389 暗殺者たちの処遇
夜中に侵入者を完全撃退した護衛騎士は、翌朝は少し遅い時間に動き出す。これはフィリップの指示だったけど、その指示を出したフィリップはまだ寝てる。
お昼にはさすがに起きてランチ。カイサとオーセが「侵入者どうすんの?」と質問していたので、フィリップは「忘れてた~」と料理を掻き込んでいた。
生温い目をするカイサとオーセに服を着せてもらったら、1人で下の階へ。護衛騎士に「侵入者どうすんの?」と聞かれたので、キリッとした顔で指示を出していた。
でも、「いま起きただろ?」と寝ていたことはバレバレなので、護衛騎士はあまりシャキシャキ動いてくれなかった。
そんなことはどうでもいいフィリップは、侵入者が全員集合で狭くなった地下牢の前にやって来た。
「拷問は~……」
「殿下から聞いてからやろうと思いまして……」
「うん。それでいいよ。聞くことそんなにないからどっちでもいいし」
護衛騎士は「今回は正解!」と思ったのは束の間で、「どっちでもよかったんだ」と肩を落としたよ。
「さってと……暗殺者君。そうキミキミ。こっちおいで~?」
フィリップはヤルマルを鉄格子の近くまで呼んで座らせる。
「ヒエロニムス侯爵を暗殺するの、いくら?」
「……はい??」
「だから、暗殺の仕事だよ。向こうの10倍出すよ~?」
「じゅ、10倍……」
ヤルマルは大金に目が眩み掛けたけど、背中に六つの殺気が突き刺さったから我に返った。
「そ、そんなこと言って仲間割れを狙ってるんだな!?」
「ううん。お前、こいつらの仲間じゃないじゃん? 金で雇われた、ただの暗殺者でしょ??」
「そうだけど、俺は依頼人は決して裏切らない暗殺者で好評です!!」
「プププ。必死だな。アハハハハ」
ヒエロニムス侯爵に近しい人ばかりが入った檻の中なんだから、下手なことを言えないに決まってる。あとから何をされるかわかったもんじゃないもん。
「てか、お前ら……ヒエロニムス侯爵の犬だったの?」
「「「「「い、いえ。神殿の……」」」」」
「いまさら遅過ぎるよ~。アハハハハ」
これだけヒエロニムス侯爵の味方をしているのだから、今回の侵入者6人はヒエロニムス侯爵が直々に放った騎士だと確定。フィリップは拷問する必要がなくなったと涙を拭って笑っているので侵入者は複雑だ。
「はぁ~……笑った。あ、そうそう。暗殺者君。ヒエロニムス侯爵の暗殺代金、手付けで金貨10枚渡しておくね」
「こんなに!? いや、いらねぇよ!!」
「あれ? 僕の暗殺依頼って、いくらだったの?? 成功報酬で金貨100枚渡そうと思ってたんだけど……」
「手付けで金貨2枚。成功したら6枚です……」
「やっす……僕、第二皇子だよ!?」
フィリップが太っ腹が過ぎるのでヤルマルはペラペラ喋ってしまったけど、あまりにも安すぎるのでフィリップは激怒だ。
ちなみに安い理由は、フィリップは戦えないし護衛も少ない。さらに牢獄送りになっているから守りも薄いと聞いたから。城の出入りの手引きもしてくれるから、ヤルマルもそれなら楽な仕事だと引き受けたんだって。
「まぁいいや。金貨10枚渡しておくから、ここから出たら頼むね」
「いやいやいやいや。ムリムリムリムリ……」
「大丈夫大丈夫。お前ならできるよ」
「そういうことじゃねぇ! 頼むならここから出たあとに言えよ!!」
「えぇ~……時間の無駄じゃな~い??」
あまりにも安い暗殺代金にフィリップは八つ当たり。ヤルマルは檻の中にいる人を敵に回したくないから、必死の抵抗だ。
そうしてヤルマルをからかいまくっていたら、外にいた護衛騎士が走って来てフィリップに耳打ちした。
「マジで?」
「はっ。マジです」
「これは面白くなって来たな~……そいつら門の前に待たせておいてよ。すぐ行くとも言っておいてね」
「はっ……マジで?」
「マジでマジで」
護衛騎士はけっこう重い話をしたはずなのに、フィリップは軽いから口調が移っちゃった。
そのやり取りを見ていた侵入者たちは、やって来た人物はたいして重要ではないと勘違いし、それよりもフィリップがナメられてると鼻で笑っている。
「ちょ~っと協力して欲しいことがあるんだけど……いい?」
「誰がお前なんかに協力するんだよ」
ヤルマルが強く突っぱねると、侵入者は全員ウンウン頷いてる。
「上手くやってくれた報酬は、ここから解放するのにな~……お兄様にも黙ってようと思ったけど、嫌なら仕方ないね。全員、殺してから行方不明で処理するよ。お疲れさん」
「「「「「いや、ちょっと待って!」」」」」
でも、フィリップが残念そうにして離れようと振り返ったら、ヤルマル以外の全員が右手を伸ばして呼び止めた。
「なに? 嫌なんでしょ??」
「嫌と言えば嫌なんですが……行方不明とは? 家族にも死んだことを知らせてくれないのですか??」
「うん。第二皇子様に牙を剥いたんだから、当然の罰だよね~」
「ちょ、ちょっと時間をください」
侵入者だけで集まると、何やらゴニョゴニョ話し合う。ヤルマルはやっぱり仲間じゃないんだとフィリップにからかわれて泣きそうだ。
「ちなみに何をやらせたいのですか?」
「僕の言う通り喋ってくれるだけでいいよ。こ~んな感じ~」
フィリップが大袈裟な演技で説明したら、侵入者は「バレません?」とダメ出しはしたけど、話し合ったら全会一致で決まった。
「殿下の作戦、乗らせていただきます」
「「「「「是非に!!」」」」」
「オッケー。それじゃあ頼んだね。んじゃ、いちおう逃げられないように見えるように……」
侵入者は行方不明になるよりも、フィリップが約束を守ってくれるほうに賭ける。そうして護衛騎士にも指示を出して、外にいる人に会いに行くフィリップであっ……
「俺は!? 俺もそっちがいいんですけど!?」
でも、ヤルマルは仲間外れにされていたので焦りまくりだ。
「お前は~……外に出したらヒエロニムス侯爵を殺してくれる?」
「いや、それは……」
「じゃあ、組織を売るならここから出してあげる」
「クッ……売るしかないか……」
「交渉成立だね。こいつも仲間に入れてあげてね~?」
ヤルマルは組織のアジトを吐くことで、侵入者の仲間にようやく入れてもらえたのであった。




