496 あれよあれよの出来事
神殿の闇に喜んで触れたフィリップは、ヴァルナル神殿長のゲス顔に合わせていたら顔が元に戻らないことに。カイサとオーセに手伝ってもらって馬車は進む。
「「プッ……元に戻ったよ」」
「笑ってるよね?」
「「アハハハハ」」
いや、オモチャにされてるね。カイサたちもオモチャにし過ぎてどんな顔か忘れたんだとか。
そのおかげで、目的の場所に着いた頃にはフィリップの顔も普通に戻ったと思われる。
「あ、ボエルが門番なんだ~」
「だったらなんだよ……てか、その顔、どうした? 鼻の下が伸びまくってるぞ??」
「え? まだ直ってないの!?」
カイサたちはスケベ顔を一番見慣れていたから、これがフィリップの普通の顔だと思ったらしい。フィリップもこの顔が一番楽らしい……
しかしボエルが指摘してくれたので、鼻の下を引っ張ってバチンッと戻した。みんな「そんなので直るんだ」と驚いてます。
「てか、なんの用だ?」
「聖女ちゃんいる?」
「だからな。アポイント取ってから来いっつってんだろ」
「急ぎなの~。そこのお前、死にたくなければ僕が来てると伝えて来い」
「はい!」
「「「脅すなよ」」」
ボエルに言っても通じないなら脅し。若手門番は第二皇子に脅されたからには、玄関に走るしかなかった。
それで簡単に面会は許可されたので、ルイーゼとは玄関で立ち話だ。
「ちょっと耳貸して。神殿でね~……」
「なんですって!?」
フィリップがゴニョゴニョと言うだけでルイーゼはやる気満々。1人で乗り込もうとしていたので、フィリップはフレドリクの耳に入れたほうがいいと止めて一緒に向かう。
ルイーゼがやって来たのだから、執務室はフリーパス。お客がいるのに入れちゃったよ。
「モンス君! いいところにいた!?」
「はい??」
今度はルイーゼがプンプン言いながら説明したら、フレドリクも超やる気。ついでに偶然いたモンスも巻き込まれたけど、断ることもなく超やる気だ。
あれよあれよと事態が進んで行くので、カイサたちはまったくついて行けない。フィリップ発信のことなのに、当のフィリップはフレドリクにノートを渡しただけでソファーにふんぞり返っているから使い物にならない。
準備が終わったのは小一時間後、フィリップたちはフレドリクたちの乗る馬車の後ろからついて行く。
「ねえ? 何がどうなってるの?」
「プーくんはルーちゃんに何を吹き込んだの?」
「僕も何がなんだか……僕は神殿に困ってる人がいるって言っただけだよ? まさかこんな大事になるなんて……」
馬車の周りには馬に乗る騎士が100人以上。フィリップも本当にこんなに早く事が進むなんて思っていなかったので、カイサたちと同じ顔してる。
そのまま適当なことを言っていたら、神殿に到着。こんなに物々しい雰囲気なのに、出迎えに来た神官は笑顔で中に通している。
そして、走る姿は速そうなのに超遅い神殿長のヴァルナルが登場。先頭にいるフィリップの顔を見て、揉み手のゲスイ顔で近付いて来た。
「これはこれは第二皇子殿下。お早いお戻りですね~。お友達もいっぱい連れて来てくれてありがとうございますぅぅ」
フィリップはニヤニヤしていたけど「こいつ、まだわからないのか?」と驚愕の表情に変わった。
「う、うん……大物も連れて来てあげたよ。道を開けろ!」
「「「「「はっ!!」」」」」
フィリップが命令すると、騎士は廊下の両側に分かれて中央を開いた。
「こ、皇帝陛下……」
そこにはフレドリク。両隣にはルイーゼとモンスが立っていたので、さすがにヴァルナルもゲスイ顔が消えた。
「フィリップ君から聞いたよ! 女性に酷いことしてるんでしょ! プンプン!!」
フレドリクが何か言おうとしたけど、ルイーゼが先走って怒鳴る。フィリップは「ここは皇帝の出番~。最後のプンプンいらない~」と、心の中でツッコみまくりだ。
「で、殿下……これはいったい……」
蒼白のヴァルナルはフィリップに助けを求める目を向けたら、フィリップはニヤニヤ返す。
「僕、ちゃんと約束守ったよ? ドーンッと、いっぱい連れて来たでしょ??」
そう、フィリップは何一つ主語を入れてない。
「わ、私をハメたのですか!?」
「そうとも言う! アハハハハ」
今回の件は、悪者を罠にハメて楽しみたかったんだね。
「で、殿下もお楽しみになったでしょう!?」
「うん。お前をハメる策を考えるの楽しかったな~。ちなみに女性には、指一本触れてないよ。僕の弱味も握れなくて残念だったね~?」
「ふざけるな~~~!!」
「ふざけてま~す。アハハハハ」
こうしてフィリップは、笑いながら騎士の間を抜けるのであった。
神殿長をハメたことを悪びれずに笑っているから、全員ドン引きしてるけど……
「いったいプーちゃんは何をしてたの!?」
「てか、あんなに大事になってるのに帰っていいの!?」
馬車にさっさと乗り込んだら、今回もカイサとオーセの取り調べだ。
「さっき言ったじゃ~ん。困ってる人がいたって」
「「それだけじゃわからないの~」」
「しょうがないな~……」
2人が甘えた声を出して抱きつき、モゾモゾしてくれるのでフィリップは教えてあげる。
「あの部屋には女の子がいっぱい居たのね。だからいつも神殿長に何されてるのかと聞き出して、お兄様たちにチクってやっただけ」
「「人助けしてたんだ……」」
「そそ。いや~。神殿長のあの顔、笑えたよね~??」
「「ううん……かわいそうだった……」」
悪人でも、フィリップの悪ふざけに付き合わされたのだから哀れに感じてる2人。せめて被害者の話をしてくれたら素直に褒められたのにと、呆れるだけだ。
「ところでプーちゃん? 指一本触れてないとか言ってたけど本当?」
「プーくんってそんな我慢できるの?」
「……」
「「なんか言えよ」」
真実は闇の中。フィリップがこの件については何故か目を逸らして何も言わないから、「しっかり楽しんだのに神殿長を売ったのか」と、カイサとオーセに蔑んだ目で見られるのであったとさ。




