429 季節感
アレンジ氷魔法で雪を見せたフィリップは、太上皇が満足いくまで続けていたら寒くなって来たからここまで。そこで聞きたいことがあったので聞いてみる。
「母上って、ひょっとして僕と同じ髪質だったの?」
「ああ。子供の頃の妃にそっくりだ。その髪が好きだったのに、大人になる頃には真っ直ぐになったから残念だったのだ。まぁ真っ直ぐも綺麗だったがな」
「そういうことか~」
太上皇がフィリップの頭を撫で回す理由、ついに明かされる。かといって、死ぬ間際の人にもうやめろと言えないフィリップであった。
「他にも隠していることがあるだろ?」
母親がストレートになったのだからフィリップもチリチリパーマはストレートになりそうだと思って髪の毛を摘まんで引っ張っていたら、太上皇が決め付けて質問した。
フィリップはこの質問は来そうだと思っていたから、まったく表情の変化はない。
「他と言われてもね~……」
「父からの最後の頼みだ。隠さず聞かせてくれないか? 必ず墓に持って行く」
「う~ん……」
フィリップは悩みながらゆっくりと近くの椅子に座った。
「ダメなのか?」
「いや……多すぎて、自分でも何を隠してるかわかんなくなって。たはは」
「一から喋れ。楽しく聞かせてもらおう」
「楽しく聞けるかも微妙……怒ることしかやってないよ?」
「怒らないと約束する」
「絶対にだよ~? 怒ったらもう喋らないからね~」
こうして確認を取ってから、フィリップは秘密を暴露するのであった……
「8歳から城を抜け出して娼館に行ってただと……」
「怒った??」
「頭が痛いんだ……」
7歳のダンジョン通いはなんとか耐えたが、8歳の娼館通いを知ると頭を押さえ、続きを聞くのが怖くなる太上皇であったとさ。
フィリップの隠し事は膨大過ぎて、とても1日では終わらない。なんなら1ヶ月も過ぎたけど、まだカールスタード王国の話だ。
「面白そうだからって、クーデターを仕切っていただと……」
「頭痛そうだね……休憩入れる?」
だって、信じられないような話ばっかりなんだもの。
「しかし女王と恋仲だったとはな。そのとき言ってくれていたら、結婚を許したのに……」
「帝国の皇子が王配なら、再侵略の足掛かりになるもんね~」
「そこまでは言っておらん。まぁ大陸制覇が楽にはなっただろうな」
カールスタード王国ではダンジョン制覇していたから太上皇も楽しく聞いていたが、神話に出て来るファフニールと戦って倒したと言ったらまた頭を押さえていた。もう何がなんだかわからないらしい。
その過程でフィリップのレベルは99になっていたことは、納得がいったような顔をしていた。
「なるほどな……」
「あら? これはすぐ信じるんだ」
「戴冠式の最後に、フィリップが支えてくれただろ? あの時、俺がこけると思った時には支えられていたから、不思議に感じていたのだ」
「さっすが父上~。普通、あんなに早く動かれたら気付くのも難しいよ」
フィリップの強さの話題をしたあとの話は、2週間ほど掛けて太上皇の感想があり、やっとこさ帝都学院の話が始まったがため息連発だ。
「はぁ~……あのアードルフ侯爵一家はフィリップに殺されていたのか……」
「今度こそ怒った?」
「いや、罪を考えたら死は免れられなかっただろう。ただ、優しいフィリップにしては珍しいと思っただけだ」
「それは皇族の裁き方があんまり好きじゃないだけ。関係ない人は死んでほしくないの」
さすがに怒られると思った話でも太上皇は耐えたので、フレドリクのダンジョン制覇したあとにフィリップもダンジョン制覇したと言ったら撫でられた。
もうカールスタード学院のダンジョンでレベルの話は終わっていたから大丈夫らしい。というか、フレドリクたちの頑張りを隠れて見ているだけってので、呆れてたけどね。
「世界最高の暗殺者まで……」
「スカウトしたのに自殺されたから、すっごい死体の処理に困ったよ」
「ということは、そういうことか?」
「うん。あの伯爵の名前は忘れたけど、100人斬りしたのは僕……怒らないでね?」
「はぁ~~~……」
太上皇、もう怒る気力はナシ。呆れてため息しか出なくなってる。続きを聞いても空返事が多くなって来た。お腹いっぱいで胸焼けしてるんだね。
「あのレンネンカンプ侯爵までフィリップが……」
「そいつは一番の悪者だから許して。たぶん、一族で何人もの皇子を殺してるよ。てか、侯爵って、悪いヤツばっかだね」
「地位が高いから、勘違いする者は多いが……たまに貴族が変死しているのはフィリップか?」
「たぶん……あ、殺したのに言ってない侯爵いたね。いま思い出した」
「せめて忘れてやるな」
あとは卒業後の話だからほとんど太上皇も知っている話。なので一から戻って、フィリップの話し忘れがないかと質問しながら、意外と楽しく聞く太上皇であった。
それからも週に2日か3日、自分の秘密を語っていたフィリップであったが、ふと気付いたフリをする。
「あら? もう冬だ」
「冬? そういえば、最近めっきり寒くなっていたな。フィリップの話が面白すぎて、季節すら忘れるとは驚きだ」
「フフフ。忘れてるのそれだけかな~?」
「それだけ…ではない。余命か?」
「せいか~い。アハハハハ」
そう。フィリップが秘密を語っていたのは、太上皇の命を延ばすため。そのために季節や日付の話題は避けていたのだ。
「やっぱり父上は強いね」
「どうだろうな。薬屋が間違っていたのではないか?」
「たぶんそれはないよ。この1年は笑うことが多かったから、そのせいかもね。笑う人ほど健康なんだって」
「そんなこともあるのだな。寿命まで延ばしてくれるとは」
「ね? 病は気から。気力でいくらでも長生きできるんだよ。また来年も、馬鹿話しようよ」
「ああ……」
今年の頭には半年後に死ぬと言われていたのだ。今ごろ思い出した太上皇は、笑顔でフィリップの頭を撫でるのであった。
「それはそうと、年末の式典、仮病は許さんぞ?」
「へ? 僕、その話したっけ?」
「熱を自由に操れると言ったではないか」
「しまった!? ……今年は大目に見ていただけないでしょうか??」
「フレドリクが皇帝になって初の式典だ。俺の代わりに目に焼き付けてくれ」
「ええ~……」
フィリップも式典のことは忘れていたけど、去年は休めなかったから今年こそは休みたいので超嫌そうだ。
「俺も最後の仕事をする。フィリップも仕事をしろ」
「うぅ~。わかったよ~」
結局は押し切られて、フィリップの式典参加は逃れられない決定事項となるのであった。




