381 根城に侵入する者
モンスがフィリップに注意しに来て数日。フィリップは大人しく根城から一歩も出ないでゴロゴロしてる。
オーセとカイサも危険だからと出歩けないので、毎日暇そうだ。
「暇だね~……」
「楽ができるのはいいんだけど、やることないのも辛いわね」
「プーくんはなんでこんな生活耐えられるんだろ?」
「バカだからじゃない?」
フィリップはまだ寝てるから、悪口は言い放題。ただ、本当に暇なので2人はマッサージを始めた。
それでフィリップも起きたけど、それしかしないから2人は質問してみる。
「お城の人って、暇な時は何してるの?」
「……さあ? 噂話とか??」
「そんなもんか~。貴族も平民とたいして変わらないのね」
「なになに? 急にどうしたの??」
カイサとオーセがつまらなそうな顔をしていたのでフィリップも気になったけど、「ヒマ」ってバッサリ切られただけだ。
「そゆことね。ゴシップネタも仕入れられないから暇なんだ~」
「「なんかやることな~い?」」
「う~ん……騎士も誘って三角ベースでもする?」
「「騎士様は殿下を守らないといけないのでは??」」
「ちょっとぐらい大丈夫だよ~」
現在は神殿と揉めてる最中なのに、フィリップは軽すぎる。カイサたちのほうが危機感があるぐらいだ。
それでもフィリップは体操服に着替えて2人を強引に連れ出したら、1人の護衛騎士が走って来た。
「何か御用でしょうか?」
「ううん。一緒に遊ぼうと思っただけ」
「えぇ~……」
護衛騎士は出番が来たと思ったのに、遊びの誘いだったので情けない声が出ちゃったよ。
「あっ! 殿下に報告があったのです!!」
「話に困って捻り出してない??」
「いえ、いま思い出した…ってワケではありません」
「捻り出してるじゃ~ん」
「いえ、その……大事な話なので……」
護衛騎士は痛いところを突かれてシドロモドロ。それで怒られると思った護衛騎士だけど、フィリップは怒ることもなく庭のテーブル席に移動したのでそこで話をする。
「んで、報告って?」
「はっ。最近、ここを覗こうとする者が昼夜問わず現れています。神殿関係者だと思われますが、どう対応しましょうか?」
「けっこう真面目な話だね……面白い話かと思ってた」
「「殿下が真面目じゃない……」」
フィリップ的には面白い話だったけど、あまり賢いことを言いたくないからボケたらカイサたちは死んだ目だ。
「う~ん……とりあえず、侵入するまでは放置で。侵入したヤツは、生け捕りにして地下牢に入れておいて。生きてたら、どんな姿でもいいからね」
「はっ!」
フィリップの指示に護衛騎士は勇ましい顔でどこまでするかの確認をしていたら、カイサとオーセは顔を青くした。
「え? ボコボコにするのですか??」
「半殺しなんて……あわわわ」
「そ、そんなこと言ってないぞ? あくまでも、抵抗した場合に痛め付けるだけだ。これも仕事なんだよ」
なので、護衛騎士はまたシドロモドロ。2人の年齢を知っているのに見た目のせいで、少女を怖がらせたと思ったらしい。そこにフィリップの助け船だ。
「別にこいつらが死ぬぐらいなら殺してもいいんじゃない? 死ぬのは知らない人だし」
「それはそうですけど~」
「冷たくないですか~」
でも、言い方が酷いのでカイサたちには響かず。護衛騎士は自分たちの命を優先してくれたから、ちょっと見直したらしい。名前を呼ばれなかったから、ちょっとだけなんだって。
報告会はちゃんと指示は出したので、あとはお遊び。三角ベースをやろうと思っていたけど、カイサたちが楽しめないかと思い、革製のボールをバットで打ってカゴに入れる遊びに変更。つまりはなんちゃってゴルフだ。
これなら2人も楽しめるが、バットでは打ちにくいので木剣を拝借。これを金貨を握らせた護衛騎士に必死に削らせて、アイアンとパターのような物を作らせた。
「あとは~……あそことあそこにボールの倍の大きさの穴掘ってくれる?」
「はあ……騎士の仕事を頼まれない……」
護衛騎士はまた騎士以外の仕事をやらされているので、小声で愚痴。仲間からは「ボーナス貰えたからラッキーじゃん」と励まされたんだとか。
これでふたつのコースが完成したので、ほぼゴルフになった。カイサとオーセも満足だ。
「キャハハ。プーくん下手ね~」
「おっかしいな~……これでどうだ!」
「飛ばし過ぎ! あ……また騎士様に当たった。キャハハハ」
「ゴメ~ン。アハハハハ」
それはフィリップが手を抜いているから。フィリップはわざと訓練中の護衛騎士を狙っているけど、3人で大笑いだ。
ちなみに護衛騎士は、フィリップたちが屋敷に入って行ったら同じように遊んで楽しんでいたよ。
そんな感じでフィリップが新しい遊びを考えて皆で楽しんで数日が経った夜に、根城に侵入する者がいた。
その侵入者は馬小屋に近い壁からロープを掛けて登り、馬小屋の屋根に着地。そこから音を立てないように地面に飛び下りた。
「ブモッ?」
すると、外で寝ていた1頭の馬と目が合ったので、侵入者は手を前に出して落ち着かせるようなジェスチャーをした。
「ヒヒーンッ!」
「シーッ! シーーーッ!」
「「「「「ヒヒーンッ!!」」」」」
しかし、馬は興奮。その声で目覚めた全頭も騒ぎ出したからには、侵入者もゆっくり後退る。
「くっ……クソ。失敗だ。ゴフッ!?」
そのすぐあとに背中に衝撃が走って前のめりに倒れた。それと同時に丸い石が転がる。
「な、なんだ? 乗るな! やめろ……」
さらには、巨大な黒馬がボディープレス。侵入者は駆け付けた護衛騎士にあっけなく御用となるのであった……




