430 ドッキリ誕生日パーティー
太上皇の病状はフィリップの内緒話のおかげで現状を維持していたら、年末の式典はもう間近。
毎年恒例の身体測定は、140センチの大台に乗ったと飛び跳ねて喜んでいたよ。いつもより伸び幅は1センチ縮んていたけど、誤差と言い聞かせて……
今年のフィリップの誕生日も根城でこじんまりしたパーティーを開いたら、太上皇も参加するから家臣一同ド緊張だ。
その理由は、朝からアガータや護衛と一緒にやって来て、暇だからって最後まで同席するから。フィリップも断れなかったんだって。
もちろん招待状は出しているが、太上皇が出席しているなんて書いてないから、祝いに来た知り合いもド緊張。一番最初にやって来た被害者も口をパクパクしているよ。
「そう緊張するでない。今日は1人の父親として来ているだけだ。フィリップの誕生日に駆け付けてくれて感謝する」
「「は、はっ!」」
「そりゃ緊張するよね~? てか、招待状出したあとに父上が来るって言ったから、罠に嵌めたワケじゃないよ? それだけは信じてね?」
太上皇の言葉では緊張が解けなかったので、フィリップが場を和ませようとしたけど効果ナシ。嘘つきで定評だもん。
「あ、紹介するの忘れてた。こっちの女性はへディーン子爵家のリネーア嬢。あの話のね。んで、男のほうは婚約者の……モブ君……」
「ああ。フレドリクも世話になった荷物持ちのモブ君だな」
「あの……ハネス子爵家が次男、コニーです……」
「ハネス子爵家だったのか……フィリップが名前を思い出さないから、モブ君で定着していた。2人を祝福する。リネーアを守れる良き夫になるのだぞ」
「はっ! 一生守り続けると誓います!!」
フィリップだけじゃなく太上皇にまでモブ君と呼ばれたコニーは申し訳なさそうにしていたが、祝福された時には嬉しそうに応えていた。尊敬する元皇帝の言葉だもん。
このあとは太上皇は話を聞くだけで、フィリップたちが話せるように空気になる。圧があるから隠れ切れてないけど。
「へ~。春にゴールインするんだ~」
「はい。コニーさんも出世しましたので、どちらの親も早く式を挙げろと急かされまして」
「そりゃそうか。皇帝の近衛なら、男爵じゃ足りないもんね。家名はモブ君にするの?」
「「……検討だけはさせていただきます」」
「あっ! いまの違うよ? モブ君のほうの家名って聞いただけなの~」
皇子の案なのだから即反対とは言えない。それを察したフィリップは言い訳を続けるが、「モブ家の当主コニーってウケる」と半笑いしていた。
それからも世間話をしていたら、リネーアがチラチラとフィリップのことを見て来た。なんの合図かというと、制限時間。2人とも忙しいから帰りたいけど、太上皇がいるから言い出せないみたいだ。
「殿下、そろそろ」
「なにが??」
でも、フィリップはまったく気付いてない。カイサが小声で助言しても遠回しでは伝わらなかったので、しっかり思い出させるカイサであった。
「あら? 太上皇陛下も参加なさっていたのですね」
リネーアたちが帰ってからしばらくあとにやって来たのはペトロネラ。太上皇と会う機会が多いので、緊張は一切なく太上皇に挨拶したあとは隣に座った。フィリップは「近くない?」とジト目で見てる。
「もう煩わしい者たちの相手をする必要もないからな。こんなに穏やかな年末は初めてだ。いや、子供の頃以来か」
「まったく羨ましい限りです。私も子供の頃に戻りたいぐらいですわ。子供の頃と言えば、あのこと覚えていますか? お兄様と私を取り合っていたことを」
「そんなことあったか??」
ペトロネラとは思い出話に花を咲かせる太上皇。本日の主役は放置されているが、フィリップは微笑ましく見ている。
ただ、兄弟でペトロネラを取り合っていた話はあまり聞きたくないみたい。ペトロネラがたまに妖しい目配せして来るから、親子で取り合っているように見えるもん。
ペトロネラも忙しい人なので30分ほどで帰って行くと、フィリップたちはのんびり喋り、場繋ぎで護衛騎士に一発芸なんかをさせる。
そうしてお昼が過ぎた頃に、次の被害者が息を切らしてやって来た。
「こ、皇帝陛下……」
「ボエル~。太上皇陛下でしょ。ちゃんと挨拶しよっか?」
「は、はっ!!」
ボエルだ。太上皇を見て固まっていたから、フィリップがアシストしてあげた。
「フレドリクの護衛で忙しいはずなのに駆け付けてくれるとは、すまないな」
「い、いえ! 殿下にはお世話になりましたから!!」
「フッ……フィリップが世話か。かなり振り回されたと聞いているぞ」
「め、滅相も…あります」
「ボエル~。嘘でもないって言ってよ~」
「「「「「アハハハハ」」」」」
太上皇の雰囲気が丸くなっていたからかボエルは失言。そこをフィリップがツッコンだら笑いが起こり、ボエルも緊張が少しは和らいだみたいだ。
しかし、食事は喉が通らないらしいので、フィリップはオーセに包ませてボエルに渡す。お腹ペコペコでは仕事にならないからだ。というより、ガツガツ食べる姿を太上皇に見せたくないってのもあるみたい。
今回のボエルはプレゼントを忘れず用意してくれていたので、フィリップに渡したらさっさと撤退。15分ほどで出て行った。
「剣って……僕が使えないの知ってるクセに……あのクマ女め……」
ボエルのセンスが悪すぎたので、フィリップは不満タラタラであったとさ。




