488 景気の違い
お見合い相手のエレオノールの初夜は、カイサの部屋で寝ると言っていたフィリップが消えたので何もナシ。カイサもフィリップがいないから自分の部屋で寝ました。
翌朝カイサたちが起きたらフィリップはリビングのソファーでグウスカ寝ていたので、デコピンだ。デコピンした人が悲鳴をあげてたけど……フィリップはレベル99だもん。
痛みが引いてから事情聴取をしてみたら、戻ったらカイサが気持ち良さそうに寝ていたので、片方だけ襲うとオーセが嫉妬するかと思ってソファーで寝たとかフィリップは言い訳してる。
「そこは起こすと悪いからと言うべきじゃない?」
「プーくんの手癖が悪いの知ってるんだから、それぐらいで嫉妬なんてしないわよ」
その変な言い訳のせいで、本命の夜遊びはうやむやに。さらにエレオノールの世話やメイドを連れて来てと頼んで追及をかわす。
メイドが入って来るまでに、フィリップはエレオノールと会って昨夜のおさらい。やることやって、フィリップが気に入らないと言って捨てる作戦だ。
そのエレオノールはフィリップのことを汚物でも見るような目をしているので「それそれ~」と、フィリップは100点の演技だと褒めてる。
どうやらいい人だと思った人物が、聞いていた通りの人物だったから、さらに好感度が下がったらしい。
メイドが入って来ると、フィリップとエレオノールは作戦通り、目も合わせないで不機嫌な演技。メイドは何があったのかとあたふたしている。
特にエレオノールがそんな顔をするのを初めて見たからショックを受けたのか、フィリップを睨む始末。でも、不機嫌なのはフィリップも一緒なので、バレないように睨むようになった。
その2人が朝食を食べて出て行くと、フィリップたちは護衛騎士の操縦する馬車に揺られて帰って行くエレオノールをバルコニーから見送っていた。
「これで本当に大丈夫なの?」
「大丈夫じゃない? 僕のワガママだから、お兄様も父親も面目は立つからね」
「婚約者はどうするの? プーくんと一晩共にしたなんて聞いたら、結婚は流れちゃうんじゃない??」
「そんな噂で揺らぐようなら、そもそも上手くいかないって。ま、初夜で僕が手を出してないって気付くよ」
「「心配だな~……」」
馬鹿皇子の立てた作戦なんて、上手くいくとは思えないカイサとオーセ。しかし、これは三度目だ。
「あっ! 前のお見合い……あの時って手を出したって噂流れてたけど……」
「そうだ! どっちもやることやって捨てられたって言われてた!!」
「「私たちが買い物してる時にやったんか??」」
「さて、どうでしょう? 眠いから寝るね~。おやすみ~」
「「どっちなのよ~~~」」
こうして三度目のお見合いもフィリップは乗り切り、第二皇子は手を出すだけ出して責任を取らない最低野郎と噂されるのであった……
三度目のお見合いも失敗したのだから、さすがにフレドリクもオコ。失敗よりも、良家のご令嬢を傷物にしたことがありえないと怒られてました。
ただし、フィリップはフレドリクがお見合いしろと言い出しにくくしたいから手を出したことにしているので、してやったりだ。
フレドリクの説教を短くしたいフィリップは、平謝りプラス涙で対応。何度も頭を下げて、ふらついた演技もプラス。体温も上げて最強コンボで乗り切った。涙は目にくっつけた氷を溶かしていたから偽物だ。
ひとまずこのまま仮病を使って様子見。カイサたちから噂話を聞きつつ、夜遊びを楽しむフィリップ。
この頃の帝都は、平民と貴族ではまったく違う表情をしている。平民はフレドリクの税制改革を大いに喜び、貴族は暗い顔。減税されたのだから、取り分が増えた側と減った側の違いだ。
そのおかげで、フレドリクとルイーゼの人気は絶好調。今まで何かする度に民は喜んでいたが、さらに浮かれて神様に近い扱いをされている。
フィリップも少しは恩恵があるよ? 飲み屋に女の子が多く来てるもん。ここ最近は入れ食い状態なので、街を歩くと女性から声を掛けて来るケースもある。
まぁ子供に見えるから「ボク~? お母さんは~?」と迷子を見付けたような声の掛けられ方だけど。フィリップは逆ナンにカウントして、お金を見せびらかして宿屋に連れ込む。
一度でもフィリップとマッサージした女性なら「ボク~? 今日もかわいいね~」と自分から誘う。フィリップはモテモテだと嬉しそうについて行くが、目的はお金。もしくは、ショタコンの犯罪者……
そんな夜の街を楽しく歩いていても、聞こえて来る不穏な噂。貴族もイライラしているが、軍事費削減で一番被害が出ている騎士団はもっとだ。
心なしか衛兵の数も減っている気がする。平民どうしの揉め事も増えたので、フィリップが身銭を切って自警団を作るしかなかった。キャロリーナに任せるだけだけど。
夜の街でこれでは、昼も心配。フィリップは昼型に戻して、城の中をお散歩していた。
「う~ん……やっぱり遠いか。馬車で散歩しよっか」
「「たまには歩けよ」」
久し振りに根城を出たのにこの始末。カイサたちにツッコまれても、馬車移動だ。
フィリップの目的の場所は、根城と対角線状の真逆。南から外回りにゆっくりと馬車が進むと、カイサたちはこっち側は初めて見たと「馬車移動も悪くないね~」と観光気分になってる。
そうこうしていたら、城の南東の端に到着。フィリップはここから歩くと、カイサとオーセだけを連れて中央館に入って行った。
そうして道に迷っていたら、カイサたちに「お前の家だろ」と言われたけど、フィリップは「ここに来たの初めてで~す」とか言って引かせた。フィリップの言動よりも「どんだけ広いの?」とか言ってる。
3人で揉めていたら、騎士が数人走って来た。フィリップはこれ幸いと両手を広げて大声を出したら、騎士は急停止して気を付け。
第二皇子の命令だもん。第二皇子と言わなかったら素通りしていた可能性は高いが……
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど……その前に、何をそんなに急いでるの?」
道案内よりも廊下を走っていたことが気になるフィリップ。騎士は仲間を何回か見てからモゴモゴ答える。
「あの~……その~……」
「そんなにもったいぶるってことは、面白いことだな。もしも面白くなかったら死刑ね?」
「けけけ、決闘! 面白くなくてすいません!!」
そんなんだからフィリップは脅すのだ。
「決闘!? 超面白そうじゃん! 誰と誰がやってんの??」
「えっと……カイ様、と……騎士団長らしい、です……」
「おお~。大物どうしじゃ~ん……ええ!?」
これは騎士団の内輪揉め、だからこそ騎士は口が重かったのであった……




