386 フィリップ式セキュリティー
侵入者の右往左往っぷりを楽しんだ翌日、フィリップとペトロネラはお寝坊。2人が裸で抱き合って眠っていたから、カイサとオーセも気を遣って小一時間は様子を見ていた。
しかし護衛騎士が指示が欲しいと呼びに来たので、ペトロネラから起こして、フィリップは2人掛かりでなんとか起こす。その現場を着替えながら見ていたペトロネラはなんとも言えない顔だ。マッサージして起こしたもん。
フィリップが部屋着に着替えたら、紅茶を飲んで下に移動。そこでペトロネラは1階の変化に気付いた。
「間取りが違いますね……入口はどこに行ったのですか?」
そう。1階はいつもと様相がまったく違うのだ。
「昨日の説明の続きね。1階は騎士の個室があるんだけど、ほとんど可動式なの~」
「可動式? ど、どういうことですか??」
「見たほうが早いね。みんな、やっちゃって」
「「「「はっ!」」」」
護衛騎士が壁を押したり引いたりすると、ブロック状の個室がパズルのピースの如く移動する。玄関側の個室が1個ずつ動けば、途中で外の景色も見えたから、ここでペトロネラもセキュリティの秘密がわかった。
「そういうことですか……部屋を動かして、通路を消していたのですね……」
「そそ。だから玄関や裏口のドアに施錠は必要ないの。入っても壁しかないからね~」
フィリップの考えたセキュリティは、とても単純。「通路が無ければ入れないんじゃね?」と考えて、玄関から続く通路を消してエントランスを袋小路にしたのだ。
城と繋がる通路にもドアがあるけど、そこも夜になると個室が塞ぐのでドアは開かない作り。その部屋では護衛騎士が寝ているから、無理矢理開けようとしたらすぐに気付くのだ。
「それは混乱しますね」
「でしょ~? 城には見廻りの兵士もいるから、10分から30分も粘っておけば、大勢で駆け付けてくれるから人件費も安くなるって寸法なの」
「確かに経費削減にはなりますね。しかしこんな屋敷、誰が設計したのですか?」
「それはボック~。遊び心満載で面白いでしょ?」
「面白いというか画期的というか……」
工事もせずに内装を変更できるなんて、誰も思い付かないのではないかとペトロネラも脱帽。なんならフレドリクより賢いのではないかと口から出てしまった。
「それはない。お兄様、一目見ただけでこのセキュリティを看破してたもん。お兄様は正真正銘の天才だよ」
「こんな仕掛けを思い付く殿下も負けておりませんよ」
「そうかな~? こんな馬鹿なこと、僕しかやらないってだけだと思うけどな~」
「まぁ……普通の人は思い付いてもやりませんね。馬鹿と天才は紙一重って言葉、殿下を見ていたら、つくづくその通りだと思いました」
「それって……僕はどっちなの??」
「フフフ。どちらでしょうね。フフフフフ」
フィリップの質問にペトロネラは明言は避ける。本当は天才と言おうとしたけど、イジワルしてるみたいだ。
「あの笑いは馬鹿ってことだよね?」
「だろうね。こんな住み辛い家、普通作らないもん」
でも、オーセとカイサは、ペトロネラが笑っているので勘違いして受け取ったのであったとさ。
根城が昼使用に変わると、フィリップは護衛騎士にけっこう真面目に指示を出してから遅い朝食。侵入者がいたからカイサとオーセは心配していたけど、「シルバーが捕まえてくれたから大丈夫」とフィリップは力強く言っていた。
「そのシルバーってお馬さん、ボエルさんは名前が違うと言ってましたよ?」
「そうなの?」
「なんで知らないんですか~」
「シルバーって呼んだら返事したから……まぁあだ名ってことでよくない?」
「「ボエルさんはどの馬もシルバーって呼んでたと言ってたよ?」」
「な、名前覚えるの面倒だから……」
ただし、フィリップがちゃんと名前を呼んでいないから説教。2人が問い詰めたら、ようやくフィリップは名前の秘密をゲロッた。
その説教から逃げたフィリップは、ペトロネラを馬小屋に連れて行って地下通路の説明。ついでに大活躍の黒馬をベタ褒め。エサも奮発してブラッシングしてあげたら、カイサたちは変な目で見てる。
「喋ってたよね?」
「うん。喋ってた。ていうか、あんなに大きいのに、何故か小さく見えるのなんでだろう?」
「プーちゃんのことが怖いのかも? 震えてるような……」
「プーくんはあんなに楽しそうにしてるのに……どっちもかわいそ」
謎が謎を呼ぶフィリップ式調教。他の馬も呼んだらシャキシャキ歩いて来て、フィリップにブラッシングされると全身ずぶ濡れの犬みたいな悲壮感が漂うので、カイサとオーセは「大丈夫だよ~?」と優しく撫でていたのであったとさ。
朝の内はお馬さんたちと楽しく遊んで、ランチを終えてしばらくした頃にペトロネラの迎えの馬車が来たから、侵入者とセキュリティのことは秘密にしてくれと頼んで送り出す。
フィリップたちは自室に戻ると、特にやることもないのでダラダラ。たまにセクハラ。からのマッサージ。
ベッドの上でダラダラしていたら、フィリップは聞きたいことがあったことを思い出した。
「あ、そうだ。前に石のボール作った時、2人もいたじゃない?」
「うん。それがどうしたの?」
「ボール作っていた人って、名前なんだったかな~……と思って」
「プーくん。馬だけじゃなく、人間も名前覚えられないんだ……」
「命を懸けて守ってくれてる人なのに……最低」
「ちがっ……馬と男が覚えられないだけだよ?」
「「もっと酷いこと言ってるよ? わかってる??」」
護衛騎士の名前を聞いたら説教は再燃。フィリップが女性の名前しか覚えていないのでは、「こいつ、エロしか興味ないのか?」と少し心配になるカイサとオーセであったとさ。




