508 お忍びデートの裏
フレドリクのイケメン除去手術……ではなく、フィリップが変装を手伝ったものの、フレドリクから帝都脱出の決行日はまだ決まっていないと言われたから昼型を維持するのは難しい。
フィリップは気になるけど夜遊びした過ぎて、すぐに仮病。夜遊びして待っていたら、1週間後にフレドリクから手紙が届いた。
フィリップは「なんだろ?」と思って読んだら、帝都脱出の決行日。すっかり忘れてたんだね。
なので慌てて筆を取り、「あとのことは任せて」とか書いて出したけどやることは特にない。せいぜい寝るぐらいだ。せめて無事を祈れよ。
その2日後、朝からメイド詰め所に出向いて、フィリップはまだ熱があると報告をしたオーセたちが戻って来た。
「プーくん。陛下、風邪で休んてるんだって。大丈夫かな?」
「大丈夫じゃない? たまにはそんなこともあるよ」
「え~。もっと心配しなよ~」
フィリップが適当に返すと、オーセは頭をグリグリ押し付ける。昨日までフィリップは夕方まで寝ていたのに朝から起きてるから、遊んでほしいのかな?
オーセとは違い、カイサは何かを考え込んでいた。
「オーセ、これ、アレじゃない?」
「アレって??」
「デートよ。今日、決行したのよ」
「あっ! 平民街デートの日ね!」
オーセが気付くと、カイサもフィリップの隣に移動して軽く抱きついた。
「無事、お城を出れてるかしら?」
「大丈夫じゃない? お兄様も抜け道知ってるし」
「そういえばプーちゃん、そこから出てるんだったね」
「皇家の秘密だから、場所は教えないよ~?」
「怖いから聞きたくないわよ」
「そんなことより陛下、平民がするようなデートは楽しめてるかな~?」
皇族専用秘密通路よりも、デートが気になるオーセ。カイサも思い出したように、自分ならフレドリクをどこに連れて行くかと盛り上がるのであった。
「聖女ちゃん目線じゃないんだ……寝よっと」
2人はフレドリクとデートしている姿を妄想していたので、フィリップは話に入って行かずに布団を被るのであったとさ。
その翌日も、カイサとオーセはフレドリクの情報を持ち帰って来た。
「陛下、今日も休んでるんだって」
「一泊して愛が盛り上がったのかな~?」
今日も2人は妄想デート。フレドリクはどんなマッサージをしてるのかと喋っているので、フィリップは聞いてられない。
かといって何かあったらすぐに動けるようにしておかないといけないので、フィリップは眠気に耐えていたけど、気付いたら寝てた。
そして翌朝……
「陛下、まだ休んでるみたいよ」
「デートにしては長くない? もう3日よ」
昨日まで妄想デートで盛り上がっていた2人も、デート先で何か事件に巻き込まれたんじゃないかと心配になって来た。
「大丈夫じゃない? 元々2、3日空けるって言ってたし」
でも、フィリップはまったく心配しないでゴロゴロしてるので、2人は同時にボディープレスだ。
「2、3日なんて聞いてないわよ!」
「プーくん、また噓ついたね!?」
そう。フレドリクの変装を2人に見せてしまったから、フィリップは平民街デートと言い聞かせて、帝都脱出を気付かせないようにしていたのだ。
「まぁ噓ついたけど、元々お兄様から僕以外には秘密にするようにって命令されていたから……こんなヤバイ話、聞きたかった??」
「「だったら最後まで噓つけ~~~!!」」
今日はまだ秘匿期間。それなのにフィリップが言っちゃうので、カイサとオーセは怒りのあまりフィリップをポコポコ叩くのであったとさ。
機密事項の一部を聞いてしまったカイサとオーセは、誰かに喋ってしまう心配があるので極力根城から出ないように努める。
そんなことしなくても外に出る理由はフィリップの報告ぐらいなので必要のない努力。2人も無駄なことをしたとフィリップに八つ当たりのマッサージをしていた。
夕方前になると、2人は口を真一文字に結んで中央館に出発。根城に戻って来た頃には、口はユルユルだ。
「陛下、お昼からバリバリ仕事してたって」
「もう~。プーくんが変なこと言うから、ビクビクしちゃったじゃな~い」
フレドリクが帰宅済みだから、不在を疑われる心配がなかったからだ。
「ふ~ん。せっかくなんだから、もっと休んだらいいのにね」
「陛下はプーちゃんと違うの。忙しい人なのよ」
「だからだよ。お兄様も疲れが溜まって倒れたら困るじゃない? しっかり休みはとってほしいな~」
「そうだね。陛下だって疲れるよね」
オーセはフィリップの気持ちを汲んでくれたが、カイサは違う意見があるらしい。
「プーちゃんが働かないから陛下の仕事が増えるのでは?」
「本当だ! また騙されるところだった!?」
どうやら2人はフレドリクが忙しいのはフィリップのせいだと言いたいみたい。
「えぇ~。増やさないようにゴロゴロしてるじゃ~ん」
「「減らすように働けよ」」
でもフィリップは、何を言われてもベッドの上から動かないのであったとさ。
それから3日が経ったお昼過ぎ。フィリップはフレドリクの話を聞きたいから、仮病を使ったまま昼型を維持してウトウトしていたら……
「「でででで、殿下~~~!!」」
カイサとオーセが血相変えて寝室に飛び込んで来た。
「なに~? 僕、熱があるから寝ようとしてたんだけど~??」
「寝てる場合じゃないわよ!」
「外! 外、大変なことになってるよ!?」
「そと??」
何が大変かは見たら早いかとベッドから這い出たフィリップは、バルコニーに出て手摺りに寄り掛かるが、高い壁と日本風の庭園しか眼下には広がっていなかった。
「なんかすっごいザワザワ聞こえるんだけど……」
しかし、耳障りな音が引っ切り無しに聞こえるから、フィリップもただ事ではないと理解した。
「門を出た先、人でビッシリだって!!」
「何百人も急に押し寄せて来たって言ってたよ!!」
「は? 何百人?? なんでウチなんかに……僕、なんかやらかしたっけ??」
「「何もしてないけど~~~!!」」
突如、人が大量に押し寄せる緊急事態。その理由はフィリップにも、もちろんカイサとオーセにもわからないのであった……




