390 有り難い訪問者
侵入者たちから協力を得られたフィリップは、自室に戻ってお着替え。カイサとオーセに一番豪華な服を着せてもらっていたら、何をするのかと怪しまれていた。
どうも外に集まっている者たちは、フィリップが地下牢にいる間にしばらく騒いでいたから、誰が来ているかは知っていたみたいだ。
なのでフィリップは適当なことを言って煙に巻く。2人はついて来たそうにしていたが、危険があるからと待機を命じた。
フィリップはバルコニーから出ると180度しっかり確認してから戻り、部屋から出て行く。するとカイサとオーセはバルコニーに走って行って同じことをして聞き耳を立ててる。気になるもんね。
そのフィリップは玄関まで行くとソファーに座って待ち惚け。思ったより早く準備が終わったので、護衛騎士を1人だけ後ろに連れて外に出た。
「やあやあ。お待たせ~」
訪ね人がいると聞いてから30分ちょい。フィリップが鉄格子作りの門にまで行くと、豪華な馬車とそれを囲む多くの人々が待ち構えていた。
「はて? 法王って人は??」
「いまお呼びします」
「チッ……」
来客とは神殿の頂点に立つ法王のこと。待たせたのはフィリップなのに、まだ馬車に乗っていたから舌打ちしてるよ。
その法王は馬車から降りると、そこまで豪華ではない衣装の裾を付き人に持たせて、長い白ヒゲを揺らしながらゆっくりと門に近付いた。
「これはこれは第二皇子殿下。突然のお呼び出し、誠に申し訳ありません」
「そう思ってるなら跪けよ。僕のことナメてるの?」
「うっ……重ね重ね、申し訳ありません……」
ファーストアタックはフィリップから。法王が跪くと、上からニヤニヤ見てる。法王は下を向いたら鬼の形相になっていたけど、顔を上げたら仏のような顔をしていた。
「んで、僕になんか用なの?」
「ええ。できれば人のいない場所で話をしたいのですが……」
「それはムリ~。秘密の話なんて聞きたくないも~ん」
「しかしですね。内容が内容ですので……殿下の沽券にも関わることですよ?」
「僕の沽券? そんなのないに等しいから、みんなに聞かせてあげて」
「いや、その……」
「僕がいいって言ってるでしょ~」
フィリップは押せ押せ。それとは違い法王は困った顔になり、なかなかいい言葉が浮かばない。
「それともなに? 僕の話っていうのはウソ? だから神殿は信じられないんだよ~。神様はいい人かもしれないけど、神官たちは腐ってるもんね~。プププ」
フィリップが馬鹿にして笑うと、法王も覚悟を決めた。
「何を申してもよいのですね?」
「いいよ~。どうせ嘘だし」
「神に誓って嘘では御座いません」
法王は怒りを抑えながら立ち上がった。
「聖女様に危害を加えるような行為はおやめなさい。私共は神から聞いております。直ちに悔い改めない場合は天罰が下りますよ」
その言葉は門を囲んでいる神官たちの胸に響いたのか、一気に殺気が膨らんだ。護衛騎士も「やったんか!?」って顔で後退ったよ。
「プププ。天罰って……アレのことかな? おお~い! 全員、連れて来て~!!」
フィリップは一切怯むことなく玄関に合図。そこから護衛騎士たちが8人の侵入者を連れて出て来た。
侵入者は全員、両手を拘束された上に首には縄を結ばれているので明らかに罪人に見える。そんな異様な光景に今度は神官たちが怯んで殺気は消えた。
侵入者が後ろに整列すると、フィリップはニヤリと笑う。
「こいつら、お前が雇った暗殺者でしょ? 暗殺が天罰っておかしくな~い??」
「はい? そんな者、私は知りません」
「知らないワケないでしょ? こいつら、全員お前に雇われたと言ってるよ? ね??」
「「「「「はい。法王様の指示で、昨日、殿下の命を狙いました」」」」」
「ほらね~?」
「う、嘘ばっかり言うな! 私はそんな者など知らない!!」
フィリップは化けの皮が剥がれて来たと思いながら攻めまくる。
「こいつらが来たの昨夜だよ? 今日お前たちが来たの、僕が脅しに屈してるか、死んでるかの確認でしょ? 証拠はこんなに揃っているのに、なんで僕がウソ言わなくちゃいけないの?」
「でっち上げだ! それ以上嘘を重ねると、地獄に落ちるぞ!!」
「ウソばっかり言ってるのそっちでしょ。そもそもお前たちが聖女ちゃんが欲しいからって、僕の名前使って襲ったんだろ。外は危険だからって、神殿に連れて行こうとしたのは見え見え。だからお兄様も首を縦に振らないだよ。バッカだな~」
「小僧……本当に地獄に落ちたいみたいだな」
「もっとマシな反論してくんない? あ、真相を大勢の前で言われたから焦っちゃったか~。アハハハハハ」
法王が描いた絵なんて、フィリップにはバレバレ。神官の中には何人か知っている者もいたのか下を向く者もいる。
それ以外の神官は呆気に取られる者と「ありえる」と信じそうになっている者が半々に分かれた。
「ほら? お仲間も疑った目をしてるよ~?」
「貴様ら~! 神の御心に一番近い私を疑うとは、なんという不届きか!!」
「怒り過ぎ。金を使ってトップに立ったとみんな知ってるから、そりゃ疑いたくもなるよね~? ちなみにこいつらも真相聞いてたって。ね??」
「「「「「はい。聖女様を囲えなかったから、第二皇子を使ってなんとしても聖女様を手に入れると息巻いていました」」」」」
「小僧! 貴様ら~! 口を閉じろ~~~!!」
再びフィリップが侵入者たちに台本を喋らせたら、法王は怒りマックス。鉄格子を握って怒鳴り散らした。
「ぎゃああぁぁ~~~!!」
その瞬間、法王が悲鳴をあげる事態に。
「屋敷に入った罰だ。動いたら爪先まで裂けるから、それ以上暴れるな。わかったな?」
「ううっ!」
フィリップが法王の足をナイフで貫いて地面に張り付けたのだ。ちなみに法王の足は鉄格子の外にあったが、フィリップが踵を掴んで引っ張り込んだんだけど、法王は怒りと痛みのせいで気付いてないね。
突如、神殿の最高権力者が血を流したからには、この場に静寂が訪れるのであった……




