352 久し振りの再会
フィリップがとんでもない奇行をして帰ってからは、カイサとオーセは感謝よりも苦情を言っていたけど誰かが訪ねて来たのでストップ。
「フィーく~ん! 頭、大丈夫~~~!?」
ペトロネラだ。何度も来てるから門番も報告せずに素通りさせたっぽい。そのペトロネラはリビングに入るなり、失礼なことを言いながらフィリップに抱きついた。
「大丈夫大丈夫。カイサたちの立場が悪かったから、ちょっと脅して回っただけだよ」
「アレでちょっと? 剣を振り回して脅されたと聞いたけど……」
「振り回してないよ? ちゃんと父上との約束通り、抜き身の剣は危ないから床から離さなかったもん」
「うん。真剣抜いてる時点でアウトよ? わかってる??」
「それぐらいわかってやってるよ~」
ペトロネラもフィリップの奇行を心配してやって来た模様。でも、真剣と聞いて、やっぱり心配。この日は頭をめちゃくちゃ心配されたフィリップであった。
でも、ペトロネラのおかげでカイサたちの苦情が止まったから、珍しく「グッジョブ」と思いながらマッサージしたフィリップであったとさ。
翌日は朝からペトロネラを見送ったフィリップは、ベッドに戻ってグウタラ。そうしていたら、朝のお勤めを終えたカイサとオーセが戻って来たので、結果はっぴょ~~~う!
「めちゃくちゃ心配されました……」
「かわいそうだからって、アメちゃんをいっぱい貰いました……」
フィリップの奇行、効果覿面どころではない騒ぎ。今までは嫌味や辞めろと言われていたのに、心配された上に貢ぎ物まであったんだって。
「それはよかったね~。これなら僕も安心だ」
「助かったは助かったけど……」
「素直に感謝できないよね?」
「別に感謝なんていらないよ。それより貴族文字の勉強しよっか?」
「「はあ……」」
あんなに酷い助け方をされては、2人は微妙な顔。本当に感謝はせずに、フィリップから漢字を教わる。
それから昼を過ぎると、2人はボエルの残した取説を読んでくれと頼んで来たので、フィリップは文字を指差しながら読んであげていた。
「殿下が悪い顔した時は気を付けろ。信じられないぐらい恐ろしくとんでもないことをしでかすぞ……なんか強調されまくりだな」
「「それだ~~~!!」」
「なになに??」
「「相談した時も悪い顔してた~~~!!」」
「そうだっけ? 鏡で見てないからわかんないや」
カイサとオーセ、詰め込み教育をされていたので、ボエルの注意事項をいま思い出した模様。その時のボエルは青い顔をして震えてたんだとか。
「まぁ結果オーライだからよくない?」
「よかったら、ボエルさんはこんなこと言わないと思います」
「何度も死を覚悟したと言ってましたよ?」
「生きてるじゃ~ん」
「「そうですけど、寿命が縮むんですよ~~~」」
フィリップがなんと言おうと、2人は「酷いことやめてくださ~い」と泣き付くのであったとさ。
それからのフィリップは根城から出ないので、カイサとオーセも心穏やか。メイド詰め所に行ってもメイドが優しくしてくれるので、仕事が楽しくなっている。
フィリップも漢字をわかりやすく教えてくれるので至れり尽くせり。もうこのまま根城から一歩も出ないでくれと、毎日祈ってるんだとか。
フィリップはそうとは知らず、2人とマッサージしたり夜遊びしたり。デパートに行って2人にご褒美のミニスカートを買ったり……
カイサとオーセはこの祈りを忘れていたと後悔してた。でも、メイド服の上と合わせてみたらけっこうかわいいので、複雑な気持ちになってた。
そんな生活をしていたら、昼過ぎにお客が来たと護衛騎士からオーセに伝言された。2階の部屋は、護衛騎士も立ち入り禁止らしい……
「ファーンクヴィスト公爵家のラーシュ様という御方が、殿下にお会いしたいと訪ねて来てるそうです」
「ファーンクヴィスト公爵家……ラーシュ……どっかで聞いた名前だな……」
「どうします? お引き取り願いますか??」
フィリップを訪ねて来る貴族は今までに2回あったけど、フィリップは聞いたことのない名前だったので門前払いしていたので、オーセも慣れたものだ。
追い返すのはその日に順番が回って来た哀れな門番だから、オーセたちには心労が掛からないもん。門番も怖いからって、指示もされてないのに病気と嘘をついてるんだって。
「う~ん……公爵家ってことは親戚だからな~……会ったほうがいいかな?」
「私に聞かれてもわかりません」
「だよね~? うん。親戚を門前払いしたら父上に怒られそうだから会ってみるよ」
「「そんな基準なんだ……」」
カイサとオーセだって、公爵家が皇家の次だとペトロネラのことで知っている。なのにフィリップは家格より皇帝に怒られそうってだけで会おうとするので、2人は呆れ顔で準備をするのであった。
とりあえず門番には「庭で会う」と伝えに走らせて、フィリップはお着替え。昼過ぎなのにまだパジャマなんだもん。着付けするカイサとオーセは久し振りだなと呆れながら、2人も外に出るのでロングスカートにチェンジだ。
それで10分ほど待たせてから、フィリップは部屋を出た。そうして玄関からも出て、来客の姿が見えたらフィリップは呟く。
「やっぱり知らない人だな~……」
「ちょっとフレドリク殿下に似てない?」
「うん。フレドリク殿下をガッシリしたみたい~」
その人物は、背が高くてガッシリした体型の金髪イケメン。フィリップは知らない人だと断定して、カイサとオーセはイケメンに興奮だ。
そうして無駄話しながら歩いていたら、フィリップたちの声に気付いた来客は振り向き、早足で近付いて来てフィリップの前で跪いた。
「殿下。お久し振りでございます。このラーシュ、無事帰還して参りました」
ここまでフィリップに忠誠心があるような素振りをする人は珍しい。カイサとオーセは初めて見たのでビックリだ。
「あぁ~……僕たちって、どっかで会ったっけ? 名前を聞いても顔を見ても思い出せないんだよね~」
フィリップは若干警戒。ジャブ程度に思っていることを言ってみた。その言葉で、来客は勢いよく立ち上がってフィリップに詰め寄る。
「なんで忘れてるんですか!? ラーシュですよ! カールスタード学院で2年間一緒にいたでしょ!?」
そう。この人物は、読者の方はわかっている人もいただろうが、カールスタード王国でフィリップの護衛兼、御学友として2年間共に過ごした人物。
そんなに一緒にいたのに、フィリップに完全に忘れられているかわいそうな人だ。
「カールスタード学院……ラーシュ、ラーシュ……あっ! ブンテレンジャーでイエローしてた人??」
「どこから思い出してるんですか~~~」
さらにフィリップは黒歴史から思い出したので、ラーシュは恥ずかしくなって膝から崩れ落ちるのであったとさ。




