039 入学式
首都観光を終えて寮に帰ったフィリップたちは、食堂では今日のことを話し合い、早めに自室に戻るとフィリップはダグマーとベッドにインしてた。
「殿下……ひとつ聞いてもよろしいですか?」
ダグマーの問いにフィリップが軽く許可すると続きを喋る。
「殿下は最初から格差に気付いていたのでは……すぐに戻ろうと言ったのも、あのにおいに気付いたからではないですか?」
「格差? なんの話だっけ?? においもよくわからないけど……あっ! あの巨乳ちゃんのにおいか~。あの人、たぶん女の子の日だったね」
「ちょっとでも賢いと思った私の間違いでした」
「ギャフン!」
フィリップが話を逸らすとダグマーは怒って丸い玉を握り、冷たい目をフィリップに送りながら着替えて出て行ったのであった。
「いたた。でも、ちゃんと手加減してくれたから、痛気持ちいい感じだったな~」
ダグマーが出て行くと、フィリップは天井を見ながら考え事をしていたけど、この発言は関係ない。
「やっぱり暗部だったダグマーは鋭いね。気を付けないと。それに鼻も利く。ラーシュたちは気付いてないみたいだったけど、薄らとスラム街のにおいが風に乗ってたんだよな~……」
これのこと。内壁の外に出れない理由の証拠も掴んでいたから、外には何があるのか考えていたのだ。
「娼館に行きたいのに、スラム街じゃ病気が怖くて行けないよ~」
まぁ、動機は不純だけど、カールスタード王国の闇に立ち向かおうと決めたフィリップであったとさ。
それから数日、大量の馬車が寮の前に到着して続々と生徒が入寮し、フィリップたちも観光したり準備をしていると、カールスタード学院の入学式となった。
その日はフィリップもマンガに出て来そうな豪華な制服に袖を通して、これまた立派な講堂にて入学式に出席していた。
「はい? なんかあいつ、僕のこと主席とか言って呼んでるんだけど……」
すると長い話をしていた老齢の学長がフィリップを名指しで指名したので、隣に座っているラーシュとコソコソやってる。
「帝国の第二皇子なんですから、多少は忖度されているのですよ。立派な挨拶をして来てください」
「いやいやいやいや。なんも聞いてないよ!? ラーシュが行けよ~」
「殿下を差し置いて私が行けるわけないだろ! さっさと行け!!」
「敬語もなくなった~~~」
ラーシュに背中を押されて壇上にまで登ったら、全校生徒に拍手までされたのでフィリップも逃げ場がなくなった。こうなっては仕方がないと、フィリップはめちゃくちゃにしてやると覚悟を決めて学長の傍に寄る。
そこで学長と握手を交わしたら、コソッと手紙を握らされた。
「これを読むだけで皆の目に立派に映りますので。できるだけ前を見て読んでください」
「スピーチ原稿あるなら、先に渡しておいてくんない??」
「申し訳ありません。学生に先に渡してしまうと、この大舞台に緊張して当日には倒れる者が続出してしまいまして……これが最良の手段だとなった所存です」
「ドッキリのほうが無理じゃね??」
確かに次代の要職候補が集まる場でのスピーチなんて、ストレスで胃潰瘍になる者も出る可能性はあるけど、フィリップの意見も正しい。
しかしここで揉めていても、全校生徒の視線が突き刺さり続けるだけなので、フィリップも諦めた。
「え~。僕は、帝国第二皇子のフィリップ・ロズブロークだよ」
スピーチ原稿に書かれている一文を読んだだけで拍手喝采。本当は「フィリップである」と書かれていたのだが、口に出したらふざけた感じになったけど、これはキャラ設定なので皆には尊大に聞こえている。
「満開の桜が咲き乱れる今日の良き日に……えっと……これなんて読むんだろ? ルビ振ってないからわからないんだよね~……まぁ僕の予想だと、5年間頑張ろうって書いてるんじゃね? そんな感じでよろしくね~」
「「「「「……」」」」」
しかし、ここまで無能っぷりを発揮すると、全員、口をあんぐり。その隙にフィリップは手を振りながら壇上から下りてしまった。
「拍手! 拍手~~~! フィリップ殿下の新入生代表挨拶でした~~~!!」
呆気に取られた学長が復活して拍手を求めたが、生徒もなかなか復活できないので、疎らな拍手となったのであったとさ。
「殿下~~~!!」
入学式が終わり、寮に帰ってラーシュの部屋に連れ込まれたフィリップは、ラーシュたちから詰められていた。でも、耳を手で塞いでるな。
「聞けよ!」
「聞こえてるから、もっと声のトーン落としてくれない? じゃないと逃げる」
「うが~~~!!」
ラーシュが荒れに荒れているのでフィリップは逃げ出そうとしたけど、ダグマーに抱き付かれて逃げられず。椅子にグルグル巻きにされて説教されてる。
「これはこれで酷くない?」
「逃げようとするからだろ!」
「わかった。わかったから落ち着いてよ。何が言いたいの??」
「あのスピーチだ。あんなスピーチ、帝国第二皇子として恥ずかしくないのか! 私は恥ずかしくて死にそうだったぞ!!」
「いや、それを言うと、テストも受けてないのに主席にされてる僕も恥ずかしいよ?」
フィリップが反論すると、この場にいる全員が固まった。
「へ? ……殿下、入学試験受けてないのですか??」
「うん。いつあったの?」
「こちらに来る前に、カールスタード学院の者が帝国まで来て受けさせられましたが……」
「あ~。その時、寝込んでたからだな。てか、そんなヤツにスピーチさせるほうがどうかしてるよ?」
「ですから、帝国第二皇子だからなんですって~。だから立派に務めると思ってたんですって~。うわ~~~ん」
「そんなことで泣くなよ~~~」
フィリップが不甲斐なさすぎて、ラーシュは感情が不安定になって号泣するのであったとさ。
ラーシュが泣き崩れてしまったので、ダグマーもフィリップの顔を見せているのはかわいそうと思ったのか縄を解き、肩に担いでフィリップの自室に連れ帰りベッドに放り投げた。
「お、怒ってる?」
「怒ってないとお思いですか??」
「思ってません! でも、放置プレイとか本気で殴るとかはやめてほしいな~?」
「はぁ~~~……」
こんな場面でもフィリップがふざけるので、ダグマーも呆れて何も言えないみたいだ。
「いちおう言い訳させてもらうけど……」
「言い訳ですか……」
「そそ。ダグマーだけに言っておくね。みんなには秘密だよ~?」
フィリップの言い訳は、兄であるフレドリクの皇位を揺るがさないために馬鹿皇子を演じていること。
「本当ですか??」
「マジマジ。父上も了承済み。だからお城の噂にも1個も反論してないでしょ?」
「え……殿下は、城で働く女性を全員抱いていたんじゃ……」
「ダグマーまでそれ信じてたの!?」
「だって、私なんかにも手を出していますし……」
「僕、エイラとしかしてないよ~~~」
なかなか信じてくれないので経験人数は2人だけと言ったら、ダグマーはちょっとだけ優しくなったのであったとさ。
本当は三桁に届きそうな勢いなのに……




