382 フィリップ式拷問
「お前か~。馬に捕まったおバカな侵入者って。プププ」
ここは根城の地下牢。昨夜侵入者がいたと報告を受けたフィリップは、牢屋に放り込まれた侵入者を悪い顔で嘲笑う。
「んで……どこの使いか吐いた?」
侵入者が悔しそうに睨むと、フィリップは3人いる護衛騎士に話を振った。
「はっ。神殿関係者と吐きました。目的は下見とのことです」
「それってちゃんと拷問して聞き出したの?」
「い、いえ。従順でしたので……」
「おお~い。そんな嘘に騙されるなよ~」
フィリップが嘘だと断定すると、侵入者に緊張が走った。
「こいつ、皇太子派閥の手の者だよ? 聖女ちゃんが襲われたから報復しようとしてんだよ。ね?」
「なっ……」
「ほらね? 顔に出まくってる。プププ」
「ち、ちがっ……私は法王様の命令で……」
「捕まったらそう言えって言われてたんでしょ。神殿と揉めてるから、ちょうどいい設定だもんね~。馬鹿が考えそうな作戦だ。アハハハハ」
フィリップが大声で笑うと、護衛騎士は「こいつ、こんなに賢いの?」と仲間と目で語ってる。
「ま、否定してるんじゃ仕方がない。拷問するよ~?」
「え……」
「「「はあ……」」」
侵入者はもう喋ったようなモノなのにフィリップは無情。侵入者は顔を青くして、護衛騎士は「やる必要ある?」ってやる気ダウンだ。
それでも第二皇子の命令なのだから、護衛騎士は侵入者をテーブルに押し付けて、右手の指をムリヤリ開かせた。
そこにフィリップは目の前に立つと、持っていたナイフをペロリとナメた。
「首謀者の名前を言えば、拷問しないでお兄様に引き渡すよ?」
「ほ、本当ですか?」
「うわっ……こいつ、もう喋りそうだ。ちょっとは遊ぼうよ~?」
「喋りますから……わっ!?」
侵入者は本当に喋りそうになったので、フィリップは人差し指と中指の間にナイフを突き刺して脅す。
「勝手に喋るな。次、勝手に口を開いたら小指を切り落とす。わかった?」
「はい……」
「んじゃ、質問の前に遊ばせてもらうよ。ちなみに手をグーにしたら、ド真ん中にナイフを突き刺す。いいね?」
「はい……」
「それじゃあ1周目……スタート!」
「ううぅぅ……」
フィリップの合図で、タタタタッと小気味いい音が鳴り響く。フィリップがナイフで指の間を次々に突き刺して往復した音だ。
1周目はフィリップ的にはかなりゆっくりやったから、余裕でクリアー。でも、侵入者はいつ刺さるかわかったものじゃないから、生きた心地がしない。
2周目はさっきより速いので、侵入者は瞬きせずに見続ける。3周目も速度が上がり、侵入者の目は血走り息も荒くなって来た。
「うぉ~……セーフ! 僕、こんな才能あったんだ~。んじゃ、タッチ交代」
「はい?」
「僕じゃあこれ以上速くできそうにないから、見本みせてよ」
「わ、私も自信ないのですが……」
「徐々に速度を上げたら慣れるって~。はい、いってみよう!」
「わかりました……」
次は護衛騎士の出番。自信がない顔をして1周する度に大きな息を吐くから、フィリップがやった時よりも緊張感が半端ないことに。
「あっ!?」
「つっ……」
ついには護衛騎士はミスをして、血が流れる。
「す、すまん……」
「なに謝ってんのよ。ちょっと掠っただけじゃん。セーフセーフ。まだいけるよね?」
慣れないことをしている護衛騎士が謝ったので、フィリップは注意してから侵入者にも話を振った。
「首謀者はリュディガー子爵です! もう許してください!!」
すると喋るチャンスが来たと、侵入者は恐怖に駆られてゲロッちゃった。
「そんなこと聞いてないんだけど~? まぁちょっと切れちゃったし、失敗ってことでチェンジしよっか?」
「「「ええぇぇ~……」」」
でも、フィリップは聞く気なし。他の護衛騎士にまでやらそうとするのであったとさ。
護衛騎士はやりたくなさそうな顔をするので、フィリップも鬼ではない。
「ま、そろそろ飽きて来たし、もういっか。暇潰しに付き合ってくれて、あんがとね」
いや、度胸試しゲームに飽きただけ。しかも、ただ遊んでいただけと聞かされて、全員ドン引きだ。
「そもそもなんだけど……お前を殺すつもりないから安心して。たぶん首謀者は1回で諦める気がないから、5、6人捕まえてからお兄様に引き渡す予定だし。そん中に、詳しいヤツが1人ぐらい居るでしょ。それで間違いなく、首謀者は失脚だ。処刑までされちゃうかも~? プププ」
フィリップが悪い顔で笑うと、ますます引いて行く一同。
「でもどうしよっか? お優しいお兄様が、自分の派閥の人に僕が暗殺され掛けたなんて知ったら、責任感じて皇位継承権を放棄しちゃうかも? そうなったら……アハハハハ。ラッキー! 労せず皇帝になれちゃうよ。帝国は僕の物だ~! アハハハハ」
途中までは純粋無垢な顔をしていたフィリップが馬鹿笑いに変えたら、悪魔のように見えたらしい……
「アハハ。ありがとね~。その時は、君たちは僕の傍に置いていい思いさせてやるよ。んじゃ、お仲間が来るまで待っててね~」
こうしてフィリップは、笑顔で地下牢を出て行くのであった。
「「殿下! お待ちください!!」」
フィリップが2階に向かっていたら、護衛騎士は1人を残して追って来た。
「なんかトラブル?」
「い、いえ……さっき殿下が言っていたことの本心を聞きたくて……」
「さっきのって……皇帝になるっての?」
「はい……」
「皇帝なんてやるわけないじゃ~ん。なんで僕がわざわざしんどい仕事しなくちゃいけないのよ」
「「よかった~~~!!」」
「それはそれで不敬だからな??」
護衛騎士、ブラフだと聞いて笑顔で万歳。そのせいでさっきまで笑顔だったフィリップの顔は、しかめっ面に変わるのであったとさ。




