419 チクリ合い
薬屋たちと話を終えたフィリップは、ヨーセフに中で何をしていたのかと問い詰められたけど「皇太子の密命だから言えない」と口を閉ざす。
キャロリーナには「今夜詳しく説明するね」と耳打ちして別れ、馬車に乗り込んだ。カイサとオーセにも問い詰められたけど「避妊薬を作ってと頼んでた」と嘘ついたら「そんなことだろうと思ってた!」と信じたらしい。
ヨーセフ一団が城に到着すると、フィリップは根城に帰ろうと御者に指示したら、馬車が道を塞いだので急停止。
何があったのかと馬車から顔を出したら、ヨーセフが走って来た。
「フレドリク殿下に報告しないでどこ行くんですか!」
「あっ! ……明日じゃダメ??」
「フレドリク殿下は忙しいのですからダメです!!」
理由はそういうこと。フィリップはゴネたけど、ヨーセフは聞き入れず。カイサとオーセもヨーセフ側に回って、フィリップを馬車から追い出す始末。
仕方がないのでヨーセフの後に続いて執務室に向かうが、道中擦れ違うメイドや貴族がいつにも増してフィリップを見る目が残念なので、ヨーセフも居心地が悪そうだ。
「何か言われてますね……」
「悪口じゃない? 第二皇子がこんなにみすぼらしい服を着てるもん」
「あっ!? どうして着替えてないのですか!!」
「だから僕、明日がいいって言ったでしょ~」
フィリップがゴネていたのは、今日は面倒くさかっただけ。なのに服装の罪をヨーセフに着せて仕返ししている。
ヨーセフもこのままフレドリクに会わせたくないのか帰宅を勧めていたけど、フィリップは「ここまで来たから会う」とまたゴネる。フレドリクにチクるまでが仕返しだもん。
こうなってはどうしようもないのでヨーセフも諦めて、フレドリクとの待ち合わせ場所の応接室に入って面会だ。
「ふむ。特には問題はなかったみたいだな」
「フィリップ君のせいで荒れはしましたけど……」
「そのフィリップの服装はどうしたのだ?」
「僕はこんな格好で城の中を歩きたくなかったのに、ヨーセフが着替えさせてくれなかったの~」
「フィリップ君!? そんなこと言ってなかったでしょう!?」
「頭いいんだから気付いてよ~」
ヨーセフがチクるので、フィリップはチクリ返し。この勝負はフィリップの勝ちだ。
「どちらも落ち着け……フィリップは仕事をやり遂げたのだな?」
「うん。お茶の子さいさい。時間は掛かるから、それまで待ってね」
「うむ。よくやった。もう行っていいぞ」
場が荒れそうだったので、フレドリクはフィリップをさっさと排除。フィリップが出て行くとヨーセフに向き直る。
「ヨーセフから見て、フィリップはどうだったのだ?」
どうやらフィリップを同行させたのは、フィリップの能力を計ることも目的のひとつだったらしい。
「どうもこうも……ずっとふざけていましたよ。午前中は静かだったのも、アレは完全に寝てましたね。挙げ句の果てにはグラマーな女性にセクハラしますし」
「父上から聞いた話とは違うな……文官程度には使えると聞いていたのだが」
「それは陛下の前だったからですよ。怖い人がいないと、真面目にできないのですよ」
「そうか……」
ヨーセフ、フィリップと一緒に仕事しただけでストレスが爆発。いちおうフィリップを擁護すると、いつもよりは真面目にしていたけど伝わらなかったみたい。皇帝の時はお昼寝してたもん。
ヨーセフにダメ皇子のレッテルを張られていたとは知らず、スキップで城を進んでいたフィリップであったとさ。
フレドリクに報告したフィリップは、このまま皇帝の私室に行きたかったけど、服装で怒られそうだから一旦根城に帰宅。
カイサたちもメイド服に着替えて再び中央館を歩いていたら、ヨーセフにバッタリ会って愚痴られてた。それができるならさっきもやれただろうと……
フィリップは聞く気もないので、ダッシュで逃走。カイサたちは置き去りにされたので怒っていました。
でも、本当は、メガネイケメンのヨーセフに「我慢の限界が来たら私に言うのですよ?」と優しく声を掛けられたから、ラッキーとか思ってたよ。
それからフィリップが皇帝に撫で回されて根城に帰ったら、カイサとオーセを労ってマッサージ。そのおかげで早く寝てくれた。
「キャロちゃん。お待た~」
2人をブッ倒したのは、キャロリーナと会う約束をしていたから。そのキャロリーナは今日のことでストレスが溜まっていたのか、フィリップをベッドに投げ捨てたら3回戦もしていた。
「ところで殿下ってぇ、何しに会議に来てたのぉ?」
「見てたでしょ? 死痛病の記録を買いにだよ」
「そうなのぉ? 場を乱したり談合を唆していたからぁ、何かやましいことをぉ考えているのかと思ったわぁ」
「ソレは、まぁ、暇潰しの冗談というか……」
「イタズラだったのねぇ……」
キャロリーナまで説教しそうな顔をしているので、フィリップも超言い訳だ。
「だって~。こんな雑用、誰かにやらせたらいいのにお兄様が僕にやれって言うんだも~ん」
「それは陛下の病状を隠すためでしょぉ~。それぐらい協力してあげなさいよぉ~」
キャロリーナは皇帝の話は聞いていたので、この言い訳は不発だ。なのでフィリップは駄々っ子になって仕事をしたくないとか言っていたら、キャロリーナは胸を口元に持って行って赤ちゃんプレイで機嫌を取っていた。
「それでぇ……どうして死痛病のぉ、記録を集めているのぉ?」
「バブー?」
「なんでじゃなくてぇ、理由があるのでしょう? 神殿の記録だけじゃダメだったのぉ?」
「バッブ~……」
「いまのは何を言ってたかぁわからないわねぇ」
フィリップも赤ちゃん語をやめて真面目に話す。
「それが神殿には……やめとこ。僕でも怖い話だから、聞かないほうがいいよ」
「怖い話ぃ? うっ……想像したら嫌なこと思い付いた。まさかこんなことじゃないわよね?」
「キャロちゃん、せいか~い!」
さすがは有能なキャロリーナ。神殿が死痛病をネタに荒稼ぎしていたとすぐに気付いて答え合わせするのであった。
そのせいでキャロリーナも恐怖を打ち消そうと、フィリップは大変な目にあったらしいけど……




