432 人気があるんだかないんだか
誕生日パーティーの次の日は、フィリップはヒマ。朝から起きてしまったのでダラダラしていたら、カイサとオーセにネチネチ言われてる。
みんな忙しいのに第二皇子は何もせずにダラダラしていることがどうしても許せないらしい。フィリップは聞きゃしないけど。
そうしてオーセをベッドに乗せてイチャイチャしていたら、コンラード宰相の使いと言う人が手紙を持って来た。
「宰相? なんだろう……2人とも、急いで出掛ける準備して」
「「はあ……」」
準備ができていないのはフィリップだけ。あまり急いでいるように見えない2人は、とりあえずフィリップに豪華な服を着せて中央館に馬車移動。
挨拶する貴族たちは無視して、真っ直ぐ太上皇の私室を訪ね、カイサたちは前室に待機させる。
「お婆ちゃん、父上大丈夫そう?」
「はい。横になったら楽になったみたいですよ」
コンラード宰相の手紙の内容とは、太上皇の急変。コンラード宰相はそこまで緊急性はないと判断したが、いちおうフィリップに手紙を届けたのだ。
「まったく無茶ばかりして~」
太上皇は眠りに就いたところだったから、フィリップが説教しても聞こえてない。こんな時ぐらいしか説教は怖くて言えないんだって。
「今日はどうしても会いたい人がいたみたいですよ」
「ふ~ん……誰だろ? お婆ちゃん聞いてる??」
「いえ。私は管轄外ですので」
「そっか~。言ってくれたら代わりぐらいしたのにね」
「殿下が代わられても……」
「そこまで言ったら最後まで言おっか?」
アガータは馬鹿には無理だと言いたいみたい。フィリップがツッコンでも微笑んで会釈だけしか返してくれない。
フィリップもその先は容易に予想できるから聞き出すことはやめて、「昨日のパーティーは楽しかったね」と世間話に変えて太上皇を見詰める。
そうこうしていたら1時間が過ぎ、太上皇は安らかな顔のまま眠っているから「大丈夫そうだな」と腰を上げようとしたら、コンラード宰相が入って来た。
「太上皇陛下はどうですか?」
「大丈夫そうだよ。ちなみに父上が苦しみ出した時、宰相が一緒にいたの?」
「ええ。来客が待つ部屋に移動中でした」
「んで、宰相が代わったんだ。相手は辺境伯でしょ?」
「……」
フィリップが言い当てると、コンラード宰相はアガータをチラッと見て、アガータは軽く頭を下げて出て行った。
「陛下から聞いていたのですか?」
「ううん。予想。昨年も気にしてたもん」
「そうですか……」
フレドリクとダンマーク辺境伯を会わせると何が起こるかわからないので、太上皇は宰相案件にしたとのこと。フレドリクも辺境伯とあまり会いたくないのか、その案は快く受け入れてくれたそうだ。
その面会時間に太上皇も出席しようとしたが途中で苦しみ出したから、コンラード宰相は1人で面会して来たそうだ。
「辺境伯、なんか言ってた?」
「陛下の心配ばかりしていましたね。最初に元々会う予定だったと告げましたから」
「てことは、宰相も父上が会いたがっていた理由は知らないんだ~」
「はい。大事な話があるとしか……殿下は何か聞いているのですか?」
「ぜんぜん。そんな大事な話なら、僕に言う?」
「言うワケないですよね。はぁ~……」
フィリップの有能さを知っていても、ため息が出てしまうコンラード宰相。なのでフィリップは言い訳が通じたことに喜ぶよりも、コンラード宰相の態度にイラッとするのであった。
太上皇は大丈夫そうだが目覚める気配がないので、フィリップは一時離脱。もうすぐお昼だから皇族食堂に予約を入れてその辺をブラブラ歩く。
城を歩く貴族や従者たちはフィリップを見たら挨拶はしてくれるが、怪訝な顔をしている者が多い。
「またあの顔……珍しく殿下が歩いてるんですから、もっと笑顔で対応するべきですよね?」
それが気になるオーセはフィリップに質問したら、カイサが答えを奪う。
「これ……殿下が邪魔に思われてるんじゃない?」
「どういうこと?」
「ほら? いちいち足を止めないといけないじゃない? 忙しいのに殿下がいると進むに進めないのよ」
「あ~。ホントだ。無視するワケにはいかないもんね。私もあんな顔になる自信あるわ~」
「ね~?」
「第二皇子を邪魔者扱いしないでくれない?」
2人が決め付けて話をするので、フィリップも悲しくなっちゃう。ただし、自分でも邪魔だと思っていたので、庭園に向かって時間を潰す。
ここで30分ほどダラダラしていたら、フィリップたちは足早に立ち去った。
「殿下、珍しくモテモテでしたね~?」
「あんなに綺麗な人に言い寄られるなんて、やっぱり皇子様なんですね~」
その理由は、地方貴族が「第二皇子が出歩いてるぞ! かかれ~!!」と大量の娘を送り込んで来たから。確かに美人揃いだったけど、フィリップは塩対応で乗り切ったのだ。
「それなのに殿下ったら、ほとんど無視して……」
「あの中から1人選んでもよかったんじゃないですか?」
「イヤだよ」
「「どうしてですか?」」
「2人とも、化粧と服で騙されてる。あいつら僕と喋る時、目は一切笑ってなかったよ? 腹の中ではいったい何を考えているんだか」
「「そうでしたっけ?」」
カイサとオーセは気付いていなかったので、ちょうど近付いて来た貴族女子とフィリップは喋ってみる。適当にお金関係の質問だけしたら、フィリップは追い払って皇族食堂に向かった。
「本当でしたね……目が真っ黒でした」
「お金の話をした時、『食い付いた!』って目が歪んでたよ~」
「ね? 怖いでしょ? だから話をしたくないの」
「「初めて殿下の気持ちがわかった……」」
カイサとオーセ、日々学習。女好きのフィリップが邪険にする理由が痛いほどわかったと、このあと地方貴族女子を警戒するようになったのであったとさ。




