452 おめでたい報告
結婚の報告に来たペトロネラがフィリップの超絶技巧のマッサージで眠ってしまっては仕方がない。
フィリップは起きるのを待っていたが、夕食を終えてお風呂から上がっても目覚めなかったから、カイサとオーセには仕事の終了を告げて自室に戻らせた。2人もマッサージされて眠そうにしていたからだ。
そのフィリップはリビングに残って一人酒をしていたら、寝室のドアが開いてペトロネラが現れた。
「殿下……みっともないところをお見せして、申し訳ありませんでした」
「う、うん。バスローブぐらい着よっか?」
ペトロネラは綺麗なお辞儀をしたけど、まだみっともなかったのでバスローブを取りに行かせたフィリップ。そして戻って来たら、ペトロネラは対面に座った。
「もうお酒は抜けた?」
「はい。緊張して飲み過ぎてしまいました」
「僕なんか気にしなくてよかったのに~」
「そうはいきません。これほどよくしてくれたのですからね」
「ただのウィンウィンだよ」
フィリップはお酒を勧めたけど、珍しくペトロネラは断った。いまは真面目に話をしたいらしい。
「んで……ネラさんのハートを射止めた男は、どこのどんなヤツ?」
「地方領主の三男です。たまたま父親の代理でこちらに出ていまして……」
三男坊は、ペトロネラに一目惚れをしてゾッコン。会った直後に求婚して来たそうだ。
ペトロネラは多少は警戒していたが、若いイケメンが久し振りに釣り針に掛かったから、とりあえずキープしてお茶会や飲み会をしながら人となりを探ったみたいだ。
「へ~。裏表のない酒豪だったんだ」
「はい。少し太上皇陛下に似てたのもポイント高いです」
「そ、そうなんだ……」
娘は父親に似ている人を好きになるとはよく聞く話だが、元カレの父親に似てる人ってのは初めてだからフィリップも引いてるよ。
「となると、あとの問題は結婚後の地位だけか~」
「それも問題ありませんよ。口外はしていませんでしたが、私、侯爵の爵位も持ってますので。長年帝国に仕えた甲斐がありました」
「そりゃネラさんの功績なら、それぐらい持っていても不思議じゃないか」
「領地は帝都にある屋敷ぐらいですけどね。お金も有り余っていますから、そこで悠々自適に暮らそうかと」
ペトロネラの結婚後のプランを聞いたフィリップは不思議に思う。
「あら? 結婚したら、仕事辞めちゃうの?」
「それが女の幸せですからね」
「誰がそんなこと言ったの? ネラさん??」
「いえ、皆が……」
「そんな古い価値観、捨てちゃえ。女性が働いて夫が家を守って何が悪いの? 僕の知り合いには、共働きで頑張っている貴族がいるよ。ネラさんも仕事辞めたくなかったら、ちゃんと話し合ったほうがいいよ」
ペトロネラの目から、ボトボトと何かが落ちた。
「そんなこと、空想だけの世界だと思っていました……」
所謂、ウロコ。目からウロコってヤツだ。
「幸せになるには、人それぞれだよ。ネラさんも一番幸せになれる道を選んでね。僕は全力で応援するから」
「はい……はい。そうさせていただきます……」
こうしてペトロネラは、新たな幸せに向けてひた走るのであっ……
「たとえば結婚してからも殿下と関係を続けるのはアリですか?」
「ナシで……」
「えぇ~。そんな貴族、五万といるじゃな~い」
「皇子様はこの帝国に2人しかいないの。だから、ね?」
浮気ありきで考えるようになったペトロネラであったとさ。
ペトロネラの浮気相手にされそうになったフィリップは、尊い血を出したらなんとか諦めてくれたので、そのまま就寝。
朝起こしに来たカイサとオーセには「殿下、ペトロネラ様の浮気相手になるのかな?」とヒソヒソ言われてる。裸でベッドで一緒に寝てたらそう思われるよ。
それから数日経つと、今度はリネーアとコニーの城勤めカップルが訪ねて来た。2人は公爵家であるペトロネラに急にお茶会に誘われたから、犯人はこいつだろうと問い詰めに来たらしい。
「あ、2人も結婚するの? おめでと~う!」
「「はあ……」」
ついでに結婚のご報告。先に苦情を言ってしまったから、こんなに喜ばれるとリネーアたちも「失敗した」と苦笑いだ。
「本当は去年結婚するはずだったことは覚えてます?」
「……覚えてます気がします」
「式が延びたと言ったじゃないですか~~~」
どうやらリネーアたちの結婚は太上皇が亡くなった余波で、結婚を急かしていたはずの両家の親から「こんな時に結婚式なんてとんでもない!」と止められたんだって。
そのことはフィリップに直接伝えたのに、こんな反応では完全に忘れてやがるね。また苦情になったので、フィリップはなんとか止めたい。
「オーセ。ご祝儀持って……いいや。これ、あげる」
「「「「白金貨!?」」」」
フィリップが時間短縮で、ポケットの中に開いたアイテムボックスから白金貨を取り出してテーブルに乗せたら、全員ビックリ。苦情も止まった。
「なんで驚いてるの?」
「普通、白金貨なんて、ポケットから出て来ません」
「ボク、使ったこともないです……」
「たまに入れてるけどな~……あったら何かと困らないし」
「「そんなの怖くてできませんよ~」」
リネーアとコニーが理由を説明している間、カイサとオーセもコクコク頷いて同意。
リネーアたちは大金にめちゃくちゃ困って断っていたけど、フィリップは出した物は引っ込められないと、コニーにポケットに入れて持ち帰れと命令してた。帰り際のコニーは、歩きにくそうにしてたよ。
それから数日経つと、またお客様。フィリップは迷惑そうに、その客の前に座ってる。
「なんだよ? 娼館のお礼を言いに来てやったんだろ」
それはボエル。奢ってもらっているクセに偉そうなクマだ。
「はぁ~……今度の子はどうだった?」
「なかなかよかったな。次はもうちょっとテクニックある子をお願いします」
「もうわからないよ~」
ボエルの希望は、フィリップにも難易度が高いからギブアップ。だって、男のフィリップが女性に女性の風俗嬢を斡旋してるんだもん。
もう好みの子を自分色に調教しろ突き放したけど、ボエルはモジモジしてる。自分のプレイ内容は言い出しにくいんだって。
「てか、僕の奢り以外でも、娼館通ってるって聞いてるよ?」
「誰がそんなこと……アイツらか!?」
「一緒に行くから悪い」
「アイツら、ブッ殺してやる……」
ボエルの秘密をリークしたのは、護衛騎士。元々フィリップが紹介状を渡したから、女性のボエルでも気楽に娼館に行けるようになったので、悪い遊びを教えてしまったフィリップのせいでもあるけどね。
「まぁまぁ。それよりボエルは彼女とどうなってんの?」
「彼女には、バレてない、はずです……」
「そういうことじゃなくて、結婚だよ。こないだリネーア嬢が、結婚式の日取りを報告しに来たの」
「え? モブ君のヤツ、オレに内緒で式の日取り決めたのか!?」
「聞いてなかったんだ……いや、僕がキューピットだから、先にしたのかな?」
「「たぶん皇子様だからです……」」
「「あっ!?」」
フィリップが的外れなことを言うから、カイサとオーセが割り込み、ボエルも「本当だ! それなら仕方ねぇな」となった。
カイサたちは「こいつらすぐ地位のこと忘れるな」って思ってます。




