393 最後の問題
フレドリクに侵入者たちを全員引き渡してから2日。フィリップは根城から出ずにずっとダラダラしていたけど、皇帝から呼び出しがあったのでシャキシャキと根城を出た。
カイサたちの警護に念のため連れて来た4人の護衛騎士に囲まれて歩けば、皇帝の待つ応接室に到着。2人きりになると膝に乗せられて撫で回されるので、フィリップは早く抜け出したい。
「侵入者の件、聞いたぞ。どうして1人目を捕らえた時点ですぐ報告しないのだ」
どうやら今日の撫で回しの刑は、皇帝には事後報告だったのでフィリップのことが心配で仕方なかったからみたい。
「父上も忙しいと思って……だから黒幕を暴いてから報告しようと思っていたの」
「そんなこと気にすることないんだぞ。危険なことはなるべく避けろ」
「そこまで危険とは思えなかったみたいな? 僕の屋敷を攻めるには、攻城戦の用意が必要だもん」
「それだ。どうやって侵入者を全員生きたまま捕らえたのだ?」
皇帝は謎に思っていたことを口にしたら撫でる手が止まったので、フィリップはこの隙に石を投げまくったと説明した。
「ということは……あの三角ベースという遊びは、訓練のひとつだったのか?」
「まぁ……楽しんでやったほうがいいと思ってやらせてたら、お兄様に見付かったの。ぶっちゃけ投石は、レベルの高いヤツにやらせたらかなり強いよ。僕もビックリした」
「ほう……結果は出ているから取り入れてもいいかもな」
新しい戦術を提案したのだから撫で回しは復活。そのまま1人目からの捕り物を詳しく聞かれたから、フィリップは喋りにくそうだ。
「ところで法王まで罠にハメていたが、これは最初から考えてやったのか?」
続いての質問は神殿関係。フィリップは偶然の産物だと説明しても、ソロバンの功績があるから皇帝にいまいち響いていない。
「本当は個別に対処しようとしてたんだけど、いいタイミングで来たから罪を擦り付けてやったんだよ。そういえば僕、法王に怪我させたけど、何か罪に問われるの?」
「いや、元々神官を扇動して皇家に楯突いたのだ。その上、家宅捜索をしたら金銀財宝が山ほど出て来たのだから、フィリップが刺したぐらいは些末な問題だ。宰相はフィリップにも罰を与えろと言っていたがな」
「宰相って、僕のこと嫌い過ぎない?」
法王の罪は重たいようだが、それよりコンラード宰相が気になるフィリップ。皇帝は鼻で笑うだけで、フィリップの質問には答えずに撫で回してる。
「あとは~……ヒエロニムス侯爵はどうなったの?」
「フィリップとフレドリクのおかげで、ヒエロニムス侯爵は速やかに捕縛された」
侵入者たちは神殿関係者として捕らえたからヒエロニムス侯爵も安心していたので、いきなり来た騎士に抵抗もできずに捕らえられたらしい。
「前回までは罰を甘くしていたからな。さすがに今回は極刑にする予定だ」
「そうなんだ~……それって実行犯も?」
「まだ事情聴取中で決まっていないが、それなりに重い罰になるだろう。恩赦の件はフレドリクに任せてあるから結果待ちだ」
「てことは、僕も外に出て大丈夫??」
「ああ。もう自由に出歩いても、襲われることはないだろう」
「やっとだ~~~」
フィリップ、バンザイ。ほとんど引きこもっているけど夜遊びができなかったので、本当に喜んでいる。
その喜びようが皇帝には不憫に感じたらしく、面会の制限時間いっぱいフィリップは激しく撫で回されたので、執務室から出たらフラフラだったのであったとさ。
フィリップがフラフラの足取りで出て来たからには、護衛騎士たちは「怒られたんだな」と勘違い。
根城に帰って夜になったらフィリップは寝室から消えたので、カイサとオーセは「懲りないヤツだ」と呆れてた。あと、久し振りにマッサージが無かったから「完全なお休みだ~」と羽を伸ばしていたらしい。
そのフィリップがどこに行ったかというと、キャロリーナの下。いつもより来るのが遅かったから、フィリップもマッサージで死に掛けたんだとか。
キャロリーナにはまだ城の情報が入っていなかったので、ちょっとだけリーク。命を狙われていたから皇帝に外出禁止と言われていたと濁して伝えていた。
もちろんキャロリーナに心配されていたけど、ショタが食えないと死活問題なのか、「いつもより気を付けて来るのよ?」と止めることはなかった。
翌日のフィリップは一日中寝て、夜には娼館をハシゴしてはっちゃける。その次の日は、カイサとオーセから誘われたので、昼からマッサージ。
2人が満足してくれたら、フィリップは世間話感覚であの話を持ち出す。
「そういえば、薬屋ってどうしよっか?」
「「覚えてたの!?」」
カイサとオーセは、こんなに時間が経っているのにあれから一度も話が出なかったから、完全に忘れていると思っていたので驚愕の表情。
このままではマズイと考えて、激しいマッサージでフィリップの記憶を飛ばそうとしたけど、フィリップは喜ぶだけなので諦めた。
「お願いですから何もしないでください」
「プーく~ん。お願い~」
なので涙ながらの訴えだ。
「いや、いまはチャンスだと思ったんだけど、2人がいいなら僕も何も言わないよ」
「えっと……どういうこと?」
「薬屋さんが普通に商売ができるの?」
「たぶんね。でも、この話はしたくないんでしょ?」
「「イジワル~~~」」
チャンス発言は2人も理由が知りたいので、また涙ながらに訴えていた。
「単純に、いまは神殿がゴタゴタしてるから、やりやすいんじゃないかと思っただけ」
「本当だ……」
「プーちゃんが頑張ってやってくれるの?」
「なんで僕がやらなきゃいけないんだよ~」
「「第二皇子でしょ~~~」」
カイサの問いにフィリップが嫌そうな顔をするので、2人してポコポコ叩いてる。
「やりたかったら2人がやったらいいじゃ~ん」
「そんなの無理だよ~」
「そうよ。私たち、平民よ?」
「平民でもできることがあるでしょ。次期皇帝の妻は、元平民だよ?」
「それはフレドリク殿下に見初められたからでしょ~」
「……オーセ。可能性はゼロじゃないかも?」
「どういうこと??」
カイサはフィリップのヒントに気付いて希望を持つ。
「ルイーゼ様は聖女様だよ。それも平民から次期皇后様になる御方……ルイーゼ様なら平民のことも詳しいし、お力もあるから薬屋さんの味方になってくれるんじゃない?」
「あ……」
オーセも希望に満ちた目をすると、フィリップは指をパチンと鳴らした。
「ほら? 2人でもなんとかなった。バカな第二皇子を使って聖女ちゃんに会えば、薬屋の問題は解決だ」
「「やった~~~!!」」
カイサとオーセ、嬉しくって今度はフィリップに抱きつく。こうして2人は、ルイーゼに会った時にどう説得しようかと話し合うのであった……
「どうしよう? なんて言っていいかわからない……」
「プーく~ん。プーくんも一緒に考えてよ~」
「僕が考えたら、女性は全員、裸エプロンになっちゃうけど……それでいい?」
「「いいわけないでしょ!!」」
でも、フィリップが変なことを言うので、喜びは吹っ飛ぶのであったとさ。




