435 キャロリーナの面会
フィリップの根城でキャロリーナのファッションチェック等をしたら、馬車に乗って中央館に移動する。
カイサとオーセはフィリップたちが密室で何をしていたのかと疑惑の目を向けてる。目の前のフィリップは、キャロリーナの膝に座って頭を胸に挟まれてスケベな顔してるもん。
フィリップがファッションチェックをしていただけと言っても信じてもらえない。部屋の案内もしていたから、2人を呼び込むことが遅くなったのも信じられない理由のひとつだ。
実際問題、これから太上皇と会うのだから、どちらも性欲が湧くワケがない。フィリップはクセでセクハラしてるだけなのだ。最悪なクセだな。
「ああ……ついに戻って来たのね……」
中央館の廊下を歩くだけで、キャロリーナは感無量。太上皇と会う前に目が潤んでしまった。
「よく来てたの?」
「いえ、年に1回だけよ。父親に、上級貴族の子供をいまのうちに捕まえておけと毎年連れて来られていたのよ」
「ああ~。この時期に庭園で親が子供をけしかけてたのってそれか~。なんで怒られてるのかと思っていたら、失敗してたのね」
「そんなの上手く行くワケないのにね。あとで知った話だけど、上級貴族の子供は、親から下級貴族を相手にするなって教わっているんですって」
「世の中そんなもんだよね~」
フィリップも納得はしたが、第二皇子がそんなことも知らなかったので皆は納得できず。基本的に年末年始は病気で寝てたと言っても信じてもらえず。
カイサとオーセは仮病だと思っているし、キャロリーナに至ってはフィリップ恒例の乱痴気騒ぎを知ってるもん。
その目をかわそうと、フィリップはキャロリーナの城での思い出を聞き出して歩いていたら、太上皇の私室に着くのであった。
「いけそう?」
「はい。もう大丈夫です」
ドアの前でキャロリーナに緊張が急にやって来たから、少し時間を置いてから確認するフィリップ。まだキャロリーナは緊張しているように見えたが、その言葉を信じてフィリップは一緒にドアを潜った。
「よく来てくれた」
「へ、陛下……お久し振りでございます。うっうぅぅ……」
ベッドの上にいる痩せ細った太上皇を一目見ただけで泣き崩れるキャロリーナ。フィリップはそんなキャロリーナの背中を擦り、ゆっくりと立たせてベッドの傍にある椅子に座らせた。
「平民街では、散々いいように使って悪かったな。おかげで助かったぞ」
「いえ……グスッ……もったいないお言葉」
「何か褒美を取らせたいが、もうあまり力はないのだ。それでも地位を男爵に戻すぐらいなら息子に頼めば叶えてやれるぞ? どうだ??」
キャロリーナはハンカチで涙を拭うと、太上皇を真っ直ぐ見た。
「もう男爵なんて未練はありませんわ。それよりも太上皇陛下が与えてくれた居場所のほうが、よっぽどいい暮らしができているのですもの。私は……いえ。当時、行く当てのなかった性奴隷を代表して、感謝の言葉を述べさせていただきます。私どもに救いの手を差し伸べていただき、本当にありがとうございました」
そして綺麗に頭を下げたキャロリーナの目から、再び涙がポトポトと落ちるのであった……
この空気に耐えられなくなったフィリップは、飲み物を取りに行くことと「10分きっかりで戻るね」と告げて部屋を出た。
前室に行けば飲み物ぐらいはすぐ手に入ってしまうので、ここでしばらく時間を潰す。カイサたちから2人だけにして大丈夫なのかと聞かれていたが、太上皇命令だから止められなかったと嘘でやり過ごす。
しばらくオーセにもセクハラしながら喋っていたら、予定の10分を経過。前室にいる太上皇の護衛がソワソワし出したので、そろそろ限界かとフィリップはノックをして中に戻った。
「なに喋ってたの~?」
中では太上皇とキャロリーナが楽しそうに喋っていたので、フィリップは社交辞令程度に聞いてみた。
「いやなに。若い頃にお忍びで一度足を運んだことをな」
「それ以降、一度も来てくれないから、嫌われたのかと思っていましたよ」
「あの時も言ったであろう。結婚するから、妃を喜ばせる方法を聞きに来ただけだと」
「き、聞くんじゃなかった……」
社交辞令は爆弾を落とされて木っ端微塵に。出会って散々マッサージしたあとだけど、キャロリーナに太上皇と体の関係はないと聞いていたのが嘘だったもん。
そりゃ出会ってすぐのエロガキには言えないわな。皇子と聞いてからはますます言えるワケがないよね。
「まぁその時から、博識だと目を付けていたというワケだ」
「父上、言い訳になってないよ?」
フィリップの顔に「浮気、アカン」と書いているように見えた太上皇はキャロリーナを雇った理由に擦り替えようとしたけど、フィリップはまったく違うことで血の気が引いていただけ。
しかしこの件は、2人とももう喋りたくないので、頷き合って話題を変える。
「フィリップまで世話になったらしいな。子供が行く場所ではないのに無理をさせてすまなかった。感謝する」
「いえいえ。感謝したいのはこちらのほうです。殿下のおかげでかなり儲かりましたもの。確かに子供が娼館に入りたいと現れたことには驚きましたけど。うちの警備の者まで怪我を負わせたのですよ」
「その話は聞いてないな。その者は大丈夫だったのか?」
「せ、正当防衛……じゃなかったかな~?」
「これは忘れてますね。軽症で後遺症もありませんのでご心配なさらず」
キャロリーナはこのことも喋っていたと思って出したけど、フィリップの記憶にナシ。
確かにフィリップ目線では正当防衛だったけど、お店側からしたら営業妨害をしている子供を排除しようとしただけだから、太上皇の裁定はフィリップの敗訴だ。
「他には何か事件を起こしてないか?」
「ないないない。僕、平和主義者だもん」
「アレで平和主義者ですか……」
「まだまだありそうだな」
「基本的に女性に暴力を振るう客は嫌いみたいで、それ以上の暴力で排除してくれたから助かりましたけど……それ以降、見ていない人が多いのですよね」
「殺したのか?」
「ないないないない……ないと思う?」
「「やっとんな」」
これもフィリップは記憶ナシ。何人かはあまりにも酷いことをしていたから勢い余って殺してしまったけど、顔も名前も思い出せないし、病死や行方不明として処理した者もいるから記録にも残っていない。
なので記憶にないから全てなかったことにしたいフィリップ。キャロリーナも喋り過ぎたと反省し、やりすぎていたけど全て夜の街のためだったとフィリップを擁護するのであった。




