459 やってるフリ
フィリップに言い負かされたヨーセフは、怒りを抑えて今日の仕事を言い渡す。
「昨日より多いんだけど~?」
「当たり前です。あの程度が1日の仕事量なワケないでしょ」
「えぇ~……」
「あと、ズルはナシです。2人には外で待機していてもらいます」
「ええぇぇ~……お昼まで自由にしてて~」
「嫌がるなら指示するのおかしいでしょ!」
今日は昨日の倍でカイサとオーセの手助けはナシ。2人が不安な顔をしていたからフィリップはよかれと思って声を掛けたのに、ヨーセフのツッコミが炸裂したのであった。
仕事を始めたフィリップは、昨日と同じくダラダラ作業。さすがに縄での拘束はやりすぎたとヨーセフも自覚があったらしい。やっても意味ないし。
ひとまずヨーセフはフィリップを眺め、遅くてもちゃんとやっていたので席を外す。
「ちゃんとやってる……」
「フェイント掛けるなら、もう少しあとで戻って来なよ」
すぐ戻って来たので、フィリップも引っ掛からない。それはあと2回続き、フィリップはちゃんとやってるフリで乗り切ったらお昼寝だ。
「なに寝てるんですか……」
フィリップが目覚めたら、怒れるヨーセフの顔。
「ふぁ~。ごはんの時間だ~」
「誰が行っていいと言ったのですか!」
「カイサとオーセ? 迎えに来てるじゃん」
「私が言うまで我慢しなさい!!」
「ええぇぇ~……お腹すいたよね?」
「「食べて来ましたので……」」
「そこ! 無駄話しない!!」
フィリップは嫌そうにした直後にカイサたちに喋り掛けたので、ヨーセフのナイスツッコミだ。
「ちょっと遅いですが……」
「慣れてないからそんなもんじゃない?」
「それは私のセリフです! はぁ~。行っていいですよ」
「やった~! 帰宅だ~~~!!」
「誰も帰っていいなんて言ってないでしょ!!」
ヨーセフ、ツッコミ疲れたので昼食は許可。しかしフィリップはそのまま帰りそうだったので、さらに疲れるヨーセフであった。
ランチをしっかりとったフィリップは、庭園で丸まってお昼寝。全然起きなかったからオーセがヨーセフを呼びに行き、首根っこを掴まれて連行されるフィリップ。メイドからまた「猫、猫?」とか言われてました。
お昼からもフィリップは不真面目。ダラダラやって、ヨーセフが自分の仕事をやり始めたら、フィリップは匍匐前進で死角に移動した。
「で!」
「死ぬ?」
「……」
後ろから肩を叩かれた文官、大声を出し掛けてフィリップに脅されたら、手で口を塞いでブンブン頭を横に振った。
「これ、やってくれるよね?」
「そ、それは……」
「名前は? フルネームで。家ごと潰してやるよ」
「やらせていただきます……」
「あとで取りに来るよ。なる早でね~」
文官を脅して押し付けたら、匍匐前進で席に戻り、器用に肘で頭を支えて居眠り。ヨーセフに気付かれないように書類を回収したら、本格的に眠るフィリップだった。
堂々と眠るフィリップを見たヨーセフはまた激怒していたけど、仕事は終わっていたのでそれ以上は怒れない。翌日もその翌日もフィリップは出勤して、他の文官に仕事を押し付ける。
数人の文官に協力させたから、余裕を持って終了だ。しかし、3日目にはヨーセフも何かがおかしいと気付き出した。
「殿下が来てから、妙に部下の仕事が遅いような……」
そりゃ文官が残業し出したら気付いてもおかしくないよ。
「てか、この仕事って、いったい何を調べてるの?」
なので、フィリップは質問を投げ掛けてあやふやにしてやろうと企む。
「貴族のカネの流れです。どうも無駄遣いが多いみたいなので、フレドリク殿下が調査を命じたのです」
「ふ~ん……貴族って、無駄遣いしかしてないような……豪華な服は、無駄遣いに入る?」
「それは経費で落とせますから問題ありません。問題は、裏で貯め込んでいる貴族です」
「ああ! 無駄遣いの調査とか言って、横領してるヤツを焙り出そうとしてるのか~。汚いことするな~」
「陛下に同じこと言えます?」
フィリップは賢いことを言ってしまったから付け足したら、ちょっと失言しちゃったね。
「ところで殿下は、横領なんかしてませんよね?」
「貴族を騙して巻き上げたお金は、横領に入る?」
「詐欺罪です……」
「じゃあ、セーフ?」
「アウトです」
「えぇ~。父上には何も言われなかったよ? 父上が間違ってるとでも言いたいの??」
太上皇が許可してるなら、口が裂けても否定できないヨーセフ。
「い、いえ……どのような経緯でそうなったかだけ教えてください」
「確か~……僕にお金くれる貴族がいっぱい居たから、名前と金額を書いて渡したら褒められたの」
「それは賄賂ですね。殿下を使ってフレドリク陛下を蹴落とそうとしていたのですよ」
「あ、そゆこと? お兄様にも褒められたから、なんでかな~っと思ってたの、やっと謎が解けたよ~。んで……僕はアウト?」
「セ、セーフです……」
フレドリクも知っていては、詐欺罪は成立せず。いや、詐欺は詐欺でも、裁けないからヨーセフも納得はできないが無罪と言うしかなかったのであった。
それからもフィリップは働くフリをして人にやらせていたら、今日はいつもより眠りが深くなっていた。
「殿下……殿下!」
「ん、んん~……」
「あっ! 殿下、大丈夫ですか!?」
ヨーセフが揺すって起こしたその時、フィリップは椅子から転がり落ちた。
「はぁはぁ……だ、大丈夫……ううぅぅ……」
「あつっ……誰か! 神官を……いや、ここからなら運んだほうが早い。手伝ってください!!」
「「はいっ!」」
フィリップの肌に触れたヨーセフは、あまりの体温の高さに驚いてフィリップを医務室に運び込むのであった……




