358 キャッチボール
フィリップが護衛騎士の能力すら知らなかったので、この場にいるメンバーは全員ジト目。その目をかわそうとボエルに決めさせたと言ってみたけど変わらない。
なのでフィリップは伝家の宝刀。第二皇子を全面に出して護衛騎士の目は元に戻した。カイサとオーセの目は戻っていないけど、後ろに立っているからフィリップは気付かない。いや、気付いてるけど無視だ。
ひとまずフィリップは護衛騎士の魔法適性を全員分聞き出して、オーセに持って来させた名簿の名前の横に書き足す。
「こんな名前だったんだ……」と小声で言ってるから、皆の目はどんどん死んで行っているけど……
「この中で、弓を使える人っているの?」
「いえ……全員、前衛です」
「しくったな~……ボエルに聞かず、ちゃんと選んでおけばよかった……」
「「「「「ええぇぇ~……」」」」」
いまさらフィリップが後悔してるので、この場にいる全員落胆だ。
「まぁいまさらクビにするのも面倒か。とりあえず……土魔法使える人って誰だっけ?」
「自分で……ケント・ビュットナーです!」
ケントは名前を言わないとフィリップが覚えてくれないと思って、声を大にして前に出た。
「それってどんな魔法? 見せてくれる??」
「はっ!」
「「スゴ~イ」」
フィリップに印象付けるならここだと、ケントは土魔法を派手に使って見せる。初めて魔法を見たカイサとオーセは目をキラキラさせていたが、フィリップは何も言わずにジックリと見てるだけなので、ケントはだんだん怖くなっている。
「もうそんなもんでいいよ。まだ魔力は残ってるよね?」
「はっ」
「そのまま待機」
フィリップが珍しく真面目な顔をして黙っているから、3人の護衛騎士に緊張が走る。そうして2分程経つと、フィリップは表情を崩した。
「やっぱり使えないな~……全部砂になっちゃった」
フィリップが見ていたことは、土魔法の持続力らしい。ただ、ケントはこの土魔法でモンスターを何体も倒し、味方も守って来たのだから少し苛立った。
「どこが使えないのですか? これでもダンジョン実習では重宝したのですよ??」
「あ、この魔法にプライド持ってたんだ。それは悪かったね」
「い、いえ……」
「僕が言いたかったのは、そのまま残っているかどうかだよ。とりあえず、3人で手に収まりそうな石を何個か持って来て」
「「「はあ……」」」
フィリップが謝罪したので「こいつ謝るんだ」って顔で離れて行く護衛騎士。
そして両手に石を抱えて戻って来たら、フィリップは寝転んでカイサとオーセのミニスカートの中をガン見していたから「こいつエロしか頭にないのか?」と呆れた顔で咳払いした。
「んじゃ、さっきの土の人。その石を丸くできるか試してみよっか?」
「ケントです! ……はい??」
「ほら? 石は土の親戚みたいなもんでしょ? だったら削るぐらいワケないんじゃない??」
「いや、その……やり方が……」
「そこは創意工夫だよ。魔法でなんかしたらできんじゃね? やれ。命令だ」
「はっ!!」
急に無茶振りされたケントは、「土の人」と言われたことをツッコメずに、石をマジマジと見たり撫で回したりと思い付く方法を試してみる。
その間にフィリップは匍匐前進で、カイサとオーセのスカートの中を見に行く。2人もさすがに護衛騎士の目の前で見せるのは嫌なのか逃げ回っていた。
なんだかんだでフィリップたちが楽しく「キャッキャッ」と遊んでいたら、護衛騎士から感嘆の声があがり、大声で呼ばれたのでフィリップたちも集合する。
「どういうワケかできてしまいました!」
「おお~……うん。まずまずかな? もっと綺麗な球体にするのが今後の課題だ」
「はっ!」
ケントもできないと思ってやっていたので、この結果には嬉しい模様。だからフィリップが偉そうに指示を出すといい返事をしたけど、次の瞬間には首を傾げた。
「ところでこれって何に使うのですか?」
「ん~? ちょっと貸して。お前、少し離れて……行くよ~??」
別の護衛騎士が離れたところでフィリップは石を投げる。護衛騎士はとりあえず両手でキャッチしてフィリップを見たら投げ返せとの声。
なので怪我しないように下投げの山なりで返したら、「ビシッと投げろ!」と怒られていた。
「と言うように、キャッチボールするためにやらせたの。わかった?」
「「「「「ええぇぇ~……」」」」」
使い道を聞いて、また全員落胆。そりゃ遊び道具を作らされていたんじゃ、今までの時間はなんだったのだと思うよね~?
「とりあえず土の人は、ボール作り。残りの2人はキャッチボールしてて。命令だよ~?」
「「「はあ……」」」
さらに遊んでいろと命令された護衛騎士は、なんとも言えない顔で石の球を投げ合うのであった。
それからフィリップも、綺麗な丸い石が完成したらカイサたちとキャッチボール。当たり所が悪いと危ないから、近くの距離で下手投げだ。
この遊びは2人に不評だったので、フィリップは違う遊びを開発。円の中のボールを、外から違うボールをぶつけて追い出す遊びにしてみた。
これはそこそこ楽しいらしいので、ボールを増やしてカーリング風のルールに変更。そんな感じで楽しく遊んでいたら、ケントの魔力が尽きたらしいので、全員集合だ。
「肩も温まったでしょ? そろそろ本番と行こうか」
「「「「「本番??」」」」」
全員が首を傾げたので、フィリップは「察しが悪いな~」と思いながら、今までの行動の理由を説明する。
「誰も弓を使えないんでしょ? じゃあ、石を投げたほうが早いでしょ? そのために投げやすい石を作らせて、肩を痛めないように準備運動させてたんだよ」
「「「「「へ??」」」」」
フィリップ、意外と真面目に考えてたみたい。もちろんまったく説明されていないので、全員鳩が豆鉄砲喰らったような顔になってる。
「へ? じゃないよ。お前ら藁とかクッションになりそうな物を集めて来~~~い!!」
「「「はい!!」」」
こうしてフィリップに怒鳴られた護衛騎士は、慌てて走り出すのであった……




