498 メイドの不仲は絶頂
イデオン騎士団長と内緒話をしてみたら、バッドニュースばっかり。最後に明るい話題はないのかと聞いてみたら、イデオンは申し訳なさそうに、ルイーゼは他国との会合に同行しないと告げた。たいしたネタじゃないと思ったらしい。
しかしフィリップは飛び跳ねて万歳。あの最低なマナーを見せなくていいし、おっちょこちょいを発動して他国の王様に迷惑を掛けなくていいもん。
ここまで喜ぶと思っていなかったイデオンは驚いていたが、フィリップの言い分は確かに正しい。2人で何度も万歳していた。
「何か嬉しいことあったの?」
「な、なんでもない……」
「「怪しい……」」
その声だけは外に漏れていたので、カイサとオーセに問い詰められるフィリップであったとさ。
イデオンとの密会のせいで心配事が増えたフィリップ。それなのに夜の街やダンジョン通いばかり。好きなことをして現実逃避してるっぽい。
たまには昼型に戻し、散歩と言う名の偵察。どこもかしこも雰囲気が悪いが、フィリップが歩くと笑顔で群がる貴族のオッサン。
話の内容は遠回しですっごくわかりにくいが、要約すると「次期皇帝に興味ありますよね~?」というフレドリク下ろしの相談。
フィリップは「お兄様にチクるよ?」と撃退して歩く。カイサたちはフィリップがなんの話をしていたかわからなかったんだって。
メイドの場合はフィリップを無視。小さいから目に入りにくいって理由もあるが、要職に就いた逆ハーレムメンバーの未婚者の取り合いで忙しいのだ。
フィリップはメイドが集まって喧嘩しているところにまざり、ウンウン頷きながら聞いてる。カイサたちは「よくバレないな」と呆れながら一緒に話を聞いて楽しんでいる。
美人のメイドが口走る罵詈雑言が凄いから面白いんだって。
「右チームの勝ち!」
「「「「「ででで、殿下!?」」」」」
あと、フィリップが中央で審判して驚く美人の顔も。
これは面白いとカイサたちに好評だったので、フィリップはリクエストに応えて毎日審判。メイドたちを驚かせて回る。
カイサたちも審査に加わり楽しくドッキリしていたら、メイドたちも頭を使い出した。顔は笑顔で言葉は優しく遠回しの言い方に変えたのだ。
「えっと……要約すると、あの人はド変態のビッチで、あの人はジジイとばかり寝てる毒婦だって」
「「へ~」」
「「そそそ、そんなこと一言も言ってませんことよ~。オホホホホホホ~」」
カイサたちがつまらなそうにしていたからフィリップが通訳。世間話風の口喧嘩もフィリップに掛かれば通じないので、メイドたちも笑うしかない。
それでもメイドたちは優しくバチバチやっているので見て回っていたら、ペトロネラを発見。向こうから素早く近付いて来た。
「こわっ。いまのどうやったの? 平行に飛んでるみたいだったよ??」
「ウフフ。お久し振りですね」
フィリップの質問に答えないペトロネラ。単純に長いスカートで足が隠れているから、上下運動をしなければUFOに乗っているような人に見えたのだ。
「最近、どう?」
「それはもう充実してますよ~。若い子捕まえてと皆さんから羨ましがられたり、毎日求められて肌がピチピチですもの~」
「ゴメン。そんなこと聞いてない。主語省くんじゃなかった……」
デキるペトロネラなら察してくれると思っていたが、ポンコツ状態のペトロネラだったからフィリップは後悔だ。元カノみたいなモノだもん。
「侍女の雰囲気ですか?」
「うん。どんなんかな~っと思って」
「そういえば……ここ最近、怒鳴り声が聞こえませんね。殿下が何かしてくれたのですか?」
「したと言えばしたけど……」
「カイサ、オーセ。教えてくれる?」
フィリップが口ごもったら、ペトロネラは標的を変えた。嘘をつかれると思ったみたいだ。
「そんなことで??」
「「はあ……」」
ただ、2人も説明する口を持ち合わせていない。フィリップもどう説明したら伝わるか考えていただけだ。
「ま、汚い言葉は恥ずかしくなったから、優しい言い方に変えたってだけかな? 中身は一切変わってないよ」
「そういうことでしたか。どうりで回りくどい喧嘩をしているなと思っていたのです」
「なんでそこまで喧嘩したがるのかね~」
「本当ですよね。結婚相手なんて、若くて顔のいい男を捕まえたらいいだけですよね~?」
「勝ち組の余裕!?」
1年前まで、ワインボトルを片手に「男、紹介して~」とか言っていた人の言葉ではないので、フィリップもちょっとムカッとするのであった。
それから数日、メイドの仲は悪いけど喧嘩には見えなくなったのでフィリップは夜型に戻ろうと寝ていたら、おやつの時間を過ぎた頃にカイサとオーセが寝室に怒鳴り込んで来た。
「「でででで殿下!?」」
「あと4年……ムニャムニャ」
「「そんなに寝たら死ぬよ!!」」
でもフィリップは目覚めず。このままでは本当に寝たまま死ぬと思った2人は、ありとあらゆる手段を用いたら、フィリップは息を吹き返した。
「なに~? まだ太陽は高いところにあるじゃな~い。起こすの早いよ~」
「いや、遅すぎるのよ……って、なに言おうとしたんだっけ?」
「なんだっけ? プーくんが変なこと言うから忘れたでしょ~」
「忘れたならたいしたことじゃないんじゃない?」
あんなに慌てて怒鳴っていたのに、フィリップを起こすことに多大な労力と時間を使った上に昼夜逆転の時間感覚で文句を言うから、カイサとオーセは本当に話をしたい内容を忘れるのであったとさ。




