446 お見合い旅行の報告
お見合い旅行はひとつも上手くいかなかったけど、旅行の期日は来たからさっさと帰宅。帰り道は帝都から離れていたから、途中で一泊しなくてはならない。
真っ直ぐ帝都に向かっていると、たまに見掛ける農奴。フィリップは貴族の家に寄り道して「農奴がすんごい痩せてたね。お兄様に言っちゃおっかな~?」と脅して回る。
もちろん第二皇子の脅しだから、食料を配布すると約束する貴族。念のため様子を見るとか言って、娼館に籠もるフィリップ。なので貴族に「こいつ何しに来たんだ?」と思われている。
そんなことをしていたから、1泊で帰れたところを3泊も掛かってしまったフィリップ一行。さすがにフィリップもヤリすぎた……世直しをやりすぎたと思いながら帰宅した。
「やけに遅かったな。雨もなかっただろう?」
「いや~……これには斯く斯く云々な理由がありまして」
フィリップは本当にやった農奴の食事改善について説明……貴族にチクらないと約束したことをすぐ言ったら、遅くなった件は許してもらえそうだ。
「なるほどな……私が外に出た時は、一切気付かなかったのだが……」
「たぶんお兄様だからじゃない? 領主か誰かが、汚い物は隠しちゃえってなったんだよ。僕の場合はお忍びだしね」
「それは確かにありそうだな……うん。私もちょっと調べてみる」
農奴の報告が終われば本題だ。
「お見合いはどうなった? どちらか気に入ったか??」
「それがさ~。貰った姿絵あるじゃない? どっちも微妙に顔が違ったんだよね~」
「まぁ姿絵ってのはそんな物だ。しかし、大きくは違わなかっただろ? 話をしたら人となりがわかるはずだ。その中で相性がよかった女性に決めたらいいんだ」
「あ……ひょっとして、今回で決めなくてよかったの?」
「一回や二回で決まるモノではないから、別に急がなくてもいいのだが……」
フレドリクから言質を取ったら、フィリップは頬を膨らませた。
「なんだよ~。決めないといけないと思っていたから、体の相性も確かめて来ちゃったよ~」
「はい? そんなことまでしたのか??」
「うん。お互いそれで、今回はご縁がなかったってことになったんだけど……」
「そこまでして、2人ともなんの愛情も湧かないとは……」
「大丈夫? 頭、痛いの??」
「う、うむ……もういい。この件は、また今度話そう。外していいぞ」
「は~い。お大事に~」
フィリップが貴族の娘さんを傷物にして帰って来たのだから、フレドリクも頭が痛いところ。フレドリクは詫び状を書いて出したから、伯爵たちは「本当に約束を守ってくれた!」と小躍りしたんだとか。
フレドリクの気持ちなんて、フィリップは知る由もない。いや、エステルとの結婚を反対された仕返しでやったから、してやったりって顔だ。
そんな顔で応接室から出て来たので、カイサたちは意味不明。なんで叱られもしないのだと質問しまくっていた。
「単純に、今回は僕がお見合いをしただけで、それでよかったみたい。お見合いって、一回で決まるモノじゃないんだって」
「そういうことじゃなくてですね」
「旅の生活態度のことですよ」
「それは~……誰か僕を裏切れる人、いる?」
「「いません……」」
全員、賄賂を懐に入れたのだから、口が裂けてもフィリップを断罪できない。特に騎士の野郎共は、この旅がめちゃくちゃ楽しかったからフィリップを悪く言う人は1人もいないのだ。
なんだったら、フィリップが悪口を言われていたら止めるようになったんだとか。でも、その効果は長くは続かず、半年もしたら一緒に悪口を言ってた。悪口の数が多すぎるんだもの。
とりあえず旅の疲れはカイサとオーセとのマッサージで落としたら、数日後には夜型になったので奴隷館にてキャロリーナの餌食になったフィリップ。お互い疲れてヘトヘトになったら、旅の報告だ。
「そりゃそうよぉ~。帝都の娼館がぁ、田舎の娼館に負けるワケないでしょぉ~」
「まぁそれがわかっただけでも収穫だよ。それに女の子も、微妙に顔とか言葉遣いが違うのも面白かったしね」
「確かに田舎から売られた子とかは、ちょっと違うわねぇ。だからぁ、言葉は矯正してるのよぉ」
「あ、そうなんだ。個人的にはそのままのほうが好きだけどな~。方言とかかわいいじゃない?」
「そんなモノなのぉ? 考えたことなかったわぁ」
フィリップのこういうことに対するアドバイスは割と的確なので、安価なクラブで試すことに決定。それが成功したら、方言クラブとして開店するそうだ。
「あ、そうだ。旅の途中で農奴っての見たんだけど、性奴隷と何が違うんだっけ?」
「昔、教えてあげたでしょ~」
「それが思い出せないから聞いてるの~」
この話は8歳の頃にした話だから、フィリップも記憶が曖昧だから確認したかった模様。その時のフィリップは、キャロリーナの体と娼館のことで頭がいっぱいだったから脳のキャパシティが足りなかったのだ。
農奴と性奴隷の違いは、単純に奴隷から抜けられるかどうか。性奴隷は借金奴隷に位置付けされ、借金を払い終わったら元の暮らしに戻れる。
他にも犯罪奴隷もいて、こちらも刑期を体で払い、刑期が終われば奴隷から解放される。重犯罪者の場合は一生抜けられないか、期間が過ぎたら死罪となる。
犯罪奴隷は過酷な鉱山で働くケースが多いから、刑期まで生き残っているのは7割弱ぐらいだそうだ。
「んで、農奴は、敗戦国の末裔だから、生まれてから一生奴隷ってことか……」
「実際にわぁ、身分を偽って暮らしている農奴もいるらしいわぁ。バレたら即処分って感じねぇ」
「ふ~ん……そりゃあんな暮らしなら逃げ出すよね~」
「ま、殿下は関わらないほうがいいわよぉ。何度かぁ、どこぞの貴族が農奴解放を唱えたけどぉ、最悪な結果になったんだってぇ」
フィリップはそんな奇特な貴族がいたのかと興味津々で続きを聞く。
「最悪って?」
「農奴が貴族を裏切ってぇ一緒に戦わなかったりぃ。その時わぁ貴族のお家が一族郎党皆殺しよぉ」
「農奴にやる気がなかったってことか……」
「そうみたいねぇ。あとわぁ、時の皇帝陛下が謀反だと怒ってぇ、領地の者全員、皆殺しとかもあったらしいわぁ」
「うわっ。皇家、こわっ……」
歴史の授業でよくありそうな話だが、こんなご時世に転生したフィリップは生々しく聞こえたらしくブルッと震えた。
「皇家ってぇ、殿下の家のことよぉ?」
「あ、うん。そうでした」
でも、その惨劇を引き起こしていたのはご先祖様だったので、苦笑いで頭をポリポリ掻くフィリップであった。




