467 第二皇子を傷付けた罰
第二皇子が大怪我をしたのだから、訓練場は騒然。モンスが回復魔法をフルパワーで使うが、フィリップの傷が深すぎて治りが遅い。
「がはっ!?」
「フィリップ君! 肺にまで届いてる可能性がある……誰か馬車を! 皇后様に手伝ってもらいます。急いで!!」
「「「「「はいっ!!」」」」」
フィリップが血を吐くとモンスだけでは心許ないのか、騎士を使い馬車に乗せて搬送するのであった……
フレドリク邸に緊急搬送されたフィリップは、ルイーゼの聖魔法でみるみる傷が塞がって完全回復。しかし血を流し過ぎて、なかなか目を覚まさないでいた。
「フィリップ! 大丈夫か!?」
客室に飛び込んだのはフレドリク。他には目もくれずにベッドで寝ているフィリップの手を取った。
「これはいったい、どういうことだ……」
弟が大怪我をしたのだ。さすがにフレドリクも怒りを覚えたのかカイを睨んだ。
「いや、違うんだ……俺は寸止めしたはずなんだ」
「それでどうしてフィリップが大怪我するのだ!」
「本当だって。あの時、フィリップは何かを投げたんだ。それで視界が……それでも目測を誤るとは思えない」
「つまり、見えてなかったのだな?」
「だから、本当に当たらない場所で剣は止めたんだ。信じてくれ!!」
状況を正確に伝えれば伝えるほどドツボ。フレドリクはもう聞くことがないと、事情聴取はモンスに移行する。
「モンスがついていて、どうしてこうなったのだ?」
「私もサッパリ……フィリップ君はちょうどカイの体で隠れたところだったので。ただ、その前のやり取りは、カイが怒っていてフィリップ君が怯えていました。何か私に助けを求めたような気がしましたが、騎士が大きな音を出していたのでハッキリとは聞こえませんでした」
「カイ……」
「怒ったフリだって。フィリップが変な悪口ばっかり言うし、汚いことばっかりするからお灸を据えようと」
「フィリップはモンスに何を言った?」
「た、助けてと……」
完全に有罪。帝国の法に則ると、死刑相当だ。
フレドリクは死刑が頭に過ったが、同じ釜のメシを食い、苦楽を共にした親友にはすぐには判決を下せない。
「ん、んん~……」
フレドリクが悩んで1分ほど。フィリップが覚醒した。
「ふあ~あ。よく寝た~……アレ?」
しかも暢気なことを言ってムクリと起きたので、フレドリクたちはポカンとしてる。
「えっと……僕、ここで何してるの? てか、ここどこ??」
「私の屋敷の客室だ……」
「なんでこんなところにいるんだろ……」
「覚えてないのか? フィリップはカイと鬼ごっこ対決をして、大怪我をしたのだ」
フィリップは考えている素振りをしてから、手をポンッと打った。
「あっ! そういえばカイに斬られそうになった記憶がある。なんかで読んだ、前に出たらダメージが少ないってのを試して……斬られたの??」
「ああ。斬られて大怪我したと聞いている」
「なんだよあの本~。ウソばっかだな」
「それよりフィリップは大丈夫なのか? 他に痛いところないか??」
「ぜんぜん。お姉様が治してくれたの? さっすが聖女様。ありがとね~」
フィリップがあまりにも軽いので、深刻な空気はどこへその。しかしカイは別だ。
「すまなかった! 俺に驕りがあったせいで、フィリップに大怪我を負わせてしまった! どんな罰でも受ける! フレドリク、裁いてくれ!!」
第二皇子殺人未遂の犯人なのだから、カイはフィリップに向けて深々と頭を下げ、フレドリクには先ほど下そうとした判決を急かした。
「では……」
「そんなのいいのに~」
フレドリクの言葉をすかさず遮るフィリップ。
「フィリップ。そうはいかない」
「なんで? 訓練中の事故ってだけじゃん」
「フィリップは皇族だからだ。他の者に示しがつかない」
「じゃあ、僕が罰を与える。カイは僕に接近禁止。お兄様と一生友達でいてね」
「「フィリップ……」」
あまりにも軽い罰に……いや、フィリップの最後の言葉が心に響いたフレドリクとカイは、優しい顔で見詰め合った。
「そうだよ! ケンカはダメ! フィリップ君がこう言ってるんだから、お言葉に甘えよ。ね? はい、仲直り~」
すると何故かルイーゼがまとめたので、「一番いいところ取られた!」ってフィリップは驚いた顔をしている。しかしルイーゼラブのフレドリクたちは、まったく気付いてないよ。
「そうだな……私は皇帝の前に、1人の人間だ。親友にキツイ罰は下せない」
「俺のせいでルイーゼを心配させてすまなかった。金輪際こんな事態が起きないように気を付ける」
「そうですよ。2人がギクシャクしていると、皇后様も悲しみますからね。気を付けてください」
さらにフレドリク、カイ、モンスは被害者にまったく触れないので、フィリップは口をパクパクしてオーセとカイサを見てる。通訳すると「こいつらマジか?」だ。
フレドリクたちにルイーゼが加わって甘い空気を出すので、フィリップはこっそりとベッドを抜け出してオーセたちの下へ行くと小声で喋る。
「帰るよ」
「「大怪我したばっかりでしょ」」
「こんなところでゆっくり休めないよ。急いで。静かにね」
「「はい……」」
こうしてフィリップたちは、ラブラブ空気を出しているフレドリクたちを置いて客室を後にしたのであったとさ。




