480 フィリップを激怒させる者
フィリップが現実逃避をして自分の身長は150センチだと言い出し、カイサとオーセが目頭を押さえて1日が始まったけど、フィリップはベッドに入って二度寝。
カイサたちは不憫に思って今日は好きにさせていたら、お昼過ぎに客が訪ねて来た。フィリップは名前を聞いたら「追い返せ!」と命令したけど、客はすでにバルコニーの下まで来ていた。
「殿下~! 身長が低いぐらいで気を落とさないでくださ~い! ちなみに私はまだ伸びてましたよ~~~!!」
「ラーシュ! てめえ! 死ね~~~!!」
客とは同い年のラーシュ。大声で慰めているのも腹が立つのに、自慢しやがったのでフィリップは激ギレ。部屋にある物やない物までバルコニーから投げて、ラーシュを殺そうとしてるよ。
手加減していてはなかなか当たらないので、フィリップはパジャマのまま庭へ。剣を振りかざして走って来たからには、ラーシュもからかい過ぎたと土下座だ。
「ねえ? こんな熊の置物なんて、あの部屋になかったよね?」
「うん……いつの間にか剣も握ってるし……」
「「どうなってんの??」」
フィリップはキレ過ぎて、カイサとオーセにアイテムボックスの存在を気付かれそうになるのであったとさ。
フィリップが土下座するラーシュを斬り殺しそうになったが、護衛騎士が体を張って止めたからギリセーフ。こんなご時世に仕事がなくなると困るから必死だったんだって。
「てか、何しに来やがった……」
でも、フィリップはまだキレてる。身長はフィリップの逆鱗だもん。ラーシュが190センチに届きそうな勢いなのも怒りの理由だ。
「あの……誕生日会に出席できないので、先にお祝いを……お納めください」
ラーシュは商人がお代官様に差し出すかのように、土下座したままズズイっと箱を前に出して、そのまま後退した。
フィリップは護衛騎士に箱を開けさせたらまた激怒だ。
「シークレットシューズなんていらないんだよ! まだからかってるだろ!!」
「すいませ~ん! 本当に喜ぶと思って作ったんです~~~!!」
ラーシュが心を込めて職人に作らせたシークレットシューズ、フィリップは履くこともなく剣で滅多刺しにしたのであったとさ。
シークレットシューズがゴミクズに変わっても、フィリップの怒りは収まらない。かといって怒ったままだとラーシュが逃げて行きそうなので、エントランスのテーブル席に誘ってお茶を振る舞う。
「そういえば、ラーシュのお父さんって、まだ生きてるの?」
「い、生きてますけど……それを聞いてどうするのですか?」
「コロ…爵位を剥奪されてないか心配になっただけだよ」
「いま殺すって言おうとしませんでした?」
「ううん。早く言えよ」
「父は不正なんてしていませんので普段通り仕事をしています」
「チッ……やはり……」
フィリップが自分の手で父親の息の根を止めようとしているのかと、ラーシュは震えてるよ。
「あ、フィアンセはどうなったの? いつ結婚するの??」
「結婚……」
「ん~? どうしたのかな~??」
ラーシュはフィアンセが出ると「こっちを人質に取るの!?」と驚いたけど、結婚というワードで肩を落としたので、フィリップはニヤニヤ。調子が戻って来たな。
「来年に式を挙げる予定でしたが、お相手の当主が不正をしていまして……」
「うほっ! 死んだ? 処刑??」
「生きてはいます。ただ、不正をしていた家と今くっつくのは時期が悪いと、流れてしまいそうで……」
「バンザーイ!!」
「まだ決まってませんからね!!」
ラーシュの不幸は蜜の味。フィリップは心配なんかはひとつもせずに、万歳を繰り返してるよ。
「ヨシヨシ。そういう話、もっとちょうだい。もっと不幸になれ~」
「もうないですよ」
「じゃあ作ろう。一緒に娼館行こうぜ」
「殿下が行っちゃダメでしょ!?」
「じゃあ1人で行って来い。お金あげるから」
「なんでそんなに行かせたいのですか!?」
「……面白そうだから?」
フィリップの狙いは、護衛騎士につけさせてどんな娼婦を買ったか聞くこと。その後、その娼婦からラーシュのプレイ内容を聞きたいのだ。
「そんな卑猥な施設、私は絶対行きませんからね」
「なんで~? 楽しそうなのに~……ひょっとして、他に女いる??」
フィリップが軽く質問すると、ラーシュは一瞬、右斜め上を見た。
「いませんよ」
「ダウトー! 絶対いるね~。どんな子なの~??」
「だ、だからいませんって!」
「アハハ。いる反応だ。わっかりやすいな~。アハハハハハハ」
「いないって言ってるじゃないですか! あ、もうこんな時間だ! 仕事があるんで、失礼しま~~~す!!」
こうしてラーシュは来た時とは違い、焦って帰って行くのであった。
「さて……誰に聞いたら浮気相手を教えてくれると思う?」
「かわいそうに……」
「アレはラーシュ様も悪いよ」
フィリップは悪い顔をし、カイサは同情したけどオーセに言われて納得するのであった。
「また馬忘れてやがる……おい、お前。ラーシュをつけて来い!」
「はあ……」
「殿下の周りって抜けてる人しかいないのかしら?」
「貴族の常識が崩れるよね~?」
ラーシュがペコペコ頭を下げて馬を取りに来たので、フィリップはすかさず護衛騎士を走らせるのであったとさ。




