363 フィリップの家臣の仕事
皇帝たちからソロバンの発注を受けたフィリップは、執務室から追い出されてしまったので予定が大幅に狂う。カイサとオーセには、夕方に迎えに来てもらおうとしていたのだ。
なので執事に早馬を出してもらって根城にいる2人を呼び戻そうとしたら、どうやらメイド食堂にいる模様。もしもの場合に備えて言伝されていたみたいだ。
フィリップは不思議に思いながらも、それならば自分で行ったほうが早いとメイド食堂に足を運んだ。
「あっれ~? うちの侍女と仲良いの??」
「「「「「フィリップ殿下!?」」」」」
カイサとオーセが3人組のメイドと楽しそうに喋っていたので、フィリップがコッソリ忍び寄って声を掛けたら全員飛び跳ね、着地と同時に頭を下げた。器用な人たちだとフィリップは思ってる。
「楽にして。あと、スカート捲って」
「「「はいっ! ……はい??」」」
「「殿下……」」
「冗談。冗談だよ~?」
フィリップが流れるようにセクハラ発言をしたら、カイサとオーセに冷たい目で見られたので言い訳。いまさらだけど、ボエルのようなツッコミは貴重だったなと少し未練が生まれた。
「てか、何もされてない?」
「はい。楽しくお喋りしてくれていただけです」
「だから殿下……酷いことはやめてください」
「何もしないよ~。お礼しようとしただけだよ~」
フィリップには前科があるから2人は超心配。メイドも何かされるとビビったのか、仕事があると言って逃げてった。
「あらら~。お尻触ろうとしただけなのに」
「「いつもそんなことしてたのですか?」」
「冗談に決まってるじゃ~ん」
「「その顔、信用できないのですよね~」」
フィリップの顔はスケベ顔。そんな顔をしていたら、2人の目が戻るワケがない。
「てか、本当に何もされてないんだね?」
なので心配したフリだ。
「はい」
「ちなみに何を喋っていたの?」
「えっと……メイドの人の良からぬ噂とかを……」
「それであんなに怯えるものかな~? ひょっとして、僕の悪口言ってた?」
「「はい……申し訳ありませんでした」」
どうやら2人はフィリップの情報と引き換えに、貴族女子のスキャンダルを聞き出していた模様。ただ、第二皇子とマッサージしているとかは怖くて言えないから、毎日セクハラが酷いと愚痴っていただけらしい。
「うん。その程度なら、もっと脚色して流しちゃって。それと僕にもスキャンダル聞かせて~」
「「はあ……」」
怒られてもおかしくないことをしていたのにフィリップはもっとやれと焚き付けるので、カイサとオーセは「それでいいのかな~?」と首を傾げるのであった。
ちなみにフィリップが怒らない理由は、最初からこの2人にはメイドと仲良くなってもらって、城の情報を集めさせようとしていたので、勝手にやってくれてラッキーぐらいにしか思ってないんだってさ。
カイサたちと合流したフィリップは、先頭をスキップで移動する。カイサたちは夕方に仕事が終わると聞いていたのにフィリップがスキップしているので、「やっぱり仕事なんてしてないんじゃない?」とヒソヒソやりながら続いていた。
そんな3人がやって来たのは、昨日と同じく家具職人の仕事場。カイサとオーセは、またオモチャを作るのかと呆れた顔をしてる。
「またですか……」
フィリップが追加発注すると、家具職人も嫌そうな顔をしてるよ。
「そそ。とりあえずふたつ、なる早でね。これ、皇帝陛下の命令で使うのも皇帝陛下と宰相だから、ちょっと豪華にしてみよっか?」
「「「皇帝陛下がオモチャを??」」」
しかし、皇帝命令と聞いて一同ポカン顔。その顔を見て、フィリップもオモチャとか適当に言っていたことを思い出した。
「オモチャって言ったの、アレ、嘘だよ? 僕は皇帝陛下が考えた、計算を楽にする道具を作れと伝えただけ。あ、これ、秘密にしろって言われてたんだった……みんなも秘密にしてね~? 首飛ぶから」
「「「どうして口を滑らせるんですか~~~」」」
なので、皇帝を出した脅し。3人も怖いからって約束してくれたのでフィリップもしてやったりだ。
しかし豪華なソロバンを早く作るのは無理難題なので、家具職人はフィリップに泣き付く。なのでフィリップは、試作機を先に渡してその間に見た目の良い物を作る案を出した。
それならばできると家具職人もフィリップに感謝。ついでに音が出にくい木材を探してとお願いして根城に戻るフィリップであった。
「ヤローども! 仕事だ~!!」
「「「「「はっ……」」」」」
フィリップが帰るなり昨日と同じ呼び出し方をしたら、護衛騎士の士気は低い。昨日は騎士の仕事と思って気合いを入れたのに、木を削らされたもん。
「昨日の作業を倍しなくちゃいけないけど、金貨1枚でやってくれる?」
「「「「「喜んで!!」」」」」
でも、現金なヤツらだ。仕事量が倍でも、そもそもとんでもなく金額が高いので、本当に喜んで単純作業に精を出す護衛騎士たちであった……
「なあ? 俺たち殿下から騎士らしい仕事、頼まれたことないよな??」
「確かに……大工に庭仕事、キャッチボールをやらされたと思ったら、挙げ句の果てには工作って……」
「いつになったら騎士らしい仕事を頼まれるんだろうな~」
「「「「「はぁ~……」」」」」
でも、我に返ったら、大きな溜め息が出てしまう護衛騎士たちであったとさ。




