが帝都から消えたその日、フレドリクがフィリップの捜索を命令したのだから、その話は一気に帝都中に広がった。
貴族の場合は「あのバカ逃げやがった!?」と激怒。フレドリクが奴隷制度廃止のお触れを出したのだから、帝国が大変なことになるのは明白。
そんな中、唯一フレドリクを止められそうな人物が消えたのだから、誰もが同じことを思ったんだとか。フィリップを操って帝国を自分の物にしようと思っていた貴族は、躍起になって捜しているそうだ。
フィリップを直接捜している騎士や衛兵の場合は、「どこにもいねぇな~」とやる気ナシ。
そもそもフィリップと関わったことがない人が多いので、なんで馬鹿皇子なんか捜さないといけないんだと思っている人が大多数だ。
帝都在住の民の場合は、「第二皇子? 皇弟殿下? ああ、あの噂の……」と、興味がなさそう。噂を聞く限り、いなくなってもどうでもいいらしい。
だってフィリップの噂は、仕事もしないで女を侍らせる馬鹿な引きこもり皇子ってなってるもん。フレドリクだけがいればいいと言う人が大多数だ。
しかし、フィリップを心配する人は少なからずいる。
「ダメだ。ぜんぜん見付からねぇ」
ボエルだ。フィリップ捜索から1週間、ボエルは寝る間を惜しんで捜していた。しかし上司のカイからいい加減休めと命令されたので、今日初めて根城にやって来たのだ。
「お疲れ様です」
「本当に疲れているように見えますけど、ボエルさんは大丈夫ですか?」
カイサとオーセは、ボエルの顔に隈まであったから、フィリップより体調が気になるみたいだ。
「オレのことはいいんだよ。てか、2人は殿下のこと、心配じゃないのか?」
「「心配は心配ですけど……」」
2人はさっきフレドリクに会って来たばかりだから、フィリップのことなんか忘れてた。いま思い出したこともフレドリクの笑顔だったから、頬も緩んでいるよ。
「見損なったぞ……てっきり殿下のこと好きだと思っていたのに……心配してるのオレだけかよ」
その顔が気に食わないとボエルはそっぽ向いた。他の騎士も笑いながらフィリップのことを捜していたから、ここに来たら味方がいると思っていたのだから致し方ない。
ボエルにそんな顔をさせてしまった2人は、誠心誠意謝罪して、フレドリクに仕事を貰ったことも説明したので謝罪の効果が薄まる。フレドリクに乗り換えようとしてるように見えるもん。
なので2人は何度も謝り、「手紙があったんだ!」と焦って持って来た。
「な、何が書いてあったのですか?」
「お、落ち着いてください。ね?」
フィリップの手紙を読んだボエルは、さっきより怒りが倍増。鬼の形相だ。自分でもいまにも手紙を破きそうだと思ったのか、ボエルは投げ捨てた。
それをオーセが拾って音読する。
「や~いや~い。見付けられるなら見付けてみろ~。クマ女には絶対無理だろうけどね~。プププ。以上……ブッ!!」
「ブハッ!?」
「あんのクソ皇子~~~!!」
「「アハハハハハハハハ」」
そりゃ怒る。唯一フィリップを心配して捜していた人に、この仕打ちは酷すぎる。
まさかこんなイタズラが仕込まれていたなんて考えもしなかったカイサとオーセは、腹を抱えて笑い続けるのであったとさ。
フィリップの手紙のせいで、捜す気が失せたボエル。悪口ばっかりになったのでカイサとオーセもタジタジだ。
「きっと殿下は、ボエルさんなら必死に捜すと思っていたから、こんな手紙を残したんですよ」
「はあ? だったら感謝のひとつでも書いてるべきだろ。あのボケェェ……」
「ほ、ほら? 体調崩すまで捜してたじゃないですか? 殿下はそうなるのを予想して、ボエルさんを止められるようなことを書いたんじゃないですかね~?」
「だったら普通に書けよ。あのバカは、絶対オレをからかって笑ってるはずだ」
「「で……そんなことないですよ~」」
2人は「ですよね~」と同意しそうになったけど、ギリセーフ。これ以上ボエルの怒りが溜まらないようにと話題を探す。
「その手紙、どうします? 陛下に提出しますか?」
「これをか……出したほうがいいと思うか?」
「どちらでもいいかと。どうせ笑われるだけでしょうし」
「あの馬鹿皇子、なんてモノ残してんだよ」
「もしなんでしたら、私たちが提出しましょうか?」
「それ、陛下にもオレの失態を笑わそうとしてね?」
「「いえいえ~。殿下のことはなんでも報告しろと言われたからですよ~」」
「怪しい……」
珍しくボエルの予感は正解。でも、2人はフレドリクに会いたいだけ。もっと言うと、フレドリクの馬鹿笑いが見たいだけだ。
ただ、ボエルは恥を掻かそうとしてると受け取っているから顔が怖い。なので、2人は部屋に気になる物があったのを思い出してでダッシュで取りに行った。
「そ、それは……」
「殿下がいなくなった日に、私たちの部屋に置いてあったのです」
「ボエルさんはこれ、なんだかわかるのですか?」
「わ、わかるけど……」
「「??」」
カイサとオーセが両手に持っている木製の物体は、女性専用のマッサージ道具。ボエルも配慮して実名を口に出せないみたいだね。
「えっと、わかるなら何か教えて欲しいのですけど」
「い、いいけど……実演したほうが早いかも? オレが詳しく教えてやろうか??」
「実演??」
「ボエルさん。殿下みたいな顔になってますよ?」
「ホントだ!? てことは、これって……」
ボエルのスケベ顔で2人も気付いちゃった。フィリップがいないから、1人で使えということを……
「「エッチ……」」
「ちげぇし! そっちの長いほうは、ホントに2人で気持ち良くなれる物だから使い方教えてやろうとしただけだし!!」
「「浮気者……」」
「ちげぇって言ってるだろ~。使ったら綺麗に洗わないといけないと教えてやろうとしたんだって~……オレ、けっこう上手いぞ?」
「「殿下みたい……」」
こうしてボエルは、カイサとオーセに少し嫌われてから帰って行くのであった……
「これで2人で繋がるってことかな?」
「ちょっと試してみよっか?」
でも、2人は気になって使ってしまい、フィリップがいない寂しさを道具で補うようになったとさ。




