350 フィリップの対応
メイドのイジメ対策をせがまれた翌日……フィリップは宣言通り寝坊。カイサとオーセも起こすことを諦めて、自分の仕事をする。
フィリップが起きたのは、お昼前。誰にも起こされずに寝室から出て来たのはこれが初めてだったので、カイサとオーセは無言で拍手してた。信じられないみたい。
そのフィリップは昼食を食べ、悪い顔をしながら2人に指示。良き頃合いとなったら、フィリップは豪華な服を着せてもらって1階に下りる。
そこには、護衛騎士が姿勢を正して立っていた。久し振りのフィリップ絡みの仕事だから気合いが入っている模様。普段は、カイサとオーセの送迎ばっかりやってるんだって。
護衛騎士が操る豪華な馬車に乗ったフィリップは、カイサの膝枕で登城。なのでカイサとオーセは微妙な顔だ。
中央館に到着すると、護衛騎士には仕事を頼んでフィリップたちは中へ入る。フィリップが先頭を歩いているから、カイサとオーセも安心。メイドたちはずっと「チビッコが来た」とヒソヒソやってるけどね。
さっそく向かった場所は執務室。そこの前室にいる執事にフィリップみずから手紙を渡し、すぐに撤退する。そして時間潰しで綺麗な庭園を歩き、東屋を見付けるとそこでオーセの膝枕で居眠りだ。
オーセの膝が痺れて来たら、カイサにタッチ交代。これでもフィリップが起きないから2人はイタズラ心が出て、頭をベンチに下ろしてそうっと離れた。
「起きないね……」
「なんか丸まったね……」
「「猫みたい」」
それでもフィリップは起きないので、2人には日なたぼっこする猫にしか見えない様子。たまたま近くを通ったメイドも「猫? 猫? 第二皇子やん!?」っと三度見して通り過ぎたんだとか。
そうこうしていたらメイドがやって来て、カイサに手紙を乱暴に渡して帰って行った。オーセは「いまの見ました!?」とフィリップを見たけど、まだ寝てる。
だからオーセは雑に体を揺らしまくってなんとか起こした。
「ふぁ~……僕がいるのになんかされたの?」
「寝てちゃ番猫も役に立たないんですよ~」
「番猫ってなに? 番犬みたいなもの??」
「殿下、それより先程のお返事が届いております」
自分たちもネコネコ言って馬鹿にしていたので、オーセの失言はカイサが割り込んでごまかした。
「どれどれ~? よし。帰ろっか? あ、メイド服のスカート、短いの作ってもらうの忘れてた。そっち先に行くよ~」
「「最後まで忘れてくれていたらいいのに……」」
手紙を読むだけで用件の終わったフィリップは、まだ帰らずにメイド服の仕立て場へ。ただ、ミニスカートは「そんなはしたない服は作れない」と、皇子命令でも突っぱねられたんだとか。
「殿下って、力ないんですか?」
「あるよ~? さっきのは、お城での常識に引っ掛かっただけだよ~??」
「殿下って、常識ないんですか?」
「あるよ~? あるけど、だいぶ皇族の常識から掛け離れてるだけだよ~??」
「「それはないに等しいと言っているのでは?」」
力も無し、常識も無しでは、またまた心配になるカイサとオーセであったとさ。
帰りはちょうど夕方になっていたので、メイド詰め所でフィリップに関わる用件を処理。いつも通り空振りで終わったけど、今日はずっとフィリップと行動していたのでカイサとオーセは心穏やかに帰宅する。
その日のフィリップはカイサとオーセのマッサージで早めに就寝し、翌日は朝から行動だ。
「昨日から乗ってるそれってなんですか?」
馬車の中ではフィリップたちは3人横並びで座って、対面の椅子には布に包まれた長い物があるから、カイサたちは気になって仕方がない。
昨日も聞いたら「ヒミツ~」ってごまかされたんだとか。今日なら昨日のことを忘れてるだろうと思って同じ質問をしたみたいだ。
「ヒミツ~……アレ? 昨日も同じ質問しなかった??」
「「気のせいじゃないですか~?」」
「そっか。ま、すぐに何かはわかるよ」
フィリップは気付き掛けたけど、2人がとぼけたらセーフ。2人が「チョロッ」と思いながらお喋りしていたら、中央館の入口に着いた。
「ちょっと待っててね~? お前、こっち来て」
「「はあ……」」
「はっ……」
フィリップはカイサとオーセを馬車から降ろすと、護衛騎士を中に入れる。中からは「マジで?」「マジマジ」と会話する声や、ガチャガチャという音が漏れていた。
そうしてその音が消えると、護衛騎士が先に姿を現し、そのすぐあとにフィリップが堂々と降りて来た。
「「え……」」
「マジで?」
「マジでマジで」
その姿に、カイサとオーセは呆気に取られて固まり、護衛騎士は相方と「マジマジ」言ってる。昨日、自分たちで集めた物だから怖いみたい。
その原因は、フィリップの姿が異常だから。豪華な服はいつも通りだけど、両腰には短めの剣がブラ下がり、背中には普通の長さの剣が2本、交差させて背負っている。
極め付けは、鞘から抜いた長い剣を引き摺っているのだから、ここにいる誰もが「殿下がとち狂った!?」と驚いたのだ。
「んじゃ、行こうか……討ち入りじゃ~~~!!」
こうしてフィリップは、ノリノリで中央館に突撃するのであった……
「「「「いやいやいやいや……」」」」
でも、焦ったカイサたちに死ぬほど止められるフィリップであったとさ。




