398 余計な一報
ルイーゼの作った薬屋普及案は、フレドリクの審議に突入。そんなことどうでもいいフィリップはベッドの上でダラダラ。
カイサとオーセはプレゼン資料作成の疲れが取れないのか、フィリップと同じようにダラダラ。どちらか1人は働いて、交替でダラダラする特技も覚えたみたいだ。
そんなことをしていたら、3日後に皇帝の呼び出しがあったからフィリップも久し振りにおめかし。どうせあのことだろうと思いながら執務室に入ったけど、膝に乗せられて撫で回されているから早く本題に入ってほしい。
「フレドリクが薬屋をなんとかしたいと様々な提案をして来たのだが、フィリップが何かしたのか?」
皇帝の中ではフィリップの評価が高いから、疑って呼び出したようだ。
「僕じゃないよ? お姉様って聞いてるでしょ?」
「聞いてはいるが、こんな面倒事を始めるなんて、フィリップが唆したとしか思えない。あの2人の侍女も関わっているのだからな」
「もう~。父上には適わないな~」
皇帝の撫で回しが止まらないので、フィリップも白状する。
「僕はきっかけを与えたに過ぎないよ。お兄様を説得したのは、本当にお姉様たち。考えている場にもいたけど、平民のことは平民が考えたほうがいいと思って助言もしてないよ」
「きっかけだけか……いや、ルイーゼを使ってフレドリクを動かしたのだな」
「まぁそうなるけど……なんか黒幕みたいだから、誰にも言わないでね?」
「フレドリクが知ったらどう思うだろうな。ククク」
「本当にやめてね? 毎日チェスの相手させられたら堪らないから」
皇帝が怪しく笑うから、めっちゃ怖いフィリップ。それよりも天才相手のチェスはもっと怖いので、必死にお願いするフィリップであった。
「そういえば父上は薬屋のこと、手を打とうとしなかったの?」
今日はなかなか解放してもらえないから、フィリップも話題を探して振ってみた。
「知ってはいたが、忙しくてな。取り掛かると何年も掛かる作業だから、後回しにしていたのだ」
「やっぱり父上は名君だね。平民のことまで考えているなんて」
「フッ……それを言うなら、フィリップたちもだ。俺にできないことをやってくれている。こんなに才能に溢れた息子が2人もいて、俺は幸せ者だ。妃にも、最愛の息子が国のために働いている姿を見せてやりたかったものだ」
「ちょっとやめてよ~。泣いちゃうでしょ~」
「まぁフィリップは妃に怒られていたかもな。ああ見えて、怒ると怖かったんだぞ?」
「なんで僕だけ~~~?」
こんなに褒められると、フィリップも調子が狂う。ここで皇帝のタイムアップとなったので、怒られる理由は聞き出せないまま根城に帰るフィリップであった。
「そりゃ仕事しないからでしょ?」
「女癖も悪いしウソも多いもんね~?」
「も、もうそんなところでやめてもらえないでしょうか?」
その話をカイサとオーセにしたら、怒られる理由は出るわ出るわだったので、フィリップもギブアップしてしまうのであったとさ。
皇帝からの呼び出しも予想通りあったので、フィリップはこの日から夜遊びモードに変更。数日楽しく遊んでいたら、この日は夜の街がお祭り騒ぎのようになっていたからフィリップは驚いて屋根に飛び乗った。
フレドリクがまた外に出ているのかと警戒して上から見ていたが、どこに行っても酔っ払いだらけ。表情も心底喜んでいるように見えるので、フレドリクの線は低くなった。
ただ、ここに参加するのは罠の線もあるのでフィリップは慎重に移動して、奴隷館も裏口から入ってキャロリーナと会った。
「なんか外の様子が変だったんだけど、何かあったの?」
「それよぉ~。殿下がやったのよねぇ?」
今日はキャロリーナも聞きたいことがあったので、食事はあとからだ。
「なんのことかまったくわからないんだけど」
「薬屋のことよぉ~。今日、皇太子殿下夫妻が街の有力者を集めてぇ、薬屋を正式に認めるからぁ協力してくれと言われたのよぉ~」
「早っ……まだ1週間も経ってないのに……」
「やっぱり殿下が関わってるのねぇ!!」
あまりにも行動が早いので、フィリップもビックリ。予想では、平民に話すのは1ヶ月は掛かると思っていたから、表情も隠せなかった。
「僕と言うより、侍女で雇ったあの2人だよ。あの2人が聖女ちゃんを口説いてくれたの」
「もうそれ、殿下がやったと言っても過言じゃないでしょぉ~。ありがとぉうぅ~」
「いや、過言だよ?」
フィリップがツッコンでも、キャロリーナは感謝のマッサージ。全てのテクニックを披露してくれるので、フィリップも感謝を受け取らざるを得なかった。気持ちいいもん。
でも、その感謝が長いから、フィリップもグロッキー状態。超絶技巧のマッサージで反撃して、ダブルノックダウンだ。
「はぁはぁ……んで、お兄様、なに言ってたの?」
「ちょ、ちょっと待ってぇ。の、飲み物……膝がガクガクするわぁ~」
やることやったのでフィリップは情報収集を始めたけど、少し休憩。飲み物はフィリップが持って来たが、キャロリーナの指定されたビンはお酒だったのでフィリップは吹き出してた。
「皇太子殿下わぁ、聖女様を立てていたわねぇ。聖女様発案とか言ってたわよぉ。でも、元平民が、あんなにわかりやすい資料なんて作れるのかしらぁ? 皆は信じてたんだけどぉ、あたしは眉唾物ねぇ」
「あぁ~……大筋は聖女ちゃんが本当に考えてたよ。僕もその場にいたもん。たぶん今日配った資料は、お兄様の手が入ったモノだね」
「本当だったんだぁ……これだけどぉ~」
フィリップが資料を見ながら事の顛末を説明したので、キャロリーナもなんだか居たたまれない気持ち。ルイーゼの悪口言ってたからフィリップに謝ってたよ。
「てか、お兄様は有力者を集めただけだよね? 街のお祭り騒ぎはどういうこと?」
「商業組合の建物で長く話し込んでいたからねぇ。平民が多く集まっていたのよぉ。そこで聖女様様がぁ、薬屋を正式に認めることとぉ、寄付を募ると発表したからぁ、みんな浮かれているのよぉ」
「寄付するお金を飲み代に使っているのでは?」
「う、うん……そこまで馬鹿じゃないでしょ。たぶん……」
お祭り騒ぎの理由はわかったけど、そこから心配事が生まれる。散財して寄付金が減らないようにと、神に祈る2人であったとさ。




