442 接待
フィリップの初めてのお見合いは、散々な結果。姿絵から年齢まで騙されたフィリップは激ギレでゼーバルト伯爵を屋敷の中に押し込み、そこで「素直に喋らないと死罪にする」と脅して全てを聞き出す。
どうやらこのゼーバルト伯爵家、娘は全員嫁いでいたから、そもそも適齢期の女性がいなかったとのこと。ただ、フィリップを手に入れたら美味しい思いができるから、年末のパーティーではダメ元で末娘の姿絵カードを渡したらしい。
姿絵カードも、どうせ第二皇子は結婚なんて考えていないだろうと思って渡したんだとか。それよりも娼婦に食い付いてくれたらラッキーぐらいの気持ちだったとのこと。
全然連絡が来ないからこれは空振りに終わったなと思っている時に、たまたま登城したらフレドリクと擦れ違って呼び止められた。
ここでフィリップの結婚相手を探してると聞かされたのだから、ビッグチャンス到来。領地から末娘の姿絵をすぐに送ってもらって献上したんだとか。
あとは末娘を呼び寄せて離縁させれば、計画通り。しかし末娘は「馬鹿皇子なんかイヤ~!」と、帰って来てくれなかった。
説得に時間を掛けてしまったからには、フィリップがもう来てしまう。こんなドタキャンは皇家にも失礼。最悪、降格……そこで知恵を振り絞ったらフィリップの性格を思い出した。
女癖の悪い第二皇子なら、初めてのお見合いで婚約を決めたりなんかしないはずだと……
フィリップが滞在する期間を乗り切れたらなんとかなると考えたゼーバルト伯爵は、出戻りしていた妹に替え玉になってくれと頼んでみたら、ノリノリ。ドンと任せなさいとなったんだって。
ちなみにこの妹は、この大雑把なノリもそうだが無駄遣いが酷いから離縁されたんだとか。嫁ぎ先の子爵家は資金が底を尽き掛けていたから「もうお払い箱」と捨て台詞を残して家に帰ったらしい……
こんな妹でも渡りに船。ゼーバルト伯爵も「馬鹿皇子なら騙せるか」と軽い気持ちで挑んだらしいが、真実を聞かされたフィリップも呆れて怒る気も失せたよ。
「ああ~。もういいや。そのかわり、僕を騙したんだから、それなりのことをしてもらわないと死んでもらうよ~?」
「ははっ! 殿下に命以外の何もかも差し出す覚悟です! ですから、あの、皇帝陛下には……」
「接待しだいだ。とりあえず娼館に連れて行け」
「はっ!」
フィリップの目的は、これが全て。お見合いをした実績もできて結婚もしなくていいなんて、これほど有り難いことはない。
さらには娼館に行ったことも秘密にできるのだから願ったり叶ったり。フィリップはスケベ顔で馬車に乗り込むのであった。
「ねえ? 殿下って、ここに何しに来たんだっけ??」
「お見合いのはずなんだけど……娼館に入ったっきり出て来ないね……」
それから1時間。フィリップは娼館に籠もってしまったので、カイサとオーセは呆れ返っていた。
「いいな~。俺もあとで行こっかな~?」
「「ボエルさん……」」
「う、浮気じゃねぇし! 心は一筋だし!!」
「「それを浮気と言うのです……」」
ボエルはボエルで指を咥えて見ていたので、カイサとオーセに浮気認定されてるよ。
そうこうしていたら娼館の扉が少しだけ開いて、フィリップがひょっこり顔だけ出した。
「ボエル、ボエル」
「あ、はい。なんでしょうか……」
「中で護衛してくれない?」
「そ、それって……」
「皆まで聞かない。他の人も、中で護衛したい人は交代で入って来な」
「「「「「ヒャッホ~!!」」」」」
「うるさい。静かにしろ。護衛ナシにするぞ」
「「「「「はっ」」」」」
それは、最低な手招き。野郎共はジャンケンして順番を決め、いまかいまかと自分の番が来るのを待つ。
「男って……」
「最低!」
それを見せ付けられたカイサとオーセは軽蔑だ。そこにまた、フィリップがひょっこり顔だけ出した。
「カイサ、オーセ」
「「あ、はい」」
「この人が、観光案内して全部奢ってくれるって」
「「その御方は当主様では……」」
「大丈夫大丈夫。2人が少しでも不満な顔をして帰って来たら、両腕もらう約束してるから」
「お任せあれ! ささ、行きましょう!!」
「「はあ……」」
2人はそんな偉い人とは一緒に観光なんてしたくなさそうだったが、ゼーバルト伯爵がエスコートしてこの場から連れ去るのであった。
娼館での乱痴気騒ぎは、騎士たちはボエルから順に外に出るとホクホク顔。相当楽しかったらしく、「どの子とやった~?」と盛り上がりまくってる。
カイサとオーセはというと、最初はゼーバルト伯爵相手に緊張していたけど、本当にVIP対応して全部奢ってくれるから申し訳なくなってた。両腕が掛かっているからゼーバルト伯爵も必死だもん。
そんな騒ぎになっているなか、フィリップは最初に飛ばし過ぎたので、ちょっと休憩。1時間ですでに10人とマッサージしたんだって。
疲れたとか言いながらナンバー1娼婦に腕枕してもらい、気に入った娼婦には下半身のマッサージをしてもらっていた。
「伯爵ってどういう人?」
「それはそれは素晴らしい人ですよ」
「そういうおべっかはいらないの。民の本音を聞きたいんだ。酷かったら改善するよ? もちろん君たちが喋ったなんて言わない」
「あの……ライアン様って何者なのですか?」
「ただのエロガキだよ。伯爵が恐れてるってだけのね」
「はあ……」
ナンバー1娼婦はフィリップのことが子供に見えているから、エロガキには納得。ゼーバルト伯爵も本当に恐れていたから、このエロガキはそれ以上の地位にある人物としか想像できなかった。
フィリップは下でマッサージされながらナンバー1娼婦の胸をずっとポヨンポヨンしてるから、皇族とはまったく頭に浮かばなかったんだって。
「ふ~ん。ケチはケチだけど、暮らしていけないことはないんだ……」
「はい。たまに他所に住む貴族様や商人を相手にした時に話をしますが、平均よりは少し税金が高いぐらいみたいです」
「てことは~……民もそこまで不満はない感じ?」
「ないことはないみたいですけど、怒ってどうこうという話はないですね。せいぜい集まって悪口を言うぐらいです」
「なんだ~。小悪党かよ~」
フィリップがゼーバルト伯爵をカイサたちに押し付けたのは、この話をするため。あんなお見合い詐欺をするなら、酷い領地運営をしてると決め付けていたからガッカリだ。
「やる気が失せた。もう3人、連れて来て」
「はい? やる気が失せたのに??」
「こっちは失せないよ~~~」
「ア~レ~~~」
ゼーバルト伯爵をイジメて楽しもうと思っていたのにそれが適わないのなら、マッサージしかない。追加した娼婦とも、楽しくマッサージするフィリップであったとさ。




