368 フレドリクの帰還
8月も3分の2が過ぎた頃、今日のフィリップも昼前に仕事を終えると帰る準備をゴソゴソしていたら、皇帝からお声が掛かった。
「明日の昼過ぎにフレドリクが戻って来る」
「あ、そうなの? てことは~……僕は今日で御役御免ってことだね。ひゃっ……」
「いや、昼過ぎだと言っておろう。仕事のあとに出迎えがあるから、明日はすぐに帰らず待っておけ」
「えぇ~~~」
フィリップ、フライングし過ぎ。「ひゃっほ~」と喜ぼうとしたのに、明日が最終日と聞かされて喜びは嘆き声に変わる。コンラード宰相には「そんなに働いてないだろ」と睨まれていた。
ひとまず今日の仕事は終わったのだから、フィリップは肩を落として帰宅。カイサとオーセはその姿を見て、ついに怒られたんだとヒソヒソ言ってる。
「いや、お兄様が明日帰って来るからだよ? なのにまだ働けって言われたの~」
「うん。普通じゃない?」
「うん。兄弟で働くもんじゃない?」
ちょっと反論したら、2人は常識的なことを言うのでもっと反論だ。
「僕は馬鹿皇子なの~~~」
「「殿下が普通じゃなかった……」」
この反論はすぐに受け入れるカイサとオーセ。フィリップが抱きついて来たので、とりあえず体で慰める2人であったとさ。
翌日はブーブー言いながらもフィリップは仕事をこなし、ランチは皇帝と一緒にとって撫で回しの刑。1ヶ月半、お疲れ様ということらしい。
皇帝の仕事もフレドリクが帰る前には終えるらしいので、夜には家族で食事をするとのこと。フィリップは「それは仕事なのでは?」と思ってあまり行きたくなさそうだ。
昼食を終えると皇帝は執務室に向かったが、フィリップも連行。忘れる可能性があるからって、ソファーに投げ捨てられていた。
そのままそこで小一時間眠って待っていたら、怒りの表情のコンラード目覚まし。今日はイビキが酷かったんだとか。
皇太子を出迎えることは、第二皇子と家臣の仕事。皇帝は応接室で待つので、フィリップはコンラード宰相に首根っこを掴まれて連行される。フィリップも皇帝側がいいってゴネたらしい。
ちなみに新婚旅行の行きは、フィリップは涙ながらに手を振っていたよ。逆ハーレムメンバーが全員出て行ったから、相当嬉しかったそうだ。
エントランスのソファーで寝転びながらカイサとオーセと喋っていたら、外から執事が走って来てフィリップは呼び出される。
そうしてメイドや文官等、大勢の家臣が整列する一番前にフィリップたちが躍り出ると、数台の馬車と大勢の馬に乗る騎士が近付いていた。
その中の一番豪華な馬車が目の前に来る少し前に家臣一同は頭を下げたので、フィリップはカイサたちにも「マネして。合図出すから」と頭を下げて待たせる。フィリップはギリギリまでダラケて待ってる。
豪華な馬車が止まりドアが開くとフレドリクが降りて来たので、「だからルイーゼが先に降りるんだよ」と、フィリップは心の中でツッコミは忘れない。
「お兄様、お久し振りです。長旅ご苦労様でした」
「ああ。出迎えご苦労。何か変わったことはなかったか?」
「フィリップ君。久し振り~」
フィリップがいい感じで挨拶したのに、ルイーゼが間に入って来たので会話はストップ。とりあえず、家臣一同にはフィリップから道を開けるように言って、カイサたちにも頭を上げる合図を出す。
その開いた道をフィリップとフレドリク夫婦が並んで歩き、城の中に入って行くのであった。ちなみに残りの逆ハーレムメンバーは、城には入らずにどっか行った。
フィリップたちは雑談しながら歩き、応接室の前になるとピタリと口を閉じる。ルイーゼはまだ喋っていたのでフレドリクが優しく黙らせました。
その後、執事の開けた扉から皇族だけで入って帰還の報告だ。
「父上、ただいま戻りました」
「うむ。疲れただろう。掛けろ」
「いえいえ。遊んで来た私が疲れたなんて言えませんよ」
皇帝がソファーを手で指すとフレドリクは表情を崩してルイーゼと一緒に座る。フィリップはどこに座ったモノかと探したら、皇帝の隣しか空いてないからそこだ。
全員着席すると、フレドリクからの新婚旅行の報告。ただ、その中には領地運営の研修も入っていたのでフィリップは驚いていた。旅行なのに働くなんて、自分なら絶対にやらないと思ったんだって。
「父上のご活躍も聞いていますよ。向こうで使わせてもらいましたが、計算器なる物は本当に素晴らしい。それを下々の者の手仕事にするとは、このフレドリク、感服いたしました」
「フッ……そうだろうな」
「??」
褒められた皇帝は誇らしい顔でチラッとフィリップを見たので、フレドリクは首を傾げた。
「だよね~? ヨッ! 父上は世界一! パチパチパチパチ~」
これは皇帝の失言。このままではフレドリクに全てを見透かされてしまうので、フィリップは目配せと勘違いさせようと太鼓持ちしてるよ。
そのおかげというかルイーゼが拍手で乗っかってくれたので事無きを得る。皇帝も失敗したと気付いて照れた演技だ。フレドリクだけついて行けてない顔してるけど。
「そういえばフィリップは父上の仕事を手伝っていたんだってな。迷惑掛けなかったか?」
「なんで迷惑掛けてるって決め付けるんだよ~」
「いや、ラーシュから、フィリップが執務室で寝てると手紙が届いたから……」
「アイツ!? 僕が顔も名前も忘れてたからって密告しやがったな!?」
「寝てるのも悪いが、一緒に勉学に励んだ者を忘れるのも悪いからな?」
「フッ……」
「プッ……あはははは」
フレドリクのツッコミ、皇帝とルイーゼのツボに入る。皇帝はフィリップが上手く話を逸らしたなと感心した笑いで、ルイーゼはフィリップが単純に面白いから。
ルイーゼが笑うとフレドリクも穏やかになってそれ以上の追及は来ないので、フィリップもちょっとは感謝するのであった……




