359 三角
「ストラーイクッ!」
キャッチボールで遊んでいた護衛騎士は、次は野球……じゃなかった。ピッチャーをやらされている。フィリップは遊んでいるみたいだけど……
「いいねいいね。レベルが高いと、ただの石も凶器だね~」
「はあ……」
護衛騎士が思いっきり投げたら、メジャーリーガー超え(フィリップ予想。目の前で見たことないもん)。レーザービームのように石の球は飛び、藁に突き刺さっている。
「でも、石だとすぐ割れちゃうな~……攻撃に使う分ならいいとして、練習用には違う物を用意したほうがいいか……」
フィリップが小声でブツブツ言ってると、カイサとオーセが袖を掴んで軽く引いた。
「あの~……騎士様って、こんなに汚い攻撃するのですか?」
「てっきり、剣で華麗に戦うモノだと思っていました」
「「「あっ!?」」」
そして疑問を口にしたら、護衛騎士のほうが食い付いた。フィリップの考えた策は、騎士道に反するんだって。
「うっさいな~。お前ら、僕を守る気あるの?」
「「「あります……」」」
「じゃあ形振り構っている場合じゃないでしょ。剣が折れたら柄を投げろ、石を投げろ。周りにある物はなんでも使え。敵を近付けさせるな。ボエルだったら、腕がなくなったら噛み付いてでも敵を殺してくれるよ。お前らもボエルを見習え。わかった?」
「「「はっ!」」」
フィリップはちょっと賢いことを言い過ぎたので、途中からしようとした「生存率アップ」の話はボエルに掏り替えた。それでも護衛騎士は「ボエルならマジでやる!」と気合いが入ったみたいだ。
「ボエルさん、そんなことするんですか?」
「そんなに怖い人だったなんて……」
でも、カイサとオーセは怖がってる。
「ちょっとした例だから、怖がらなくてもいいよ? やりかねないけど……ね?」
「あいつならやります!」
「ダンジョン実習でも、剣を折られたからって、オークを殴り殺していました!」
「自分はウルフに噛まれて噛み返していた姿を見たであります!」
「ボエル……」
「「ボエルさん……」」
でもでも、護衛騎士がボエル伝説を語るので、予想で言ったフィリップまで「そんなことしてたんだ~」と呆れるのであったとさ。
この日から、護衛騎士の訓練にキャッチボールとピッチングが追加。フィリップみずから仕立て場に足を運んで革製のグローブやボールを作らせていたから、土魔法使いのケントは胸を撫で下ろしていた。
永遠に石のボールを作らされると思っていたらしい。でも、200個は作らされていたよ。
チビッコ用のグローブも作っていたので、たまにカイサとオーセともキャッチボール。護衛騎士も誘って三角ベースまでやってる。
でも、フィリップは身体能力をセーブしているので、本気を出す護衛騎士は叱っていた。カイサとオーセが楽しめないもん。
三角ベースで遊んでいたら、フレドリクたちイケメン4が訪ねて来たからフィリップも警戒。どうやら近々ハネムーンに出るから、知らせに来たらしい。
ただ、フィリップたちが楽しそうに遊んでいたから、フレドリクたちも三角ベースに参加。こうなってはフィリップたちチビッコ組は役立たずなので、試合の見学だ。
「フレドリク殿下、いつ見てもカッコイイ~」
「だよね~? モンス様たちもカッコイイから目の保養になるよね~?」
そのせいで、カイサとオーセがメロメロになっているからフィリップはイライラ。
「ちょっと! ダンジョン制覇者が全員揃っていたら試合にならないでしょ! シャッフルシャッフル!!」
だってフレドリクたちが手加減抜きなんだもん。ただでさえ皇太子を含めた次世代のエースが全員揃っているのだから、護衛騎士も緊張して実力が発揮できないので、フィリップは適度に振り分けるのであったとさ。
それから城の中で三角ベースが流行ったが、フィリップは特に何も言わず傍観している。新しい遊びを作ってしまったから、賢いことがバレるのは困るらしい。
フレドリクならここからもっと面白い遊びを開発するかもしれないので、フィリップも我慢。カイサたちから噂話を聞きながら夜遊びしていたら、フレドリクはハネムーンに向かって行った。
カイたち3人もついて行くと聞いて、フィリップは「これで城の中が平和になる」と涙ながらに見送っていたよ。
そうしてホッとしていたら、朝から皇帝の呼び出しがあったのでその気持ちが吹き飛んだ。この時間は珍しいもん。
「いま城の者がやっている遊びはフィリップが考えたらしいな。俺も見させてもらったが、なかなか面白かったぞ」
たまに皇帝の呼び出しはあったけど、今回は三角ベースを見たから褒めるためらしい。でも、いつも通りフィリップは膝に乗せられて撫で回されているから、褒められてもすんなり入って来ないみたいだ。
「僕は適当にやらせてただけなんだけどな~。もうほとんどお兄様が考えたと言っても過言じゃないルールになっちゃってるんだよね~」
「フィリップの発想にフレドリクが加わると、進化するということか……それはまた面白い話だ」
「どちらかというと、一のアイデアが百にまで膨らんでいるから、僕の功績はゼロに等しいけどね~」
「フッ……そうしたいということか。わかった。もう皆まで言うまい」
皇帝はフィリップがフレドリクの功績にしたいと気付いたので、また撫で回しは激しさを増す。フィリップの考えが嬉しかったのだろう。
ただし、今回のことは皇帝の考えとは微妙にズレてる。事実は、メイドの毒抜きだ。
メイド詰め所に毎日通っているカイサとオーセから、最近メイドの仲が悪くなっていると聞いたフィリップは、ラーシュの許可無く、フィリップとラーシュがペトロネラを取り合っている三角関係の噂を流そうと考えていた。
そこにフレドリクに三角ベースをやっている所を見られたので、新しい娯楽をフレドリクに広めさせたらメイドも楽しんで見てくれるのではないかと、最低限のルールだけ教えて、もっと面白い遊びにしてくれと頼んだのだ。
その結果は、意中の騎士にメイドがキャーキャー言って応援しているらしいので狙い通り。
フィリップの狙い通り行かないことは、皇帝に死ぬほど撫で回されることだけらしい……
ちなみにラーシュはと言うと、恐ろしいほどの悪寒が走り、その後は命拾いした感覚に陥っていたから混乱したらしいけどね。




