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【完結】夜遊び大好きショタ皇子は転生者。乙女ゲームでの出番はまだまだ先なのでレベル上げに精を出します  作者: ma-no
二十章 最後まで夜遊び!!

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509 大騒動の理由


 根城にいつもと桁の違う人数が押し寄せているのだから、フィリップも何事かと鉄格子作りの門を見る。その隙間からどんな人が集まっているのかと凝視していると、門番が開けやがったのでフィリップはビックリ。


「あの野郎……アイツ、名前、なんて言うの?」

「プーちゃん、名前も覚えてないのに怒らないであげて。入って来たの、ペトロネラ様だよ」

「あのカッコイイ男の人はラーシュ様じゃない?」


 フィリップは護衛騎士が裏切ったと思ったけど、カイサとオーセが言う通り2人だけ入って来てその他は入って来ないから、怒りより疑問が強くなった。

 そのペトロネラたちはバルコニーにフィリップがいることに気付いたのか、その場で立ち止まりバルコニーに向けて深々と頭を下げた。


「なんだかよくわからないけど、カイサ。2人にその場で待機って言って来て。外に出る。オーセは着替え手伝って」

「「はい!」」


 いつも先を読んで行動するフィリップでもわからないことはある。会って話を聞かないことには話にならないので、急いで身支度を始めるフィリップであった……



「ネラさ~ん。おはよ~。ついでにラーシュも」

「こんにちは……」

「なんでついでなんですか……」


 外に出たフィリップは気さくに声を掛けたけど、ペトロネラもラーシュも微妙な顔。この大変な事態に、昼過ぎまで寝ていたのかと文句を言いたいみたい。ラーシュは言っちゃってるけど。

 鉄格子の向こう側にいる人も、何やら頭を抱えている。


「てか、これはなんの騒ぎ?」


 フィリップが質問すると、2人はこんなことしている場合ではないと背筋を正した。


「本日は、殿下に嘆願の儀がありまして集まったしだいです」

「嘆願? それは外の人の総意ってこと??」

「「はっ」」


 ここでフィリップも、ルイーゼが何かとんでもないことをしでかしたんじゃないかと気付いた。


「わかった。聞くだけ聞く」

「「有り難き幸せ」」


 2人は大袈裟に頭を下げると、ペトロネラから話し始める。


「本日、陛下から発表があると、城の要職に就く者、帝都在住の貴族家当主、領主の使いが全て集められました。そして先程、陛下からの発表を聞いて、皆、驚いたしだいです」

「もったいぶらず、早く内容言っちゃって」

「はっ。失礼しました」


 ペトロネラは軽く頭を下げてから続ける。


「その内容とは、奴隷制度の廃止。陛下は全ての奴隷を解放すると(おっしゃ)ったのです」


 フィリップがポカンとした顔をすると、ラーシュの顔が少し険しくなった。


「言ってる意味、わかりましたか?」

「あ……うん。え? 全てって、どこからどこまで?」

「陛下はハッキリと申しませんでしたが、おそらく農奴のことかと」

「そ、そりゃそうか。農奴だよね~……ゲッ」

「どうしました??」


 フィリップはあることに気付いたけど、頭を振って蹴散らした。


「農奴って、帝国に三千万人以上いたよね?」

「は、はあ……よく知ってますね……」

「そんなの一気に解放したら、財政傾くよね?」

「は、はあ……なんでわかるんですか?」

「茶化すな。んで、猶予は? いつやるとは言ってた??」

「できるだけ早期にと、我々に協力を求めたしだいです」

「急ぐつもりか……」


 フィリップは少し考えてから、ペトロネラに視線を移した。


「ちなみにこれって誰の発案?」

「皇帝陛下だと仰っていましたが、おそらく皇后陛下かと。農奴の現状を見て涙したと仰っていましたので」

「チッ……あの女、この国を滅ぼしたいのか……」

「「あの女??」」

「なんでもない」


 フィリップが口悪く失言したのを拾われてしまったが、そのことには答えない。


「お兄様が発表した時、みんなは反対しなかったの?」

「いまの食糧供給がままならない事態となり兼ねませんので、大多数で反対しました。しかし、反対するなら家を潰すと脅されましたので、誰も何も言えなくなりまして……」

「だから僕に会いに来たと」

「はい。親交のある私たちなら話を聞いてくれるだろうと頼まれました」

「ペトロネラ様も私も、皆と同じ気持ちです」


 2人は覚悟の目でフィリップを見た。


「わかったわかった。お兄様を説得したらいいんでしょ」

「「はっ! 帝国のために、宜しくお願い致します!!」」

「「「「「お願い致します!!」」」」」


 ペトロネラとラーシュが急に大声を出すと、外に集まる貴族たちまで続き、その声は津波のように広がるのであった……



 貴族の声がうるさいので、フィリップは「うるさいから止めて来い!」とラーシュを蹴飛ばして、追い払う策を考える。

 考えはまとまったけど、まだうるさいので静かになってからフィリップは門から出た。そしてラーシュの肩車どころか肩の上に器用に立つと、できるだけ大きな声で語り掛ける。


「え~。君たちの願い、聞いたよ。皇帝陛下を説得する努力はする。まだ喋るな! ……努力だけだからね? 失敗したら、ゴメ~ンちゃい」


 フィリップが努力すると言った時には、貴族たちは期待に胸を膨らませたが、謝った時は全員ズッコケかけた。ふざけた言い方だもん。


「だから喋るなって! お前ら全員で反対して無理だったんだろ! なのに僕ができると思ってんの!? お前ら、散々僕のこと出来損ないとか悪口言ってたじゃん! 本当にできると思ってんの!?」


 フィリップの言い分は、至極真っ当。貴族たちは落胆してため息が溢れた。


「もう一度言う! 努力はする! 失敗する可能性が高い! その時は、お兄様の命令を必ず遂行しろ! 話はこれでおしまい! 解散! 散れっ!!」


 これにてフィリップの演説は終了。貴族が肩を落として帰って行くなか、フィリップはヨジヨジとラーシュから降りるのであった……


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