392 事情聴取の嵐
「ヒエロニムス侯爵が関わっているとなると、私の領分を超えますね……フレドリク殿下に相談して来ますので、侵入者はもうしばらく預かっておいてください」
フィリップから真相を聞いたモンスは、連れて来た兵に門の前で見張るようにと指示したら、馬に跨がり中央館へ。
フィリップも護衛騎士に指示を出したらやることがなくなったので自室に戻った。そこでカイサとオーセが抱きついて来たので、新婚夫婦風の出迎えかと思ったけど、2人は両側からフィリップを持ち上げて運んで行った。
そしてソファーに投げ捨てたら、フィリップへの尋問だ。
「法王様を刺してたよね?」
「ううん。靴の先っぽを刺しただけ」
「プーくん。『刺した』とか『血が~』とか、ここまで聞こえてたんだよ?」
「聞こえちゃったか~……あいつの足が入って来たから刺しちゃいました」
「「なんで刺した??」」
ここでもやりすぎ問題。フィリップはムカついたの一辺倒でなんとか乗り切ろうとしてる。
「でも、プーちゃんってあんなに怒ることあるんだね」
「フレドリク殿下のこと大切に想ってたんだね。そこは見直したよ」
「それも聞こえてたか~……恥ずかしい!」
意外とムカつくで2人も納得してくれたので、フィリップもラッキー。ただし、兄弟愛についての質問をされまくるので、責められたほうがマシだと意見を変えていた。
「結局のところ、これからどうなるの?」
「まさかプーくんが裁かれることないよね?」
「僕はすでに牢獄送りになってるから、これ以上何かされることないかな?」
「「真面目に聞いてるの……」」
「あ、はい。すんません」
2人の顔が怖かったからフィリップも平謝りだ。
「神殿のことはモンスがなんとかしてくれるし、侵入者のことはお兄様がなんとかしてくれると思うから、もう数日で解決すると思うよ」
「なんだか素直に喜べないのは私だけ?」
「あたしも同じ気持ちだよ」
「えぇ~。喜んでいいんだよ? これからは自由に外出れるんだから」
「「そういうことじゃなくて……」」
「どゆこと??」
「「全部、丸投げ……」」
「僕もイロイロ頑張ったって~」
最後の最後は全て人任せだから、カイサとオーセも素直に喜べない。フィリップは反論してみたけど、侵入者のことはほとんど教えていないから、2人はフィリップの頑張りを認めてくれないのであったとさ。
カイサたちの目が冷たいので、フィリップはセクハラして手を叩かれる。それでも続けていたら2人も諦めてイチャイチャしていたけど、夕方前に外が騒がしくなった。
フィリップは誰が来たか気付いていたけど、2人は何か事件かと顔が強張っていたので、一緒にバルコニーに出た。
「ほら? お兄様だよ」
「「カッコイイ~」」
そこには、白馬に乗ったフレドリク。門番にはフレドリクが来たらすぐに入れろと言っておいたけど、続いて入って来た面々にフィリップは驚く。
「ゲッ……イケメン4も揃い踏みかよ。聖女ちゃんまでいるぅぅ」
「「わあ~。カッコイイ~~~」」
カイ、ヨーセフ、モンスだけでも面倒なのに、馬車からルイーゼが降りて来たのでフィリップはしかめっ面。タイプの違うイケメンが4人も揃っているので、カイサとオーセは目がハートだ。
愚痴っているワケにもいかないフィリップは、2人のケツを叩かずにモニュモニュ揉んでお茶を用意するように言ってから、先に出て行った。
フィリップは急いで階段を下りたので、なんとかフレドリクが玄関に入る前にお出迎え。エントランスのテーブル席を囲って話し合いだ。
「フィリップは大変なことになっていたのだな。気付いてやれなくて悪かった」
「いいよいいよ。お兄様は忙しいんだもん。自分の身は自分で守れるから気にしないで」
フレドリクはまずは謝罪から。フィリップが気遣うと優しい顔になって頭を撫でた。その現場をちょうどお茶を持って来たカイサとオーセが見て、ズキュンとしたらしい。
「それにしても、法王を傷付けるとは、少々やりすぎではないか?」
続いては早くも説教なので、フィリップは用意していた答えを言ってみる。
「お姉様を狙ったのが許せなくてね~。ちょっとキレちゃった」
ルイーゼだ。これでどうなるかと試したみたいだ。
「まぁやりすぎではあるが、敷地内に勝手に入ったのだから多少の罰は必要だな」
「ええ。正当防衛です」
「そろそろ神官たちから、密告もありそうですしね」
「もっとやってよかったぞ。俺なら顔面を陥没させていた」
その結果、フレドリクもヨンスもモンスもカイも、フィリップの味方。カイに対しては「僕よりこいつを責めろ」とフィリップは思っているけど。
「それにしてもヒエロニムス侯爵か……」
続いては第二皇子暗殺未遂の首謀者の話。フレドリクは考えながらフィリップに質問する。
「暗殺の理由は聞き出したのか?」
「この件、お兄様に喋れないんだ~。だから、モンスたちに喋るから聞いていて」
「それはもう、私に喋っているのと一緒だぞ?」
「約束したも~ん」
「変なとこで律儀だな」
フレドリクにツッコまれてしまったけど、フィリップはモンスの目を見て話す。ただ、内容は予想ばかりの不確かなモノ。
前回もフレドリクが襲われて報復があったから、そういうことだろうと説明したらフレドリクは納得して頷いた。
「あ、そうだ。1人目の侵入者は雇い主が違うし偵察が仕事だったみたいだから、ちょっと大目に見てあげて。それと暗殺者は組織のアジトを教えてくれたけど……まぁいいや。残りは全部任せるよ」
「そうだな……恩赦の必要な者もいるな。わかった。厳正に対処する。ところで1人目と暗殺者の名前はなんというのだ?」
「さあ? 聞いてないな……」
「それではどうしようもないぞ?」
「聞いても偽名を言うと思っていたから……ケント! 誰か調書取ってない??」
「いちおう取ってあります!」
「でかした!!」
フィリップがケントを名指して褒めると、ケントも嬉々として応えた。名前を呼ばれた喜びではなく、皇太子が目の前にいるから覚えてもらえると期待して……
ただし、調書を取ったのは別の人だったので、あとから仲間全員に詰められたんだとか……
「それでは、侵入者は全てこちらで引き受けよう」
これにて、神殿と報復関係はある程度解決。フィリップは根城から連れ出される侵入者たちを手を振って見送ってる。
「おい! 話が違うだろ! 皇太子殿下には何も言わず、ここから出してくれるんじゃなかったのか!?」
「「「「「そうだそうだ!」」」」」
「俺も組織を裏切ったら解放してくれると言っただろ!!」
でも、侵入者と暗殺者ヤルマルは納得がいかないと喚き散らす。その声を聞いたフレドリクたちも、フィリップをジト目で見て動きが止まった。
「お兄様には何も言ってないし、ここから出れるじゃん? 僕、ひとつも噓ついてないよ??」
「「「「「ハメやがったな~~~!!」」」」」
「そうとも言う! 元気でね~。アハハハハハ」
侵入者たちは怒って戻ろうとしたけど、騎士に止められてそれは叶わず。フィリップは振り返りもせずに手を振りながら根城に入って行くのであったとさ。
全員、ドン引きしてるのに……




