489 カイVS騎士団長
「そこにすぐ連れてって!」
「「「「「はっ!」」」」」
「僕たち全員おんぶ!!」
「「「「「はっ! はっ??」」」」」
「早く!!」
「「「「「はっ!!」」」」」
カイと騎士団長が決闘してるのだから、一大事。フィリップは騎士に命令したが、おんぶには首を傾げていたから急かす。
チビッコ3人組が騎士に背負われたら、フィリップの「ハイよ~。シルバー」。騎士は意味がわからないけど走り出した。
そうして「どけどけ~。どけどけ~。第二皇子のお通りだ~い」と爆走したら、あっという間に屋外訓練場。見掛けた人は「またあの馬鹿は……」と呆れてたんだとか。
「もう始まってる!? 行け! 突撃~~~!!」
騎士が野次馬の最後尾で止まったので、フィリップは無茶振り。どこに位の高い者がいるかわからないから、騎士は「第二皇子殿下が通りま~す!」と道を開けさせ、最前列でフィリップたちを下ろした。
「うわっ……レベチだな。あ、ボエルだ」
騎士の訓練をちょびっとだけ見たことのあるフィリップは、カイと騎士団長の戦闘はなかなかやるなと思ったけど、戦う2人の向こう側にボエルを発見した。
「ボエル~? 僕だよ~~~??」
フィリップが大きな声で名前を呼びながら近付くものだから、ボエルは何やら焦ったジェスチャーをしたあとに、人垣の内側をダッシュしてやって来てくれた。
「あぶねぇだろ! なに戦闘現場を横切ろうとしてんだよ!!」
そりゃ激しい剣戟を繰り広げているところを手を振りながら来たら、ボエルも焦るってものだ。
「いや~。そっちのほうが近かったから」
「だからって! はぁ~……てか、こんなとこで何してんだ?」
フィリップにまったく危機感がないのでボエルは呆れて説教する気も失せちゃった。
「決闘見に来たの~。まだ始まったばかり?」
「ああ。数分前だ」
「理由は? 確かあの2人って親子だったよね? 親子喧嘩??」
そう。騎士団長とはカイの父親、イデオン・リンドホルム。見た目は黒髪のカイを老けさせた感じでガタイもいいので、全身鎧を装備しているから一回りは大きく見える。
フィリップは「カイも老けたら大きくなるのかな?」とか、まったく関係ないこと思ってる。
「んなつまらない理由なワケないだろ……てか、殿下にこれ、言ってもいいのかな??」
「いいよいいよ。お兄様の耳に入れなきゃいいんでしょ~」
「う~ん……皇族ってのがダメな気がする」
フィリップはだいたい予想はついている。なので「あのことチクるよ?」と脅したら、ボエルは簡単にゲロッた。弱味はいっぱい握られてるもん。
「マジで? 騎士団長の謀反って……マジのマジ??」
「マジだ。カイ様も加われと言われたが、反対して一騎討ちになったんだ。たぶん、カイ様はお父上が処刑されないように止めようとしてるんだと思う」
騎士団長が謀反を企んでいただなんて、あってはならないこと。もちろん皇族の耳に入ってもいけないことだ。
「ちなみにだけど、経緯は? ボエルも謀反に誘われたの??」
「いや、オレは部署が違うから……その顔やめろ。喋らねぇぞ?」
フィリップが悪い顔をしてたらボエルも怖くて喋れない。なので、フィリップはスケベ顔に変えたら「いつもの顔だな」とボエルは教えてくれる。
カイサたちに笑われたから、フィリップもいつもの顔ではないことに気付いてますよ。
謀反の理由は、やはり軍事費削減のせい。リストラだけじゃなく給料も減らされたから、イデオン騎士団長は部下のために待遇改善を直接フレドリクに訴えていたそうだ。
しかし何度訴えても聞き入れてもらえず。だから強硬手段に出ようと仲間を集める。ただし、それは秘密裏に。すぐにバレると成功確率が下がるから、口の固い者から声を掛けた。
すると、同じことを思っていた同志が一気に増える。そうなると黙っていられず、口の軽い者が中立派にまで喋ってしまった。
その過程でボエルの耳に入ったが、そういうことに興味がないからと断ったんだって。フィリップには「新婚だからクビになりたくなかったんでしょ~?」とバレバレだ。
「ふ~ん……謀反は謀反だけど、ストライキみたい……」
謀反のやり方は、大勢での座り込みだけ。武器も防具も持たないように計画していた。
かなりの人数が集まったから、そろそろ実行に移そうかと考えていた矢先、カイがやって来たからイデオン騎士団長は誘ってみたが、大喧嘩。現在に至る……
「真剣でやってたのかよ……」
「うん。まぁ……どっちもブチギレだったから……」
「どっちも頭の中には筋肉しか入ってないのかよ……」
フィリップが話し忘れはないかと聞いてみたら、命のやり取りになっていたから引いてます。
「てか、それで全部? 騎士団長は、聖女ちゃんの悪口言ってなかった??」
「言っては……なかったんじゃないかな? 皇帝陛下の政策が悪いようなことは聞こえたけど」
「間接的にでもダメなのかよ~。あの筋肉バカ~~~」
フィリップが嘆いていると、ボエルたちは「どっちのこと?」とやってる。どっちもいい筋肉積んでるもん。
「しっかし、騎士団長、けっこうやるね」
「そりゃ騎士団長だからな。腕力であの地位に就いたらしいから、弱いワケねぇだろ」
「でも、押され気味じゃない?」
「作戦じゃね? 騎士団長は盾も上手いし。カイ様が疲れるの待ってんだよ」
「ああ~……勝つにはそれしか手がないのか」
「どうだろう。怪我を最小限にして勝とうとしてるのかもしれないぞ」
ここからは、2人は戦いに集中して意見を述べ合う。カイサとオーセは見ていてもわからないから、2人の実況で見やすくなったそうだ。
それから10分後、フィリップの目には完璧に勝者が見えた。
「残念。カイの勝ちだ」
「は? 勝負はここからだろ」
「カイにやられたの忘れてるの? カイはまだ手を抜いてるよ。騎士団長も手を抜いてるのかと思ったけど、限界が近そうだ」
「本当だな……本当に僅かだけど動きが鈍ってる……」
ボエルがよくわかったなとフィリップを問い詰めようとしたら、また悪い顔をしていたので嫌な予感しかしない。
「な、なに考えてんだ? 俺のことは巻き込んでくれるなよ??」
「そう言わず~。いつものように巻き込まれてよ~」
「せめてお願いしろよ! いや、お願いされてもやらねぇからな!?」
ボエルが嫌がっても、もう決定事項。フィリップはお願いもせずに脅すから、ボエルは巻き込まれるしかないのであったとさ。




